見て聞くだけじゃない--触って感じるVRグローブを試してみた - (page 2)

Richard Trenholm (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2018年02月02日 07時30分

 この気泡は、形状や動きの錯覚を与える。固体があるという錯覚を与えるのは、実際には、何かを押そうとするとグローブが抵抗する仕組みである。指を閉じようとすると、グローブによる外骨格が優しく指を押し返し、手が虚空をつかむことを抑止する。これが、指先の下に何かがあるという感覚を作り出す。それが、目に見えている3次元の物体や平らな表面と組み合わさって、筆者は錯覚を完全に信じ込んだ。

 唯一欠けているのは、自分が触っている物体の質感だ。ざらざらした質感や滑らかな質感というのは、触ったときの振動によって感じる。質感を再現する触覚振動は、テクノロジ企業各社が少し前から試している方法だ。HaptXは、この方法について独自のアイデアがあることをほのめかしたが、まだ具体的なことは語っていない。

VRを訓練に活用

 2012年に創設されたHaptXは、VRで物体に触れたり、相互作用したりすることに取り組む企業の1つだ。他社による同様のVRウェアラブルには、2018年に発売される「Sense Glove」や、Cerevoの「Taclim」VRシューズなどがある。

 これまでのところ、VRはゲーム用として広く認識されており、「PlayStation VR」などのヘッドセットもゲーム用周辺機器として宣伝されている。しかし、ゲーム、さらにテーマパークや映画館へのVR設置といった関連用途が今後予想されるにもかかわらず、HaptXは、VRを使った訓練やシミュレーションに関心のあるエンジニアや開発者と、プロトタイプを共有することに取り組んでいる。

 VRは、シミュレーションするには高いコストがかかるような環境、または危険な環境において、身体で覚える技能を必要とする人々を訓練する手段として、真の可能性を秘めている。例えば、実地で訓練したら人の命や身体に危険が及ぶ恐れのある、外科医や軍人などだ。油田掘削現場の作業員や深海ダイバーなど、危険をはらむ環境で働く産業労働者の訓練にも利用できるかもしれない。訓練にVRを利用することの利点は、VRがプログラミング可能という点にある。例えばパイロットなら、1つのシステムでさまざまな飛行機の操縦を訓練でき、高価な物理シミュレータを複数そろえる必要はない。同時に、実際のメスやライフル、操縦桿を握るときに必要な、筋肉の記憶を形成していくこともできる。

 将来的には、このシステムを遠隔制御ロボットに組み込めるようになるかもしれない。そうすれば、遠隔地のマシンが触っているものを、ドローンやロボットの操縦者が「感じられる」ようになる。全身を覆うバージョンが登場する可能性もある。HaptXのグローブの気泡が取り付けられたファブリックは非常に軽いので、全身に触覚を与えるスーツを作ることもできるかもしれない。ただし、外骨格の部分はもっと重く、より複雑になるだろう。

 サンダンス映画祭で、HaptXは、ユーザーが仮想現実で温度を感じられるデモも披露した。それはグローブほど高度ではなく、ユーザーは手を固定機械の中に入れる必要があった。自分の腕を動かす自由はない。とはいえ、これは非常に巧みに作られていた。手のひらを読み取る機械に細い管で温水や冷水を流すのだが、手のさまざまな部分で異なる温度を再現する正確性を備えている。このデモでは、炎や氷を吐き出すドラゴンが登場したが、手のひらの表裏に熱や冷たさが伝わってくるほどの精密さだった。

 仮想現実を使った物語には、ユーザーがただ見ているだけの映画のような物語から、ユーザー自身がプレイを進めていく空想的なゲームまで、さまざまな形態のものが存在する。触覚の要素は、そのすべてに必要なわけではない。だが、HaptXは仮想世界を現実に近づけることに関して、ほとんどの企業より先を行っている。

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提供:HaptX

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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