情報通信研究機構(NICT)ナショナルサイバートレーニングセンターが、25歳以下の若手を対象に高度な技術力を持つセキュリティイノベーターを1年かけて育成するプログラム「SecHack365(セックハック365)」を実施している。
凶悪化するサイバー攻撃に対抗できるセキュリティのプロの育成には、以前から民間だけでなく国や企業も力を入れおり、NICTでも実践的サイバー演習の「CYDER(サイダー)」や「サイバーコロッセオ」といった人材育成プログラムを総務省と行っている。さらに今後は、セキュリティを運用するだけでなく、研究や製品の開発まで考えられる人材が必要であり、若手を1年かけて指導するというこれまでにない教育プログラムに取り組む。
2017年5月から2018年3月にかけてセキュリティ技術の研究開発を指導し、自ら考えた成果物を発表するというもので、全国5都市で合宿形式のハッカソンを継続して行う。また、NICTが運営する遠隔開発のための実習環境(NONSTOP)をいつでも使えるようにし、1人あたり3人のトレーナーが技術はもちろんメンタル面も含めたきめ細やかなサポートを参加者に対して行う。学生は参加費無料で、社会人は交通費や宿泊費などの実費のみ負担する。
プログラムの開発を担当したNICTの衛藤将史氏は、「現在行われている様々なセキュリティ人材育成プログラムを調査した結果、スペシャリストの育成には継続的な指導が必要ではないかと考えた」とし、「発想が柔軟な若いうちから学びと経験の場を通じて才能を伸ばしてもらうために25歳以下を対象にした」と説明する。
1年を通じての参加が条件だが、40名の定員に約9倍の358名もの応募があり、厳正な審査の結果、技術的バックグラウンドに加えて、熱意と柔軟な発想力を持つ応募者が選抜された。工学系の学生やセキュリティ従事者以外に哲学科の学生もおり、最年少では10歳の小学生が参加している。通常ハッカソンはチームを組んで行うが、1年かけて好きな開発に取り組めるよう個人での参加も認めている。
4回目の大阪合宿でほぼ全員が開発テーマを決めており、AIや機械学習を使ったセキュリティツールの開発から教育プログラム、ネットワークやOSの研究、IoTや自動車を対象にしたツール開発など内容はとても幅広い。運営側は、参加者の興味にあわせてアドバイスできるトレーナーを増やしており、最初の十数名から12月時点で24名となっている。「プログラムの主旨に賛同する、第一線のスペシャリストから協力を得ることで、想定以上の高いレベルで開発ができている。」(衛藤氏)
本プログラムは、そうした将来にはトレーナーとして指導できるレベルの専門家を育てることも目的の一つとされており、開発だけでなく、説明能力やプレゼン発表の方法の指導までも力を入れている。また、参加者がモチベーションを維持できるよう合宿の開催地を変、地域毎にサブテーマを用意し、地元企業との交流や座学などプログラム面でも様々な試みを取り入れている。
本プログラムでの成果物は来年2月に行われる最後の合宿で評価され、3月には一般向けの成果発表会でも紹介される予定だ。
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