医療現場で活かされる人工知能、実用化に向けた課題は--AI製品開発企業が議論

 ビッグデータを活用してさまざまなシーンの状況判断や意思決定を支援する役割を果たしている人工知能(AI)。今年ビジネスの現場だけでなく、スマートスピーカーに代表されるAIを活用した製品の登場により私たちの日常生活でも活用されるようになり、身近な存在になりつつある。そうしたAIは、医療現場にどのような革新をもたらすのだろうか。

 メドピアがこのほど開催したヘルステックのグローバルカンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan 2017」において、「AIで描く未来」と題したパネルディスカッションが行われ、エクサウィザーズの代表取締役会長である春田真氏、シーディーアイの代表取締役社長である岡本茂雄氏、日本IBMのワトソンヘルスソリューションズで部長を務める溝上敏文氏、エルピクセルの代表取締役である島原佑基氏が登壇した。


パネルディスカッションの様子

医師やケアマネージャーの業務負担軽減を目指すAI製品たち

 セッションでは、まずシーディーアイ、日本IBM、エルピクセルの3社がAIを活用した同社の製品についてデモンストレーションを展開した。

 シーディーアイは、AIによって介護施設などにおいてケアプランの作成をサポートするケアマネージャの支援ツールを紹介。今までの介護ケアでは、低下した能力などを補助する観点からケアプランの作成が行われていたが、最近では適切な介護によって低下した能力が改善する効果が実証されつつあるという。AIを活用することによって、未来の介護効果を予測し、高齢者の自立を支援するケアプランの作成を目指している。「AIによって、機能補填型の介護から日常生活の自立を目指す、未来志向型の介護が可能になる」(岡本氏)。


AIがケアプランを作成し、未来の健康状態を予測する

 また日本IBMは、同社が開発したコグニティブ・コンピューティング・システム「ワトソン」の医療領域における活用事例「Watson for Oncology」を紹介した。Watson for Oncologyは米国IBMが米国の癌専門医療機関「Memorial Sloan Kettering Cancer Center」と共同で開発したシステムで、電子カルテ情報を読み込んで患者の状態を理解すると、がん診断のガイドラインに沿って必要なエビデンス情報を参照しながら有効と思われる治療方針、選択してはいけない治療方法などを判定するという。現在は、乳がん、肺がん、前立腺がん、子宮がん、子宮頸がん、前立腺がんなどに対応しており、今後対応疾患を増やしていく予定とのこと。

※注:Oncology(オンコロジー)は「腫瘍学」の意味。主に癌治療、癌研究を指す。


Watson for Oncologyの概念図

 続いてエルピクセルの島原氏は、医療画像診断を支援するAIソリューションを紹介した。医療現場ではCTスキャン、MRI、内視鏡検査などさまざまなシーンで画像診断が活用されているが、技術の進化によって医療画像が膨大化する一方でそれを判断する医師の数は横ばいで、より速く正確な画像診断を行うことで医師を支援することを目的に開発されたのだという。具体的には、1回の検査で数百枚に及ぶ診断用の医療画像を読み込むと自動的にその内容を解析して、病変の疑われる場所を検知。診断する医師にアラートを表示する。これにより、医師の誤診を予防したり負担軽減ができるのだという。


AIが画像を解析し、病変が疑わる場所を医師に示す

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