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医療現場で活かされる人工知能、実用化に向けた課題は--AI製品開発企業が議論 - (page 2)

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AIの実用化・医療現場への実装に向けた課題は

 こうしたデモンストレーションを受けて、エクサウィザーズの春田氏は「それぞれの技術が研究段階を超えて実用段階にまで到達しているように感じる」とコメント。その上で、実用化するための課題について3社に聞いた。

 岡本氏は、開発したケアマネージャー支援ツールについて愛知県の施設でケアマネージャーに利用してもらっているのだという。その上で、「AIはいかに多くのことを経験・学習されるかというのが大きなポイント。介護現場に実装したことで、今後は人工知能の進化だけでなく使い勝手やユーザーインターフェースの改善も重要になる」と説明。加えて、普及のための最大の課題として「介護の価値観を“補助する”ものから“自立を支援する”という考えへと転換すること」を挙げた。


「介護に対するパラダイムの転換が必要」と岡本氏

 一方、島原氏はワークフローの設計を大きな課題に挙げ、「ただでさえ忙しい医師にまったく新しいワークフローを学習してもらうことは難しい。今の医療システムを提供しているベンダーと連携して、いかに今のワークフローを邪魔しない形で導入できるかを考えていくことが重要」と説明。また、溝上氏はWatson for Oncologyが米国、欧州、韓国、台湾などで医療現場に導入されている一方で日本ではAIを医療現場に実装した際にどのような制度設計が必要なのかについて議論が終わっていない現状を挙げたほか、日本の医療に合った診断ガイドラインを策定する必要性についても指摘した。

 溝上氏が指摘したように、日本の医療現場がこうしたAI製品を受け入れるためには、既存の制度の見直しや新たな制度設計は不可欠な作業になってくる。今後、国に期待したいことについて、溝上氏は「あまりリスクを恐れてしまうと最新のテクノロジを活用できず、結果的に患者が不利益を被ってしまう。そうした患者の利益とリスクのバランスを国とITベンダーが一緒に考えていけば、必ず打開策が見えてくるのではないか」と語り、社会実装のための議論が進むことを期待した。


「リスクを恐れすぎては結果的に患者が不利益を被る」と溝上氏

 また島原氏は「リスクに対する不安に関しては言い出すとキリがない。AIをどう評価するのは非常に難しく、認識率の高さを示す評価データも検証方法によっていかようにも良く見せられるので、客観的な評価データの定義も非常に難しい。ただ、最後に使うのは現場の医師であり、実際に現場に出しながら市場に問い、有用性を実証するという動きを、スピード感を持って取り組めれば」と語った。

 そして、岡本氏はAIを実用化する上での課題に、AIが構築するデータセットの所有権はどこにあるのかという課題を提起した。「これがAIに帰するものではないということになると、AIを今後賢くしていくことが困難になってしまう。AIの時代にはデータの知財権について議論してくことが非常に重要になるのではないか」(岡本氏)。

ベンチャー企業ならではの課題はあるか

 今回のセッションでは、グローバル企業であるIBMとベンチャー企業が2社というメンバー構成でパネルディスカッションが展開されてきたが、小規模なベンチャー企業にとって医療制度という大きな課題に挑戦する上での難しさなどはあるのだろうか。

 島原氏は「ベンチャーだからという点での課題はない」とした上で、「AIは今や学会レベルで注目されているが、テクノロジを提供するサプライヤが不足しているという状況。その中で私たちも大手企業としっかりと議論を深められており、良好な状態だと言える」と説明。その上で、画像診断と一言で言っても診断する場所や方法の種類が多岐に渡っている点を挙げ、「1社で画像診断の全ての領域をカバーするのは不可能。オープンイノベーションでさまざまな企業と協業していくことが重要ではないか」と提言した。


「オープンイノベーションによってさまざまな企業と協業していきたい」と島原氏

 また、岡本氏は「大手企業ではすぐに人材を確保できるのかもしれないが、私たちにとっての最大の課題は人材の確保だ。製品開発ではAIを育てるために医療介護領域の専門職が不可欠な存在になってくる。医者、看護師、リハビリテーション技師といった人材を増やしたいのだが、名前の知られていないベンチャー企業ではなかなか集まってくれない。情報発信してネットワーキングを拡大するという点も重要だが非常に大きな努力を必要としている」と小規模企業ならではの苦労を語った。

 こうしたコメントを受けて、ベンチャーとの協業も積極的に行っている日本IBMの溝上氏は「AIの時代はベンチャー企業にとって大きなチャンスだ。多くの人材を必要とする前時代のビジネスモデルとは大きく違い、個人の力をAIによって増幅できる。そこで会社のサイズの大きさは問題ではなくなっている。医療の分野は奥が深く、IBMだけでは実現できず、さまざまな国や地域の企業と協業しているケースが多い。日本でも同じようにさまざまな企業と協業していければ」と語った。

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