2017年に「新語・流行語大賞」を受賞した「インスタ映え」。こうして言葉が一般化したいま、すでに流行のピークは過ぎたとの声もあるが、SNSが浸透している状況下では、ビジュアルがクチコミに重要な要素である傾向はしばらく続くと思われる。
そうした時代の商品づくりや売り方、見せ方とは。2017年にオープンした東京・広尾にあるナッツの量り売り専門店「nuts tokyo(ナッツ・トーキョー)」で、GM・フードプロデューサー・PRを務める音仲紗良さんに執筆いただいた。
2017年1月21日、ナッツの量り売り専門店「nuts tokyo(ナッツ・トーキョー)」をオープンさせた。オープンからまもなく、雑誌やテレビ、ラジオなどあらゆるメディアから取材が舞い込み、1年足らずでメディア露出は50件を超える。なかには、女性誌の扉やグルメ情報誌の表紙を飾った誌面もあり、快進撃を続けている。
これだけの露出をしながら、広告費はかけていない。それは、インスタ映えを意識した商品づくり・空間づくりの賜物であったと考える。
もちろん、素材や味の自信はある。「おいしくて、カラダにも優しい」をコンセプトに、精製された砂糖・小麦、添加物を使用せず、オーガニックの食材にこだわったフレーバーナッツは常時10種類ほどあり、その味にハマったリピーターも多い。
けれど今の時代、おいしいだけでは売れない。また、ナッツはもともと健康志向の方や美容意識の高い方にはすんなりと受け入れられるものだが、「乾き物」のイメージが根強く、学生など健康に気を遣う年齢ではない世代にとって、ナッツはまだハードルが高い。
こうした前提を踏まえて、誰が撮ってもインスタ映えするようなビジュアルと空間づくりにこだわった。SNSで誰でも情報を発信できる時代だからこそ、「撮りたくなる・そこにいる自分が素敵」と思わせるような「商品」と「空間」を用意しなくては、消費者が満足しきらない時代なのだ。
ナッツ・トーキョーに足を踏みいれるきっかけがナッツではなくインスタ映えであったとしても、そこから店を知って、食べてみたらおいしくて、ナッツ・トーキョーのファンになり、ナッツ自体も好きになり、最終的にはナッツがその人の暮らしに必要不可欠な食べ物になる──という流れを作りたかった。
食の提案だけではなく、その人のライフスタイルを今よりもっと充実させることまでを視野に入れた商品・店舗企画がメディアへの大量露出を実現させたと、振り返る。
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