とはいえ、ナッツ自体は、決して「シズる」ものではなくインスタ映えを狙うには難しい。一方で開業資金には限りがある。食器やカトラリーに凝る余裕はなかったため、カフェで使用していた白皿やグラスを使いまわしつつ、百円ショップのアイテムや合羽橋を駆使し、クラフトペーパーや食用ハーブなどの手ごろなものを活用して盛り付けをした。
たとえば、看板メニューの一つでもある「自家製アーモンドミルク」は、どこか懐かしくて一目で「ミルク」と理解できる牛乳瓶のようなルックスの瓶に入れて提供した。「プレミアムピーナッツバターサンド」も、味や素材にこだわりつつ、Instagramの規定サイズであった正方サイズで見た時におさまりがよく、「可愛さ」を表現できる正方形の食パンを探し出し、ナッツ・トーキョーのロゴの焼き印を入れ、提供した。オリジナルの焼きコテはインターネットでデータ入稿すれば比較的安く購入できる。
今挙げた2点をホームページのトップに掲載していたところ、「この写真のように撮りたい」「このメニューを取り上げたい」とメディアからの問い合わせが入り、雑誌の扉や表紙、テレビ、ラジオでの露出につながった。「メディアに取り上げられやすいビジュアルを作り、メディアが使いやすいような写真を用意する」ことも、バズる仕掛けづくりの重要なポイントの一つだと言える。
最近ではインスタ映えのみを目的に、商品の写真を撮るだけ撮ったら食べずに捨てる現象が問題となり、インスタ映えという言葉を揶揄する声も多くあがるようになった。これは消費者のモラルの問題ではあるが、インスタ映えに踊らされている店舗が増えたことも問題だろう。
ビジュアルだけを意識し、味や素材へのこだわりを捨てている店舗が、時代の流れに便乗して少なからず生まれていることも見逃せない。それでは飲食店として本末転倒だ。そのあたりのバランス感覚も重要なのだろうと考える。
2014年頃からアサイーなどを発端に流行した「スーパーフード」の勢いは2017年も衰えず、民間の調査によると2017年にもっとも注目を集めた流行グルメワードにも選ばれた。その流れのなかで「健康志向」を前提に、おしゃれでスタイリッシュな“いまっぽい”店舗が着実に増えている。これは、近年、オーガニック・ヘルスフード先進国であるカリフォルニアのヘルシーコンシャスな食事と洗練されたスタイルを取り入れた店舗が増えていることからも言える。
また、従来の古典的なタイ料理やベトナム料理などのエスニック料理にコンチネンタルテイストや日本テイストを取り入れた、「ネオエスニック」なレストランもメディアでにぎわいを見せており、真の意味での食のグローバル化が進んでいると言える。
2018年はインスタ映えという言葉こそ廃れたとしても、誰でも情報を発信できる時代に、そのおしゃれなライフスタイルを打ち出していく人は引き続き増えていくだろう。ヘルシーでスタイリッシュ、かつグローバルな食の提案は、飲食業界全体において今後ますます盛り上がりを見せると推測する。
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