「インスタ映え」時代の商品のつくりかた--ナッツ・トーキョーに見る成功のヒント - (page 2)

「シズらない」ものをどうインスタ映えさせるか

 とはいえ、ナッツ自体は、決して「シズる」ものではなくインスタ映えを狙うには難しい。一方で開業資金には限りがある。食器やカトラリーに凝る余裕はなかったため、カフェで使用していた白皿やグラスを使いまわしつつ、百円ショップのアイテムや合羽橋を駆使し、クラフトペーパーや食用ハーブなどの手ごろなものを活用して盛り付けをした。

 たとえば、看板メニューの一つでもある「自家製アーモンドミルク」は、どこか懐かしくて一目で「ミルク」と理解できる牛乳瓶のようなルックスの瓶に入れて提供した。「プレミアムピーナッツバターサンド」も、味や素材にこだわりつつ、Instagramの規定サイズであった正方サイズで見た時におさまりがよく、「可愛さ」を表現できる正方形の食パンを探し出し、ナッツ・トーキョーのロゴの焼き印を入れ、提供した。オリジナルの焼きコテはインターネットでデータ入稿すれば比較的安く購入できる。

アーモンド本来のすっきりと上品な甘さを味わえる「自家製アーモンドミルク」
アーモンド本来のすっきりと上品な甘さを味わえる「自家製アーモンドミルク」
Instagram向けに正方サイズで見た時におさまりがよく、「可愛さ」を表現できるよう意識。薄皮ごとつくる芳醇な香りと味わいの自家製ピーナッツバターを使用している
Instagram向けに正方サイズで見た時におさまりがよく、「可愛さ」を表現できるよう意識。薄皮ごとつくる芳醇な香りと味わいの自家製ピーナッツバターを使用している

 今挙げた2点をホームページのトップに掲載していたところ、「この写真のように撮りたい」「このメニューを取り上げたい」とメディアからの問い合わせが入り、雑誌の扉や表紙、テレビ、ラジオでの露出につながった。「メディアに取り上げられやすいビジュアルを作り、メディアが使いやすいような写真を用意する」ことも、バズる仕掛けづくりの重要なポイントの一つだと言える。

 最近ではインスタ映えのみを目的に、商品の写真を撮るだけ撮ったら食べずに捨てる現象が問題となり、インスタ映えという言葉を揶揄する声も多くあがるようになった。これは消費者のモラルの問題ではあるが、インスタ映えに踊らされている店舗が増えたことも問題だろう。

 ビジュアルだけを意識し、味や素材へのこだわりを捨てている店舗が、時代の流れに便乗して少なからず生まれていることも見逃せない。それでは飲食店として本末転倒だ。そのあたりのバランス感覚も重要なのだろうと考える。

2月末日までの期間限定メニューも用意。マルコメとコラボレーションした「糀甘酒のアーモンドミルクスープ~カレー風味~」
2月末日までの期間限定メニューも用意。マルコメとコラボレーションした「糀甘酒のアーモンドミルクスープ~カレー風味~」

 2014年頃からアサイーなどを発端に流行した「スーパーフード」の勢いは2017年も衰えず、民間の調査によると2017年にもっとも注目を集めた流行グルメワードにも選ばれた。その流れのなかで「健康志向」を前提に、おしゃれでスタイリッシュな“いまっぽい”店舗が着実に増えている。これは、近年、オーガニック・ヘルスフード先進国であるカリフォルニアのヘルシーコンシャスな食事と洗練されたスタイルを取り入れた店舗が増えていることからも言える。

 また、従来の古典的なタイ料理やベトナム料理などのエスニック料理にコンチネンタルテイストや日本テイストを取り入れた、「ネオエスニック」なレストランもメディアでにぎわいを見せており、真の意味での食のグローバル化が進んでいると言える。

 2018年はインスタ映えという言葉こそ廃れたとしても、誰でも情報を発信できる時代に、そのおしゃれなライフスタイルを打ち出していく人は引き続き増えていくだろう。ヘルシーでスタイリッシュ、かつグローバルな食の提案は、飲食業界全体において今後ますます盛り上がりを見せると推測する。

天然のサプリメントともいわれるほど栄養価が高いナッツは10種以上そろう
天然のサプリメントともいわれるほど栄養価が高いナッツは10種以上そろう
音仲紗良(おとなか さら)
◇著者プロフィール
音仲紗良(おとなか さら)
1987年、東京都生まれ。
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。
現在、食の総合カンパニー「株式会社Poca pocA table.」代表取締役。
ナッツの量り売り専門店「nuts tokyo」GM・フードプロデューサー・PR。
出版社編集部時代には、おもに食や美容・健康にまつわる企画・編集を担当。「フードコーディネートが、料理ページの企画の良し悪しを左右する」ほどの影響力を持つことを知り、フードコーディネーターを目指し独立。
現在、自身が代表を務めるPoca pocA table.では、編集・取材・執筆、レシピ開発・制作・スタイリング、イベント企画・運営、キャスティングなど、ノンストップでサービスを展開。「混ぜるだけ」「たった3品だけ」「残り物で作るカフェ飯」など、簡単・手頃・時短なのに、忙しい現代女性の食生活を豊かに彩る、おしゃれ&ヘルシーな食の提案を得意とする。ラジオパーソナリティやテレビ、雑誌など多数メディアでも活躍。

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