AI/IoTの衝撃に企業はどう立ち向かうか--電通デジタルが考える「プロトタイピング」 - (page 2)

重視するのは「社会的課題の解決」、競合他社との比較ではない

 ではWonderful Prototypingは、どのような発想・理念のもとで顧客の課題を解決していくのか。谷澤氏は企業とヒアリングをする上で「どんな社会的課題を解決できるか」を最も意識するという。マーケティングにおけるセグメント論や、競合他社の状況ではなく、あくまでも「社会的課題」を優先する。

 それはなぜか。「そういった社会的課題は誰もまだ解決できておらず、実際に開発できれば誰もが喜んでくれる。そして(未開の領域だけに)大きい収益もとれる」と、谷澤氏の答えは明快だ。例えば北欧の自動車メーカーであるボルボは、自転車ライダーの夜間安全性向上のため、吹きつけ式発光スプレーなどを制作した例がある。社としての「安全な社会を作る」という大きなミッションを実現するため、車作り以外の領域にもチャレンジしたわけだ。

 また日本は「課題先進国」でもあると谷澤氏は指摘する。高齢化、少子化、子育て支援、介護、防災など日本を取り巻く課題は多い。だがこれは、海外で今後起こりうる事例にいち早く日本が直面しているとも言える。つまり、日本の課題を解決できるサービスであれば、海外にも通用する可能性が高くなってくる。

Wonderful Prototypingのサービス例
Wonderful Prototypingのサービス例

新技術が生まれれば、企業と顧客の「コミュニケーション」も変わる

 例えばサッカーのスポーツクラブ。2020年の東京オリンピックなどを契機に、スポーツエリート養成の気運が高まっている。しかしサッカー選手には、運動能力の高さだけでなく、栄養やコンディショニングの知識も欠かせない。あらゆる意味での「賢さ」が求められているという。

 そこで、学習塾との協力関係を構築。学習単元ごとの非常に細かい指導ノウハウを機械学習させ、クラブに通う子どもたちが隙間時間に学習するための専用アプリを開発している。スポーツエリート育成、学習塾の知見の活用を、AI技術が結びつけた格好だ。

 また、インバウンド需要の拡大を背景に、顧客体験のさらなる向上策を模索している。それまで購買履歴に基づくレコメンドは行っていたが、そこからさらに踏み込み、近隣の他のショップを含めて、どのように街を回遊したかビーコン情報などで解析。レコメンドに反映させることもトライしている。

 このほか、通販会社のコールセンターにおけるチャットボットの導入などにも言及。接客ノウハウをAIに学習させて自動応対を進めつつも、非常に難解な問題については有人が処理する事で、コールセンターの効率化などを紹介した。

購買履歴だけでなく、店の回遊状況をビーコンで解析し、レコメンドに活かせる
購買履歴だけでなく、店の回遊状況をビーコンで解析し、レコメンドに活かせる

 谷澤氏はこのような例について「アイデアさえあれば技術的にも簡単に実現できる時代になっている」と指摘。実際問題、インターネットの技術は日々変遷しており、ウェブブラウザーの文字を読むだけの時代から、後にYouTubeの動画を閲覧するようになり、タッチパネル操作の普及を経て、音声操作すら実用化している。

 こういった技術の趨勢は、顧客と企業がどのように良い関係を築いていくか、つまり「コミュニケーション」の手法にも当然影響を与えていく。企業は、こういった技術への対応がますます求められるだろう。

 谷澤氏は「今後も新しい技術が出てくるだろう。必ずしも技術が最新であるかは関係はないが、社会的課題の解決にどの技術が使えるのか、しっかり見ていきたい」と述べている。

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