VRが医療にもたらすもの--Health 2.0デモセッション

 12月5~6日に行われたHealth 2.0 ASIA - Japan。その中で「VRはもはや現実である」と題し、VR技術の医療活用に取り組む各社によるデモセッションが行われた。モデレーターはVR/AR/MR関連ニュースメディア「Mogura VR」の編集長でMogura代表取締役社長の久保田瞬氏。パネリストはVR関連スタートアップの支援や海外VR/AR市場への投資も行う、gumi代表取締役社長の國光宏尚氏が務めた。


 まずはVR/AR×医療で事業を行う4社が、各社のプロダクトをデモで紹介。最初に登壇したのは、Holoeyes取締役COOの杉本真樹氏だ。Holoeyesは2016年創業。CTスキャン等の画像データから臓器や病例を3次元化して表示するVR/AR/MRソリューションを設計している。

MRゴーグルのHoloLensを装着し、CTやMRIなどのデータを使った体内画像を3D空間に表示する
MRゴーグルのHoloLensを装着し、CTやMRIなどのデータを使った体内画像を3D空間に表示する

 デモでは、杉本氏がMRゴーグルのHoloLensを装着し、CTやMRIなどのデータを使った体内画像を3D空間に表示する様子を紹介した。杉本氏は「われわれは現実とバーチャルを融合することで医療画像を活用する方法を模索し、患者のデータから臓器の形状を抽出して、ディープラーニングで空中に表示するウェブサービスを作っている」と説明。「HoloLensでは現実とバーチャルを重ね合わせられる。3D空間上の画像を手術する患者のお腹の上に表示して、プロジェクションマッピングを3Dでやることも可能。これでがんを取ったり臓器の障害を防いだり、また教育や医療機器開発につなげられるようなビジネスを行っている」(杉本氏)

 続いて登壇したのは、VRリハビリテーションサービス「Gonio VR」を提供する、デンマークのGonio VR CEOのEge Jespersen氏。Gonio VRは関節痛を緩和するリハビリのために、VRを利用したツールだ。デモでは、VRヘッドセットとモーションコントローラーを装着して、肩の関節を例に、まず痛みを感じる角度や痛みの程度を測定。その後、測定結果をもとにリハビリのためのVRゲームを行った。ゲームは痛みのない範囲の高さで、肩を動かすというもので、肩だけでなく、首や腰、ひざなどの関節痛のためのアクティビティも用意されているという。ゲームを行った後は、再び肩の状態を測定し、改善の程度や進捗も確認することができる。

 Jespersen氏は「Gonio VRはリハビリテーションを楽しく継続し、症状のトラッキングも可能にするツールだ」と話している。

 3番手は、BiPSEE代表取締役CEOの松村雅代氏。松村氏は心療内科医だが、BiPSEEでは子どもの歯科治療を支援する「歯科VRプレパレーション」というプロダクトを開発している。松村氏は最初に治療の様子を動画で紹介。子どもの不安や恐れが強く、「頭の向きを変えてほしい」など指示を聞いてもらうのが難しい歯科治療の現場で、子どもでも使える一眼タイプのゴーグルを装着させ、3Dではなく2Dの映像を使って治療をサポートしているとのことだ。

子どもでも使える一眼タイプのゴーグルを装着させ、3Dではなく2Dの映像を使って治療をサポート
子どもでも使える一眼タイプのゴーグルを装着させ、3Dではなく2Dの映像を使って治療をサポート

 実際の操作デモでは、まず治療を行う側がiPad上の操作アプリで、子どもの好みに合わせた映像を選択して再生。ゴーグルをかけた子どもは、頭を動かすと映像を見られなくなることから、安全な位置で姿勢を維持してくれるようになる。治療中に頭の向きを変えてほしいときには、操作アプリで映像の再生位置を移動。映像を続けて見たい子どもは、再生位置に合わせて頭を動かしてくれる、という仕組みだ。また、口を大きく開けてほしい、といった指示をポップアップで表示することもできる。

 最後に登場したのは、mediVR代表取締役の原正彦氏。原氏も医師で、運動リハビリテーションを行う医療機器の開発を行っている。VRヘッドセットとモーションコントローラ、体幹部分のセンサを装着して行われたデモでは、まず最初にリハビリを行う人の体幹コントロールの状況を測定。椅子に座った状態で体幹ごと腕を伸ばせるギリギリのところまで伸ばして、患者ができる最大の体幹バランスを測っていく。測定後は、その人に合わせた体幹コントロールのリハビリを実施。VR空間に落ちてくるオブジェクトを、コントローラーで拾う、という動作なのだが「具体的にどこまで手を伸ばさなければならないのか、というインストラクションを、落ちてくるものの位置で定量的に行える。また目標値、達成度を数値で把握し、AIを使って患者の状況に応じた適切なリハビリタスクを提供することも可能だ」と原氏は説明する。

 このプロダクトでは、次にものが落ちてくる位置と距離感が色であらかじめ示されている。「運動リハビリテーションで歩行機能を鍛えるときには、認知機能を刺激する必要がある。例えば高齢の方が歩いているときに話しかけると止まってしまうことがあるのは、『考える』という行動と『歩く』という行動を2つ同時にできないから。これを『二重課題』と呼ぶのだが、この二重課題ができないと転倒してしまう。今後高齢化社会を見据えると、デモのように認知機能を刺激しながら体幹コントロールを鍛えられるようにすることが重要になってくる」と原氏はプロダクトの意図を解説した。

まず最初にリハビリを行う人の体幹コントロールの状況を測定。患者ができる最大の体幹バランスを測っていく
まず最初にリハビリを行う人の体幹コントロールの状況を測定。患者ができる最大の体幹バランスを測っていく

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