メドピアは、12月5日と6日に開催したヘルステックのグローバルカンファレンス「Health 2.0 Asia – Japan 2017」において、ヘルステックビジネスのスタートアップ企業を対象としたピッチコンテストを開催。人体を忠実に再現した医学生・研修医向け臨床研修用ロボット「mikoto」を開発するMICOTOテクノロジーが最優秀賞を受賞した。
最優秀賞を受賞したmikotoは、鼻から機器を入れて検査する内視鏡検査や、口から管を入れて気道確保を行う際の気管挿管といった手技について、ロボットを使って練習することができる機器。外見だけでなく人体内部の構造を3Dプリンタで精巧に再現している。
内視鏡検査の練習の際には内部の咽頭部に取り付けた圧力センサが内視鏡挿入時の不快感を検知してロボットが「おえっ」と不快感を表現したり、気管挿管の練習では首の角度や顎の動きの硬さなどを設定してあえて気管挿管しにくい状態をシミュレーションしたりといった実践的な研修が可能になっているという。
開発背景について、鳥取県に本拠を置くMICOTOテクノロジーの代表取締役社長である檜山康明氏は、今の医学教育や臨床研修では実際の患者を対象とした実践の中でしか経験を積むことができず、また既存の医療シミュレーターでは実践的なスキルが身につかないという課題を提起した。
その上で「mikotoは手技の方法を身につけるだけでなく、手技の正確性を磨くためのシミュレーターだ」と説明。ユーザーは医科大学の学生や大学病院、総合病院の研修医などになるという。まずは教育目的に展開し、今後は病院における手術前シミュレーション用途や医療機器メーカーの研究開発用機器としても提供していきたいとしている。「海外展開も進めており、米国ピッツバーグ大学とも協業に向けて話を進めている」(檜山氏)。
医療シミュレータの世界ではARやVRを活用したものや、ロボティクスの開発も進んでいるが、檜山氏はmikotoの導入コストに関して「VRよりも低コストで導入できるのではないか。製品の大部分を自社で製造できるため、コストの抑制ができている」と説明。ビジネスモデルに関しては、シミュレーションのシチュエーション=患者の状態に応じてロボット内部=擬似的な人体内部の構造を入れ替えられる仕組みにすることで、研修現場のニーズに応えていきたいとしている。
また開発にあたっては、鳥取大学医学部とのパートナーシップを結び、麻酔科だけでなく耳鼻咽喉科、消化器内科などさまざまな分野の医師と連携して製品開発を行ってきたという。現在は、mikotoを活用した場合の教育的効果について、同大学とエビデンスのとりまとめを進めているとのこと。
最優秀賞の受賞を受けて、檜山氏は「私たちは鳥取県でロボット開発を行っているが、鳥取から成長企業を生み出すというのは県にとっての悲願。そのために、地元の金融機関や鳥取大学が全面的にサポートしてくれている。鳥取だからこそ、mikotoを生み出すことができた。これから日本の医療ロボット技術を世界一のものにしていきたい」とこれまでの協力者に感謝を表明した。
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