最優秀賞は、医学生向け人体ロボット--ヘルステックのピッチコンテスト - (page 2)

グローバル市場に挑むスタートアップたち

 受賞したMICOTOテクノジーのみならず、ファイナリストとして登壇した各企業は製品・サービスの先進性やビジネスモデルの構想において、グローバル市場で成功する充分なポテンシャルを備えていた。続いては、各ファイナリストの製品・サービスを紹介しよう。

――失読症の“読む能力”を拡張するスマートグラス「OTON GLASS」

 OTON GLASSの代表取締役である島影圭佑氏は、文字を読み取ることが困難な失読症患者や視覚障害者の支援を目的として開発したスマートグラス「OTON GLASS」を紹介。会場の投票では1位の得票数を獲得した。

 OTON GLASSは、メガネ型端末に取り付けたカメラが目の前にある文字を読み取り、認識した文字をクラウドで音声に変換して装着者に伝えるという点が大きな特長だ。読み込める文字数は1度に1500字程度で、文庫本の見開き2ページ分程度の文字量は問題なく読み取ってくれるのだという。また、クラウド経由で読み取った文字を翻訳して音声で装着者に伝えることもでき、海外渡航者にとっても活用できるものとなっているとのこと。


OTON GLASSをデモンストレーションする島影圭佑氏

オープン化された技術を活用して製品を開発

 島影氏は「民主化(オープン化)された技術を統合してプロトタイピングを行い、ユーザーからのフィードバックを元に開発を進めている。すでに受注生産を始めており、開発に協力してもらっているユーザーや施設などに販売している」と説明。点字図書館や盲学校で採用されているほか、兵庫県神戸市では福祉機器の認可を検討しているという。また広く社会への実装にあたっては、法律家や経済産業省と共同でガイドラインの策定を進めているとのこと。


医療機関、支援施設などへの導入を進める

経済産業省と共同でガイドライン策定などを進める

 カメラを搭載したメガネ型端末をめぐってはプライバシーの問題など大きな社会課題が議論されているが、「AR市場という大きなターゲットで勝負するとプライバシーや法制度を巡って大きな課題と闘わなくてはならないが、私たちは(視覚障害の支援という)明確な目的を持って動いている。まずは早く社会に実装したい」と語り、ニッチな市場だからこそ制度設計や環境づくりをしやすいという利点を活かしていく考えを述べた。

 「父が脳梗塞から失読症になったことがきっかけで父をサポートするデバイスを開発しようとした」とOTON GLASS誕生の経緯を語る島影氏は、「リハビリによって失読症が改善して、幸いなことに父にとってOTON GLASSは必要ないものになった。しかし今でも視覚障害、読字障害の方がOTON GLASSを必要としている。彼らの課題を“音”で解決できれば」とコメント。その上で、蓄積された知見をもとに将来的には健常者、障害者を問わず人間の視覚を拡張するプラットフォームとして展開したいという方向性を示した。

――歩き方を可視化して美脚を作るIoT「スマートヒール」

 ジャパンヘルスケアの代表取締役社長CEOである岡部大地氏は、同社が開発中の製品「スマートヒール」を紹介した。

 スマートヒールは、女性向けハイヒールにモーションセンサーを取り付け、つま先の向き、膝や腿の伸び方、安定性やリズムなど女性の歩き方の特徴を解析。どのように修正すれば美しく健康的に歩けるかを、スタートフォンアプリを通じてリアルタイムにアドバイスするという。これによって、美脚効果だけでなく、将来的に発生しうる加齢による膝の痛みや腰痛といった疾患を予防するのが狙いだ。

 千葉大学で予防医学を研究する医師でもある岡部氏は、「歩き方が汚いと感じている女性は少なくないが、これを放っておくと将来的には骨が変形してしまい慢性的な膝の痛みや腰痛に繋がる。こうした疾患に掛かる医療費は1兆円と言われており循環器疾患やガンに次いで多い」と開発の背景を説明。その予防が難しい理由に自分の歩き方を把握できない点や継続的な予防が困難な点を挙げ、このスマートヒールで課題解決を目指すとしている。

 「歩くだけで改善に繋がるというのが特長だ。15人の方に1カ月テストしてもらった結果、3分の2の方が歩き方を改善できた。2018年10月には販売を開始するほか、スニーカータイプも開発したい」(岡部氏)。

――1日に必要な栄養素を摂取できるパスタ「BASE PASTA」

 ベースフードの代表取締役である橋本舜氏は、1日に必要な栄養素を1食で摂取できるパスタ「BASE PASTA」を紹介した。

 BASE PASTAは、主食であるパスタに厚生労働省がまとめた日本人の食事摂取基準に基づく“1日に摂取すべき栄養素”が全て含まれている点が特長。具体的には、栄養士が5大栄養素31種類全て含まれるように栄養計算を行い、主に小麦の全粒粉やチアシード、昆布粉末など自然由来の材料を用いて提携している製麺所によって生産しているという。


BASE PASTAの特徴

BASE PASTAのビジネスモデル

 橋本氏はこうしたビジネスを展開する背景として、一般消費者のなかに「どのような栄養素を摂取すればいいのかわからない」「どの食材にどの栄養素が含まれるのかわからない」「栄養を摂取するために栄養計算の手間とお金が掛かる」といった課題がある点を指摘。「毎日食べるものに必要な栄養素が含まれれば、みんなが健康になるのではないか」と製品の狙いを語った。

 今年2月末に販売を開始して、現在ではAmazonの食品人気ランキングで上位になるなど、消費者からは好評だという。定期購買者数も月平均150%で成長しており、橋本氏は「今後は製造から小売まで手がけるビジネスモデルと定期購買というサブスクリプションモデルでビジネスを拡大させたい」と今後の構想を説明。また、今後はパンやラーメンなど他の主食も開発するほか海外展開も予定しているという。


BASE PASTAの試食は審査員にも振る舞われた

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