マインドがあればスキルは身につく--IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」 - (page 2)

社会課題に向き合う子どもたち--世界大会に出場

 LITALICOワンダーでは、教室以外での学びや成長の場も積極的に提供している。たとえば、企業とコラボレーションしてプロのプログラマーやデザイナーと一緒にものづくりに挑戦できるイベントや、学年もコースも異なるチームで数日間かけて作品を作り上げる宿泊型のキャンプ、子ども達が自分の作品をほかの生徒や保護者の前で発表するイベント「Wonder Make Fes」などだ。10月には4回目となる「Wonder Make Fes 4」が開催されたが、過去最多となる4000人以上の申し込みがあり、当日も多くの親子が来場した。


「Wonder Make Fes 4」

 筆者も実際に、Wonder Make Fes 4の模様を取材した。いずれも小学生や中学生が作ったとは思えない完成度の高い作品ばかりだったが、特に印象に残っていたのが、社会課題の解決を目指すプロダクトが数多く発表されていたことだ。たとえば、盲導犬の代わりになることを目指すルンバのような形状のロボットや、震災などの際に人命救助をするための荷物運びロボットなどだ。

 「実は子どもたちもニュースを見て、世の中の問題意識には気づいている。ただ、空気を読んで言わなかったり、機会がないので表現ができないだけ。私たちはそれが間違っていないことを伝え、子どもたちが心を解放できるようお手伝いをしている」(毛利氏)。

 たとえば、LITALICOワンダーのロボットコースに通う小学3年生と小学4年生の男の子の2人組は、人気漫画「名探偵コナン」を読んで、地球温暖化の影響で海面が上昇していることを知ったという。この問題をテクノロジで解決できないかと考え、(1)氷山をみつけて高さを測るロボット、(2)海水をくみ上げるロボット、(3)海水を凍らせて氷山に噴射するロボットのプロトタイプを製作。3つを組み合わせることで、海水を氷に変えて南極へと戻すプランをWonder Make Fes 4で発表し、来場者から高く評価された。


 「大人になるとすぐに難しい解決方法ばかりを考えてしまうが、子どもたちはシンプル。温暖化で氷が溶けたのだから、その水を凍らせて氷山にもう一度乗せればいいという純粋な発想でロボットを作った」(毛利氏)。この2人はロボットの世界大会である「World Robot Olympiad(WRO)」の日本予選を突破し、11月にコスタリカで開催された世界大会に最年少チームとして出場。英語でプレゼンテーションし、13チーム中7位に輝いた。


「World Robot Olympiad(WRO)」の世界大会。日本からは3チームが出場

大勢の外国人の前で子どもたちが英語で作品を紹介した

マインドがあればスキルは身につく

 2020年に小学校におけるプログラミング教育が必修化されることを受けて、早いうちから子どもにプログラミング教育を習わせる保護者が増えている。毛利氏は、この流れは同社にとっても追い風であるとしながら、「我々のビジョンは、あくまでも障害のない社会にすること。必修化の方針に合う子どもを育てたいわけではなく、その時代にあった自分らしい表現ができる子どもにしていきたい」と話し、公教育との関わり方については今後も模索していく考えを示す。

 また、プログラミングやロボットには、いまのところ英検や漢検のような明確な“指標”が存在しない。この点については、「スキルよりもマインドを身につけてほしい。スキルを身につけても使わなかったら意味がないが、マインドがあればスキルは後から身につく」(毛利氏)と話す。そのため、LITALICOワンダーでは既存の枠組みにとらわれない、(1)「自分らしく世界を広げる力」、(2)「創造する力」、(3)「未来をたのしむ力」という3つの力を重視して、保護者の期待値とのすり合わせをしているのだという。

 今後のLITALICOワンダーの方向性については、単に学習コースを増やすことは考えていないという。それよりも、Wonder Make Fesを始め、子どもたちが小さなうちから社会との接点を持ち成長できる機会を、これまで以上に与えていきたいと展望を語った。「教室の中だけの成功体験では、卒業後に通用しないこともある。高校や大学と連携して進路を紹介したり、企業のインターンシップの機会を提供したりするなど、巣立った生徒たちが本質的に自信を持ち、社会で活躍できる仕組みを作っていきたい」(毛利氏)。

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