ナイアンティックは12月4日、Ingressをメジャーバージョンアップした次世代版「Ingress Prime」を開発中で、2018年のできる限り早い段階で提供開始すると発表した。Ingress PrimeはIngressのストーリーを新たにし、ゲームエンジンを「Unity」に対応させ、サーバ環境やクライアントアプリのコードも新たに作り直し、ユーザーインターフェイスやグラフィック、サウンドなどをすべて一新させる。さらに、バーチャル・リアリティを活用する方針も打ち出されたほか、IngressのSF的世界観に基づいた新しいアニメーションも制作中で、全世界配信する予定だ。
ナイアンティックの日本法人で代表取締役社長を務める村井説人氏は「Ingressが5周年を迎えると同時に日本法人のナイアンティックも2周年を迎えるタイミングになりました。この2年間怒濤の勢いで走り続けてきました。あっという間でした。『ポケモンGO』のイベントがありましたし、今度新しいタイトルの「ハリー・ポッター」の発表もありました。しかし、われわれのスタートはIngressです。このIngressも今後さらに大きくしていきたいですし、さらに多くの人たちにいかに楽しんでいただけるかに注力することを忘れずに頑張っていきたいという思いをもって、今回Ingress Primeを発表させていただくことになりました。冒険して、体を動かして、発見して、人とのコミュニケーションで友情を育むなど、そういったきっかけを作れるサービスを提供していきたいと思います」と抱負を語った。
Niantic, Inc.でアジア統括本部長兼エグゼクティブプロデューサーを務める川島優志氏は「Ingress Primeは数年ぶりのメジャーバージョンアップデートです。サーバからクライアントアプリまで、完全に新しく書き直しました。サーバはポケモンGOと共通で使います。クライアントは完全にUnityをサポートして汎用性を高めました。グラフィックに関しても『実際に研究所から漏洩した』というIngressのストーリーに沿ったデザインにしていましたが、今回はより洗練されたデザインになっています」と刷新の特徴を話した。
さらにIngressについて川島氏は「IngressはやっぱりNianticにとっては始まりのゲームです。Ingressで起こったことが後のポケモンGOだったり、これから作るゲームに受け継がれていって、世界中に広まっています。最初に言いたいのはIngressのエージェントたちに心から感謝していることです。今後もこの5年間、ずっと築き上げてくれた基盤を元にして進化していきますし、ARとNianticが作っていくさまざまな新しいものに受け継がれていきます。5年間やってきたことで、さまざまな出会いがあり、プレイヤー同士で結婚した方も大勢いらっしゃいます。自分の振るまいが変わるだけではなく、人生そのものにも影響があるようなことが起こっています」とNianticの基盤であることを強調した。
以下が、記者説明会での質疑応答だ。
Q:ゲームのルールは変わるのか。
川島氏:ストーリーが新しく変わります。ただ、エージェントレベルや実績は引き継がれる形で、メジャーなバージョンアップととらえてください。
Q:新しくはじめようとするエージェントは参加しづらく、つらいのではないか。
川島氏:新しいプレイヤーに対するアプローチは、現在のIngressからある課題の1つだと思っています。Ingress Primeでは、新しく参加するプレイヤーには、とっつきやすくなるような、よりゲームの世界になじみやすくなるような工夫をこれから実装していくべく作っている最中です。
Q:レベルの上限解放は?
川島氏:そういった議論は常に熱くやってますが、何が起こるかはぜひ楽しみにしてください。まずはIngressにとってストーリーは非常に大事なので、今Ingressのアニメを制作中で、世界公開します。いままでも、動画でさまざまなストーリーを紹介してきましたが、まったく新しい形で伝えていきます。
Q:スケジュール感は?
川島氏:今回ingressprime.comという新しいウェブサイトを公開しましたので、ここで最新情報は提供していきます。2018年のいつ頃かというのは、全速力でやってます、ということですね。できるだけ早く出したいとは考えてます。最初は、クローズドの形でフィールドテストとして、できる限り早く出します。現在の(クライアントアプリとしての)Ingressを残すかどうかについては議論があり、どちらもプレイできる期間のある可能性は高いですが、最終的には新クライアントアプリへすべて移行することになると思います。
Q:メジャーアップデートをすることになった理由は?
川島氏:まず、より新しい時代の姿にIngressが対応できるようにしたいという思いがありました。5年前にGoogle時代にローンチしましたが、サーバに関しても、クライアントに関しても、非常に贅沢な作りになっています。ポケモンGOはより洗練されたゲームという形で、サーバもクライアントも見直して作り直しました。IngressからポケモンGOに受け継がれたものもありつつ、今回はポケモンGOで新しく培われたものも活用して生まれ変わらせることで、さまざまな可能性をさらに引き出したかったという部分があります。
Q:ユーザーを結びつける仕掛けやアイデアは?
川島氏:1つは新しいユーザーが参加しやすくする工夫をしたいと思っていますが、その中でよりソーシャルな局面に注目して何かできないかと。たとえば、熟練のプレイヤーが新規ではじめた人をもっと助けやすくなる仕掛けがあるなど、もっと人をつなげるような部分に焦点を当てたいです。
Q:課金については?
川島氏:ポケモンGOに比べてIngressはもっとできるんじゃないかという話はありますが、Nianticが考えているのは、課金をしたから勝てる、課金をしたから強くなる、課金をしなければ勝てないといったことにはしたくないというポリシーは崩さずに、もっとユーザーが求めているソーシャルにつながるようなことだったり、誰かのためになるようなことだったり、待望視されているような部分で適用できたら……まだまだ発展途上の段階なので。
Q:Ingress Primeへのサーバ切り替えはどのように? ポケモンGOの時にはフィールドテストが終了した後に1週間ぐらい間があって正式ローンチされたが。
川島氏:やり方については議論になっているところですが、Ingressのサーバは、たとえばある人がある世界で動いていて、ある人が違う世界で動いているというような期間は作らないつもりです。
Q:スポンサーは引き次ぐ?
川島氏:基本的にはそのまま引き継ぎますが、新しいパートナーがもしかしたら出てくるかもしれません。
Q:広告を掲載する可能性は?
川島氏:もちろんさまざまな可能性は考えていきますが、仮に広告を入れるとしてもIngressの世界観を絶対に崩さないというポリシーは守っていきます。これまでパートナーとまったく新しいアイテムを作る際でも、非常に議論を重ねながら世界観を壊さずに、しかもIngressのプレーヤーがそのスポンサーを好きになってくれることをずっとしてきました。広告に関しても、こうしたことができるならば考えるかもしれません。
最後に村井氏は、「Nianticという会社のチャレンジをぜひ見ていただきたい。ポケモンGOもやっています。新しいゲームも出していく中で、さらにIngressというものを新しいプラットフォームでもう一度作り直して、新しい体験をユーザーに提供します。さらなる開発に力を入れられるバックエンドに変わったことに、ぜひ期待してください。ポケモンGOにもさまざまな機能を追加してきましたし、今後も追加していきますが、同じようにIngress自体もこれからさらに力を入れて、新機能を入れて、すべての力を注ぎ込みます。われわれにとってIngressはフラッグシップのサービスですので、ここで新しいチャレンジをどんどんしていきます」とIngressの意義を強調して新たな意気込みを語った。
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