ひかりTVの開始から3~4年が経ったころ、月間のVOD視聴回数が2000万回を超えました。この時に一定のVODマーケットは作れたと思い、ここからは映像以外のサービスもやっていく必要があるだろうと思いました。
元々映像配信ビジネスは、3つのフェーズを考えていて、第1は早期に100万人の会員を集めること、第2はVODマーケットを作ること、第3が今まで作った会員基盤を生かして新サービスを提供することでした。すでにショッピングや音楽配信は黒字化して、大きなビジネスに育っています。
先述したように会社のミッションは、新しい事業領域の開拓ですから、数多くのチャレンジを続けてきました。ただ、始める時に「3年間は全力でやる」というルールを設けています。3年間全力でやって、黒字化しない、もしくは黒字化が見えない時には、大きくビジネスモデルを変えるか、撤退しています。
ADSL時代に映像配信サービスを開始して、一度撤退した時もこのルールに則っています。
多くのサービスを手がけることは、それだけ多くの事業で黒字化を目指すということです。そのためには人的リソースや販促費など投資も必要で、そこをいかに効率的にやっていくかは非常に難しい。難しい部分ですが、赤字のまま続けるようなことは絶対にしたくないので、優先順位を考えてマネジメントしています。
――黒字化するビジネスを長く続ける秘訣は。よく言っているのはビジネスの3つの筋です。ビジネスには儲け筋、売れ筋、見せ筋があって、それをバランス良くもたなければいけない。
儲け筋は利益を生んでいる事業で、映像配信がこれに当たります。売れ筋は今は赤字でも伸びているもの、もしくはもうすぐ黒字化が見えるもので、音楽配信やクラウドゲームなどです。見せ筋は、技術力を誇示できるようなもの。現時点で言えば4K HDRなどですね。
ひかりTVでは、4Kや4K HDRでの映像配信をいち早く手がけていますが、利益だけを考えれば、手を出しにくい事業だと思います。しかし、こうした新技術をすぐに手がけることはとても重要で、続けていく内に自然と情報が集まったり、新しい動きが出てきたりします。
今4K作品は地方局と組んでコンテンツを制作していますが、そういうコンテンツを生み出せるのも、「4K 、4K HDRはひかりTV」というイメージを築き上げられたからだと思っています。
――今後の見せ筋はどの辺りになりますか。引き続き4K HDRには力を入れていきますが、新しく取り組んでいるのは「スマートスタジアムサービス」ですね。9月からスタートしましたが、サッカークラブFC今治のホームスタジアム「ありがとうサービス.夢スタジアム」に、Wi-Fiを整備してもらい、スタジアム内限定ウェブサイトを提供したり、デジタルサイネージに限定映像を流したりしています。来場者がその日最も活躍した選手を決定する「MVP投票」に参加できるなど、スタジアムに来ることで体験できる楽しさや便利さを提供しています。
また、現在試験運用の段階ですが、見る角度を視聴者が自由に変えられる「自由視点映像」にも取り組んでます。
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