セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(セブン・ドリーマーズ)は11月28日、全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」の説明会を開催した。2018年度へ出荷時期を延期した理由と、これまで公表してこなかった折り畳み工程の仕組みなどを明らかにした。
ランドロイドは、ロッカー型の全自動衣類折りたたみ機。当初2017年度内の出荷を予定していたが、9月に出荷時期を2018年度へ延期することを発表していた。
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ代表取締役社長の阪根信一氏は「ランドロイドは、Wi-Fi環境下でしか動かないため、ソフトウェアをアップデートすることでたためる衣類の種類を増やしたり、製品自体をバージョンアップしていこうと考えていた。しかし、テストを重ねるうち、ツルツルとした衣類やゴワゴワした生地をたたむことが苦手だとわかった。これはソフトウェアだけでは解決できず、ハードウェアの変更が必要になるもの。このハードの一部機能を追加する判断をしたため、出荷時期を延期した」と理由を話した。
ランドロイドは、2015年10月に「CEATEC Japan」の会場で初披露。それ以前は水面下で開発を進めていたため、大掛かりなとユーザー調査などが行えなかったという。開発発表後に実施した調査により、生地の種類の多さを実感。苦手領域が見えてきたという。
阪根氏は「ランドロイドは世界初の商品のため、あるべき形の答えは誰も持っていない。苦手領域についても『たためなくてもいいのでは』という見方もあったが、ハードを変更し、出荷時期を延期する判断をした」と経緯を話す。
ランドロイドは、セブン・ドリーマーズ、パナソニック、大和ハウス工業の3社で開発を進めているため、「スケジュールの変更については3社でディスカッションを重ねて判断した」(阪根氏)という。
また、何の洗濯物なのか認識する「画像解析技術」と、折りたたむ部分の「ロボティクス技術」に「人工知能(AI)」を掛けあわせることで、自動での折りたたみを実現する中身についても説明した。
衣類を折りたたむには、衣類をピックアップ、衣類を広げる、衣類を認識する、衣類をたたむ、衣類の仕分け・積み上げと5つ工程がある。ランドロイドでは、5つすべてのステップで画像認識、衣類を広げるから仕分け・積み上げまでの4ステップでAIを活用しているとのこと。
衣類の場所とロボットアームが掴む位置を画像認識によって特定し、複数のロボットアームが衣類を繰り返し持ち替え、衣類を展開することで折りたたんでいくとのこと。衣類の大きさ、色、形、模様の違いを機械学習によって識別し、種類ごとに折り畳み方法を特定。大きさや向きを測定しながらたたんでいくという。
衣類は、ディープラーニング(深層学習)により認識させており、2万5600枚×衣類の種類を学習することで、認識率は75%になるとのこと。枚数を10倍の25万6000枚に増やすと認識率は95%に達するという。
「これだけの枚数を覚えさせてやっと1つの衣類を認識する。一見ハイテクなようだが、地道な仕事が多い」と阪根氏は開発の苦労を話した。
セブン・ドリーマーズは「世の中にないモノ」「人々の生活を豊かにするモノ」「技術的ハードルが高いモノ」をテーマに、製品の開発を手掛けるスタートアップ企業。ゴルフシャフト「CARBON GOLF SHAFT」、鼻腔挿入デバイス「ナステント」などを手掛け、ランドロイドが3つ目の商品になる。
ランドロイドの開発は2005年にスタートし、CEATEC Japanで発表する以前は、開発内容の詳細を話せず、人材の獲得も難しかったという。2015年以降は多くの人材獲得に成功しており、当時12名だった開発グループは、現在約60名にまで増員。「その多くは50歳以上の素晴らしいキャリアを持った人たち。日本メーカーが世界を席巻していた時代に入社、開発してきた人たちが新しい開発をやりたいと集まり、ランドロイドの製品化を支えている」とチームメンバーを評した。
セブン・ドリーマーズでは、今まで手がけてきた「今までにない全く新しいもの」の開発を手がけてきた経験をいかし、東京・表参道に「/laundroid/gallery」を3月にオープン。ミートアップイベントやアイデアソンをする「mind share」、サテライトオフィスや技術展示スペースを提供する「space share」の両面から、日本のイノベーションをサポートする。
阪根氏は「ゴールを明確にする、垣根を作らない、反対を押し切って諦めずにやりきる」という3つがイノベーションを起こすポイントと話す。「新しいことを始めると、横槍やストップがかかるが、大事なのはチームメンバーがその声に惑わされず、スローダウンを避けること。また1つの分野のスペシャリストだけでは、新しいイノベーションは起こせず、技術の融合が必要。スペシャリストの壁は絶対に作ってはいけない」とした。
また自らランドロイドを手掛けた経験も踏まえ「反対意見はびっくりするくらい飛んでくるが、とりあえず押し切る。諦めずにやりきったときにイノベーションは起きる。日本は優秀な人材が多い国。日本でこそイノベーションは起こる。そこに貢献できるような役割を果たしたい」と今後の姿勢を話した。
ランドロイドは2018年度の後半に出荷する予定。185万円~という想定価格は変わらず、複数のラインアップを用意していくという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」