働き方改革の言葉のもと、さまざまな企業や個人で取り組みが行われている昨今。労働力不足が想定される環境下で生産性の向上が求められるなか、最も注目されているのは長時間労働の改善という実情がある。さらに効率化のためのIT化やシステム投資になかなか踏み切れない中小企業、そしていまだにアナログ的なやり取りをすることが少なくない総務部門がある。
さまざまな企業が働き方改革に向けたサービスを展開するなか、オービックビジネスコンサルタント(OBC)では「奉行流働き方改革サイト」を設け、業務にまつわる働き方改革の取り組みモデルを77つと多岐にわたって掲載。その内容をまとめたガイドブックの配布、セミナーなど啓蒙活動もあわせて行っている。
同社は会計ソフト「勘定奉行」をはじめとする、中小や中堅企業向け基幹業務システム「奉行シリーズ」を長年にわたって展開していることで知られており、業務の生産性を向上に向けた取り組み、サポートを長きにわたって行っている。近年では勤怠や労務管理を主体としたサービスも手掛け、総務部門に役立つサービスなども展開している。
働き方改革の今、そしてIT化が進まない現状について、オービックビジネスコンサルタント マーケティング部 マーケティング推進室 室長の西英伸氏に聞いた。
――働き方改革という言葉のもとでさまざまな施策が行われている昨今ですが、率直にどのようにとらえていますか。
行政として旗を振ってはいただいていますけれども、なかなかまい進できない体制もあるかと推察されますので、現実問題として民間側でがんばらないといけないのが現状です。もちろん行政や企業からも、働き方についてさまざまなサービスを提供するとともに、自分事のように感じてほしいと発信はしていますが、実現性を出せるまでにはいたっていません。その意味では、サービスを提供する側から、もっとわかりやすく現実的な方策、そして回答を定義して道筋となるイメージを提供しないといけないとも感じています。
――企業規模に取り組みの差などはあるのでしょうか。
ある程度社歴がある中小企業が取り組みに遅れていると感じています。大手企業はシステム投資や効率化にかけられる資金もあれば、人数規模が大きい分その効果も大きい。さらに取り組んでいることがメディアに取り上げられてイメージが上がるというアピール効果も副次的にあります。またベンチャー企業のような小規模で立ち上げたばかりの会社は、柔軟に新しいシステムを取り入れやすいところがあります。
社歴のある中小企業ですと「大企業だから取り組めていることだし……。長年これでやってこれているし……」という心境が本音ではないかと。ツールへの理解やシステム投資も必要なのですけど、日本的な感覚ですが「周りがやっているから、わたしたちもやる」という土壌の醸成が、まず必要ではないかとも思います。
――とりわけ、業務の効率化として残業や勤務時間の削減に取り組んでいる企業が多いように思います。
勤怠は一番わかりやすいですし、クローズアップされているのが実情です。でも、労働時間の削減と働き方改革はイコールではなく、そこで終わってはいけません。そこから何をやるべきかを考えなければいけないのですが、特に経営層で「それをやったことで売り上げが上がるの?」という考え方をしてしまい、解答が見いだせないことで止まってしまうことが多いです。
残業代削減が目的では見誤ります。効率化はあくまでもアプローチ方法であって、私たちとして求めていくのは業績がアップすることです。それは生産性アップによって紡がれるものですし、ひとりひとりが生み出す価値が高まるものによってできることです。効率化によって削減された時間を活用すること、その効果がどのぐらいあるのかが注目点になるかと。
ワークライフバランス、メンタル面など個のライフスタイルを充実させていくことも重要ですが、それは次のステップだと考えます。まず従業員の時間を作り、仕事の生産性をあげて、会社の業績を上げるという、この3つの関係が成立してからの話です。まずはここから取り組もうというのが、私たちとしてうたっているところです。
――さまざまなところで生産性の向上が叫ばれていますが、どういったことが生産性の向上になるのでしょうか。
まず提唱しているのは、業務の効率化をしても成果が変わらない場合、生産性が向上したこととしています。その業務には、入力や集計、作成といった作業が主体の成果が固定的な「固定業務」と、提案や企画、製造といった成果が変動する「変動業務」があるととらえています。このうち固定業務は成果が決まっていることから、時間削減に取り組んでも従来の成果を維持することができ、また定例的なものでもあるためシステム化するだけで高い効果が得られるものとらえています。
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