トランスコスモスは、スタートアップ企業向けイベント「Infinity Ventures Summit(IVS)」を運営するインフィニティ・ベンチャーズと共同で、大手企業のオープンイノベーションを推進するアクセラレータプログラム「DEC Studio」を設立し、航空大手の全日本空輸(ANA)が第1号スポンサーとなった。12月12日には、ピッチイベント「IVS Connect Produced by DEC Studio」を開催する。
トランスコスモスは、今回のプログラムにどのようなシナジーを求めているのか。一方で、ANAはベンチャー企業との協業に何を期待しているのだろうか。ANAグループの中でマイレージプログラムの企画・運営、新規事業開発などを行うANA Xの代表取締役社長である稲田剛氏と、トランスコスモス イノベーション推進本部 DECAds推進部の部長である亀井昭宏氏に話を聞いた。
――まずは、DEC Studioを設立するに至った経緯や狙いを教えてください。
亀井氏 : 世の中に大手企業とベンチャー企業をマッチングさせるアクセラレータプログラムは数多くありますが、実際のところ大手企業になかなかイノベーションが生まれにくい、新しいことが始めにくいという課題があるなかで、トランスコスモスとしても少しでもその課題を打破するための取り組みを対外的にしていくべきではないのかという考えが背景にありました。
さらにその前提を話すと、2016年頃から縦割りになっている事業領域をデジタルトランスフォーメーションで変革しなければならないという課題が社内にあり、組織そのものを大きく改編しました。その改編後の組織が「デジタルマーケティング」「EC」「コンタクトセンター」という3事業の頭文字をとった「DEC」なのです。その組織から、新しい価値を世の中に創出しようという考えのもと、DEC Studioが立ち上がりました。自社で新しい価値を生み出しながら外部パートナーとの連携でもイノベーションの創出を目指すという考え方です。
ただ、私たちはスタートアップ支援の分野では後発企業になりますので、従来との差別化と本気で取り組むという熱意を伝えていかなければなりません。そこで、スタートアップから認知が高く歴史も長いインフィニティ・ベンチャーズとの協業によって、IVSの仕組みを生かしたマッチアップの場=IVS Connectを作ることになったのです。
このイベントから大きなシナジーを生み出すことで、他のプログラムとの差別化をはかっていきたいと思います。今回、ANAに第1弾スポンサーとして参画していただくことになりましたが、今後もさまざまな大手企業と継続的な取り組みをしていく予定です。
――ANAがスポンサーとして参画することになった経緯を教えてください。
亀井氏 : これまでも、トランスコスモスとANA、そしてANA Xはサイト制作やマイレージプログラムなどの領域でビジネスをしており、特にマイレージプログラムについては、外部とのオープンイノベーションで新しい取り組みができるのではないかという議論は以前からしていました。そうしたお付き合いの中で、今回DEC Studioに参画いただくことになりました。
トランスコスモスとして初めてのアクセラレータプログラムで不安もある中で、ANA Xには「ローンチパートナーとしてでなければ参画しない」という言葉をいただきました。結果を出せるよう、私たちもベンチャー企業の方々と同じように情熱と覚悟をもってイベントを盛り上げていきたいと思います。
――ANAではこれまで社内ベンチャーや外部との協業など、どのようなオープンイノベーションの取り組みをしてきたのでしょうか。
稲田氏 : ANAグループではこれまでクラウドファンディングの「WonderFLY」を設立したり、宇宙旅行をはじめとする宇宙輸送の事業化を目指してHISなどと資本提携したり、イノベーションの創出を目指して活動している非営利団体であるXPRIZE財団(米国)とパートナー契約を締結したりと、新しい領域への取り組みを数多く展開しています。私どもANA Xは2016年12月に設立された新しい会社ですので、こうしたアクセラレータプログラムへの支援は初めてになります。
――今回、どのような考えでDEC Studioに参画することになったのでしょうか。
稲田氏 : ANAグループの基幹事業はご存知の通りエアライン事業になりますが、その事業を中核に据えながらも、ANA XはANAから引き継いだマイレージプログラムの企画・運営と併せて、エアライン事業以外の領域で派生的なビジネスをスピード感をもって創出していくことを目的に設立されました。マイレージプログラムが築いてきた顧客基盤やブランドを活用しながら、新しいビジネスを作り出すことを目指しているのです。
その挑戦にあたっては、オープンイノベーションで取り組んでいくという姿勢が非常に重要です。エアラインの強みを生かしながら、特にテクノロジ領域でオープンにさまざまなパートナーと協業してビジネスを創出していきたいと考えています。
――ANAグループは非常に大きな企業組織ですが、その中で新しいビジネスやイノベーションの創出に挑戦するというマインドは、社内にどれくらいあるのでしょうか。また、ANA Xの設立によって風土に変化などはあったのでしょうか。
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