AIのゴールは「不適切か否か」の判断ではない--FacebookのAI研究所・開発トップに聞く - (page 2)

Messengerのチャットボット「M」、日本導入の可能性は?

—— Messengerのチャットボット「M」について。どのような機能を備えたものなのか改めて教えてください。

 Mは、Messengerにおけるユーザー同士の会話に介在して、ユーザーをサポートする役割を果たします。いま日本で使えるMessengerでは、タイピング内容を推測して自動で言葉や絵文字などを提案するオートコンプリート機能がありますよね。Mはこうした推測機能を次の段階に進化させたものです。

 たとえば、会話の中で「今晩、タイ料理が食べたいね」「いいね!」という会話が生まれると、自動的にMがユーザーの現在位置の近くにあるタイ料理のレストランを提案します。ユーザーの会話のある文脈に対して能動的に作動するAIなのです。Mに何かをお願いするという手間は必要ありません。もちろん、Mはユーザーの会話のすべてをウォッチしているわけではなく、プライバシーは保護されています。


「Mはプライバシーを保護しながら会話に介在する」とルブリュン氏

——Mは、投稿やコミュニケーションを支援するという従来の機能から一歩踏み出した“コンシェルジュ”に近い存在ではないかと感じます。

 そうですね。世界的にみても、人々は何かをまとめたり、情報を探したり、予約をしたり、問題を解決したりといったことに、できるだけ少ない時間で対処したいと考えていると思います。もっと多くの時間を友人や家族とのコミュニケーションに使いたいのです。こうしたニーズに対処するのは、私たちFacebookの重要なミッションであり、MはMessengerで提供されることが自然なサービスだと考えています。

 日本だけでなく米国や欧州でも多くの人がMessengerを使っていますが、その利用シーンにおいて、何かをするためにMessengerのアプリを一旦閉じて別のアプリを開くというのは非常に手間がかかる行為です。Messengerの中にいながらさまざまなことをできるようにするのが、Mが目指すところです。

——米国では今夏に導入されていると思いますが、ユーザーの反響はいかがでしょうか。また日本導入の可能性はあるのでしょうか。

 実際ローンチして驚いたのはMessengeの中でMを使ったお金のやりとりが生まれていることです。Messengerにはもともとユーザー同士で送金する機能があるのですが、ユーザー同士の会話のなかで「昨日のご飯代金、払って」という会話があったタイミングで、Mが能動的にMessengerの送金機能を提案したのです。こうしたMessengerのさまざまな機能を、Mが会話のなかで提案して活用されるというシーンは多く見られます。

 日本への導入に関しては現時点では未定です。ただ、7月に英語圏で、9月にスペイン語圏で、そして11月にフランス語圏でリリースをしており物事はスピーディに動いています。今後、日本を含む他の地域への導入も遠い話はないのではないでしょうか。

——日本ではAIを搭載したスマートスピーカがLINE、Google、Amazonから相次いで発表されています。Faecbookはスマートスピーカをどのように見ていますか。

 Facebookには、あらゆる可能性があると思います。未来の製品の可能性について何かを語ることはできませんが、ひとつ言えることは、“機械との会話”はテキストでも音声でもこれからどんどん重要になるということです。

 Mはテキストのコミュニケーションで動作するAIですが、テキストのコミュニケーション技術はそのまま音声にも応用できます。将来はテキストと音声が相互補完するようになるのではないでしょうか。ただ、Facebookとしては、まずは世界に13億人いるMessengerユーザーの利便性向上に向けて、引き続きMに注力していきたいと考えています。

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