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無人トラクタで田畑を耕し、収穫と同時に“味”を分析--クボタ流の「スマート農業」 - (page 2)

藤井涼 (編集部)2017年11月06日 08時00分
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自動運転で田畑を耕す「無人トラクタ」

 そして現在、同社が開発を進めているのが、自動運転で農作業をしてくれる無人のトラクタやコンバイン、田植え機だ。高齢化にともなう農業人口の減少などを背景に、熟練した農機の操縦技術を持つ人を新たに確保できないという課題が生まれており、農作業に慣れない人でも使いこなせる農機への要望に応えるために開発したという。

 同社の自動運転農機は、常にGPSで位置を計測しながら数cm以内の誤差になるように制御しているため、無駄な農薬散布などを減らせるといったメリットもあると飯田氏は説明する。「ロボットやIoTと聞くと効率的と思われがちだが、人間よりも精密に作業ができることもポイント。もし、30cmオーバーラップして作業したらその分、余計に燃料を使い肥料を撒いているということ。(自動運転によって)精密に作業することで、省エネかつ正確に肥料などを撒くことができる」(同氏)。


 第1弾として2016年9月に、田植え作業の直進時のみ自動操舵で走行できる「直進キープ機能付田植機」を、第2弾として同年12月に直進だけでなく曲線経路も自動走行できる「畑作用大型トラクタ」を発売した。そして、2017年6月にはこれらを高性能化し、自社開発のRTK-GPSユニット(IMU一体型)や自動操縦(オートステアリング)、安全装置を搭載した無人トラクタ「アグリロボトラクタ」のモニター販売を開始。2018年には国内メーカーとして初めて一般販売を開始する予定だ。

 アグリロボトラクタは、有人監視下ではあるが、無人による自動運転作業(耕うん、代かき)が可能になる農機で、作業者が監視しながらリモコンの遠隔操作によって作業の開始・停止を指示できる。また、前方の無人機を後方の有人機に乗車した作業者が監視しながら自動運転作業をすることで、作業者1人で2台分の作業ができる。レーザースキャナや超音波ソナーなど多様な安全装置も装備しており、圃場への侵入者や障害物に近づくと自動で停止するようになっている。

 これらの自動運転農機もKSASとのデータ連携が可能。今後はKSASに自動運転農機の稼働支援システムを搭載することで、自動運転農機に施肥計画などを送信するだけで、最適なルートを無人で作業できるようにする予定だという。


無人トラクタ「アグリロボトラクタ」

 農機における自動運転のステップは3つあると飯田氏は説明する。1つ目が、手放し運転が可能なオートステア、2つ目が有人監視下での無人運転で、現在はステップ2までは実現している。そして、3つ目が遠隔操作での完全無人運転だが、圃場間の移動などの際には道路走行扱いとなるため、道路交通法への対応や自動車技術との連携をしなければ実現は難しく、当面は有人監視が必要になるとの見方を示す。

 また、普及にあたりいくつかの課題もあると飯田氏は話す。まず、自動運動農機の安全規格やガイドラインの策定だ。トラクタについては3月に策定済みで、同社はそのガイドラインに沿って運用しているが、今後はトラクタ以外の農機への対応が求められると説明する。

 農業用の通信インフラの構築も重要だ。田畑のある地域では電波が届かないことも多く、農機がネットワークに接続できなければ宝の持ち腐れになってしまう。そこで、準天頂衛星システムの活用に向けた実証実験を、行政や大学と共同で取り組んでいる。また、NTTなどと連携して、IoT向けのネットワークであるLPWAを利用した水田センサの実証実験を進めているという。このほか、完全無人での自動運転に向けて、外周の凹凸や障害物などがない土地を用意するといった、圃場基盤の整備も必要になるとした。

「儲かる農業」でなければいけない

 同社によれば、KSASは東北、関東甲信越、北陸の稲作農家を中心に約4500軒導入されている。利用者からは、煩雑な圃場管理が楽になった、作業日誌のミスが減ったといったポジティブな声が多く、ある新潟のコシヒカリ農家はKSASを導入して約2年間で収量が15%ほど増えたという。「これが仮に30ヘクタールだったら年間500万円以上の効果がある。品質が上がり、高値の販売も可能になる」(飯田氏)。

 30~40代の後継者などは、KSASを抵抗なく使える人が多いそうだが、普段PCやスマートフォンに触れていない高齢者が、いきなりKSASを使いこなすことは難しい。そこでクボタでは、利用者やKSASに興味のある農家向けに、各地で「KSASふれあいキャラバン」を開催し、利用者の理解を深めながら導入件数を増やしているという。

 そのほか、同社はスマート農業の取り組みとして、ドローンによる農薬・除草剤の散布や、収穫した野菜などを入れたコンテナなどを持ち上げやすくしてくれるアシストスーツの開発・販売などをしている。そして、これらの新たな農業や栽培の技術を実証実験する施設「クボタファーム」を全国13カ所(2017年10月現在)に展開しているという。


ドローンを活用した農薬散布

重い野菜などを持ち上げやすくなるアシストスーツ

 また、農家がさまざまなデータを活用できるようにする「農業データ連携基盤協議会(WAGRI)」を、産学官共同で8月22日に設立した。クボタをはじめとする各メーカーの農機やセンサを連携させるほか、農家向けに気象・土壌などの公的データを提供するプラットフォーム「農業データ連携基盤」を、2018年中に構築する予定だ。

 飯田氏は「儲かる農業でなければいけない。これまで多くの農業経営者は、土地の条件や肥料などについて経験と勘に頼って作物を栽培し、出荷していた。それらをすべてデータにすれば、土地や作物の能力を最大限発揮でき、低コスト化もできる。政府は米1俵(60キロの買取価格で)約6000円の目標を掲げているが、それも可能になるかもしれない」とスマート農業への展望を語った。

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