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無人トラクタで田畑を耕し、収穫と同時に“味”を分析--クボタ流の「スマート農業」

藤井涼 (編集部)2017年11月06日 08時00分
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 世界中を一人旅する女優の長澤まさみさんが、現地の人々から「KUBOTA(クボタ)」と声をかけられ、これでもかとおもてなしを受ける。しかし、当の本人は「クボタって何?」と不思議そうな顔。最後に種明かしとして、世界中の人々の暮らしや社会にさまざまな形でクボタの機械や技術が貢献していることが紹介されるーー。1月から放送されているこのユニークなシリーズCMは、同社が2017年1月に開始したブランド強化の一環で制作したもの。10月21日からは第4弾となるシンガポール編が放映されている。


クボタ 取締役専務執行役員 研究開発本部長の飯田聡氏

 このように農業機械や建設機械の大手メーカーとして国内外で知られるクボタだが、創業127年という老舗企業でありながら、農業にいち早くITを取り入れ、農家の経営を支えている企業でもある。同社が推し進める“スマート農業”は、日本の農業をどう変えるのか。クボタの研究開発のトップである取締役専務執行役員 研究開発本部長の飯田聡氏に、同社の最新の取り組みや事例、実際の導入効果などを聞いた。

スマート農業で「求められる量」を「適正価格」で

 そもそも、なぜクボタは農業のIT化を進めるのか。その背景には、高齢化にともなう日本の農業人口の減少が挙げられる。農林水産省によれば、2016年の就農者の平均年齢は66.8歳で、稲作においては69歳まで高齢化している。そのため、近年は離農者が後を絶たず、離農者の土地を譲り受けることで大規模化する圃場(田畑)の管理が、多くの農家の負担になっていると飯田氏は話す。

 「稲作農家では、平均して毎年数ヘクタールずつ管理する土地が増えており、圃場ごとに田植え、施肥、水管理、除草、収穫などの管理負担が発生する。そうすると新たに作業者を雇用しないといけないが、その一方で生産コストも下げなければ続けてはいけない。クボタでは、データを活用したスマート農業によって、求められる作物を、求められる時期に、求められる量だけ作り、そして適正価格で販売できる農業を実現させたい」(飯田氏)。

農薬や肥料データを可視化、作業はスマホで指示

 こうした課題を解決するクボタの代表的な農業ITソリューションが、約3年前の2014年6月に提供を開始した、営農・サービス支援システム「クボタスマートアグリシステム(略称KSAS:KUBOTA Smart Agri System)」だ。農業におけるあらゆるデータを蓄積・分析することで、農作業の効率化やコストの削減、作物の品質向上などを支援する。


営農・サービス支援システム「クボタスマートアグリシステム」の概要

 KSASには、営農データや圃場の作業記録をクラウドに蓄積して栽培計画に生かせる「基本コース」(月額3500円~)と、基本コースの内容に加えてKSAS対応農機と連動する「本格コース」(月額6500円~)が用意されている。いずれもPCやスマートフォンで利用でき、農家は農地の規模などによって、適したコースを選べる。

 基本コースでは、事前に圃場や使う農機の情報などをKSASに登録し、使用する農薬・肥料の量、作業計画などを作成する。従来、圃場は紙の地図で管理されていたが、KSASでは電子地図を採用し、登録した区画の面積をGoogle マップで自動計算して表示してくれる。また、農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の農薬データベースから、使用する農薬の情報を検索・登録できるほか、散布量と購入費を入力するだけで、圃場単位・作付単位のコストも自動で計算してくれる。


PC版のKSAS画面

 実際に農作業が始まると、管理者はスマートフォンのGPSによって作業者の現在地を常に把握しながら指示を出せる。一方の作業者は、現場にいながらスマートフォンアプリで作業指示の内容を確認できるため、圃場の場所や農薬・肥料の量を間違えるといったミスを減らせる。さらに、他の作業者の進捗状況をリアルタイムに確認することも可能だ。仕事が終わった後に作業記録(日誌)をつけるのも一苦労だが、KSASであれば作業の開始と完了をタップするだけで、自動で作業記録をつけられるという。


作業者は圃場で作業指示を確認できる

スマートフォン版のKSAS画面

 記録した作業内容は、「圃場ごと」「作付計画」「作業エリア」「日付・メンバーごと」の4つの項目で検索できるため、日誌の内容を簡単に振り返って、翌年度の計画に役立てられる。種子や農薬にかかった材料コスト、土地にかかるコスト、作業者に支払う労務コストなど、KSASに登録した各項目は帳票に反映されるため、農業経営指標の作成にも活用できるという。

収穫と同時にタンク内で「味」を分析

 本格コースでは、Wi-Fi機能を搭載したトラクタやコンバイン、田植え機などの農機のデータとKSASを連動できる。核となるのが、同社が約3年前に世界で初めて開発した食味・収量測定機能を搭載したコンバイン。グレンタンク内で、刈取りと同時にモミのタンパク含有率、水分含有率、重量を測定し、クラウドにアップロードする。これにより、モミを水分含有量によって選別して乾燥することで味のバラつきを防げるほか、タンパク含有量ごとに選別販売することで、収入増も期待できるとしている。


KSASと連動した農機。刈取りと同時に成分を分析

食味・収量の分布図

 また、圃場ごとに異なる収量や食味データをKSASの電子地図上で確認できるため、「地力がなければ土壌を改良したり、次年度の肥料を増やすといった計画に生かせる」(飯田氏)。KSAS対応のトラクタや田植え機に施肥計画を送信すると、それらの農機は計画通りの施肥量に自動調整して散布してくれるという。

 毎日使う農機にはメンテナンスも欠かせない。KSASでは、対応機の稼働状況をクラウドに収集し、毎朝「機械診断カルテ」を送信。農家は、機械の使用時間や傾向などを常に把握できるほか、警報の発生内容なども確認できるため予期せぬ故障を未然に防げる。また、クボタのサービススタッフにメンテナンス計画について相談したり、点検を依頼したりでき、機械を長持ちさせトラブルを防ぐことができるという。

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