ワシントン大学の研究チームは、数字や文字といったデジタル情報の記録が可能な布を開発した。情報を磁気パターンで保存するため布の側に読み出し用の電子回路を取り付ける必要がなく、ドア解錠やウェブアクセスなどに使うパスコードを記録可能な衣服が実現できる。
この布は、導電性のある糸を使って作られており、磁気的な特性を利用することで記録媒体として使える。磁気を利用するカセットテープやフロッピーディスク同様、磁界の方向で0または1の情報を表現し、デジタル情報を記録する仕組みだ。記録された磁気パターンは、スマートフォンに搭載されている磁気センサで読み取れる。
研究チームは、ドアの電子ロック解錠に必要なパスコードを布に記録し、それをシャツの袖につけ、ドアの磁力計アレイにかざしてアンロックできることを確認した。さらに、ネクタイ、ベルト、ネックレス、リストバンドに情報を記録し、スマートフォンにかざして情報を読み出す実験も成功させた。
また、手袋の指先にこの布を縫い付け、フリックやスワイプという指の動きをスマートフォンに対して実行すると、90%の精度で6種類のジェスチャーを識別できたという。この操作は、直接スマートフォンに触れることなく、ポケットに入れたスマートフォンに対しても実行できる。
布に記録された磁気情報は、ホテルなどで使われるカードキーと同じように、1週間で約30%弱まり、徐々に読み出せなくなる。ただし、再び磁化してパターンを書き込めば、何度でも使える。その一方、洗濯機で洗っても、乾燥機にかけても、華氏320°(摂氏160°)でアイロンをかけても、情報は失われなかった。
研究チームは、より強い磁気を記録できる布の開発や、記録密度の向上に取り組むとしている。
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