ワシントン大学の研究チームは、バッテリを搭載せず、周囲の電波や光から変換して得た電力で作動する携帯電話機のプロトタイプ「Battery Free Phone」を開発した。この概念実証(PoC)モデルは、限定的な条件であるものの、携帯電話ネットワーク経由のSkype音声通話を実行できた。
電子デバイスが動作に必要な電力を周囲の電波などから得る技術は、一般に「空中発電」と呼ばれる。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、注目すべき革新的技術の1つとして空中発電を紹介し、2016年時点で「実用化は2年から3年先」としていた。
ワシントン大学の開発したPoCモデルは、周囲を飛び交う電波のほか、「米粒ほどの大きさ」のフォトダイオードでとらえる光も利用し、数マイクロwという動作用の電力を得ていた。自作の基地局で試験したところ、電波による発電だと9.4m、光による発電だと15.2m離れた基地局と通信し、双方向のリアルタイムSkype通話に成功したという。
もっとも、たかが数マイクロwの電力では通常の携帯電話を動かすことなどできない。研究チームは、空中発電による通信の可能性を実証するため、画面やスピーカを搭載しない、特別なデバイスを作った。例えば、デジタル信号とアナログ信号の変換は一般的なICを使わず、人間が話す際に生ずる音の小さな振動をマイクで拾って実行するなどの工夫をしたそうだ。
研究チームは、今後もBattery Free Phoneの研究を続け、通信可能距離の延長、暗号化処理の追加、ビデオストリーミング実行、画面搭載といった機能拡充を図る。
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