コンピュータの歴史はユーザーインターフェイス(UI)の歴史でもある。かつては、紙テープやパンチカードなど、人間がかなり歩み寄った方法でコンピュータに命令を伝えていた。技術が発達するにしたがい、キーボード、マウス、ジョイティック、タッチパネル、ペン、音声など、機械であることを意識せず、直感的に操作できるUIが登場した。
そうした操作性を改善する新たなUIとして、Appleはマルチタッチ感圧式入力デバイスの技術を考案。この技術を米国特許商標庁(USPTO)へ出願したところ、米国時間10月24日に「MULTI-FORCE INPUT DEVICE」(特許番号「US 9,798,409 B1」)として登録された。出願日は2015年3月4日。
この特許は、タッチパネルのような表面を操作する入力デバイスにおいて、複数の指で押す力にもとづいてコンピュータに情報を伝達する技術を説明したもの。マルチタッチに対応した、感圧式のタッチパッドといったデバイスである。
指で触れられた位置と、押された力の大きさは、圧電素子や静電容量センサで検知する。そして、複数ある指の位置情報から“位置の重心”と呼ぶ座標と、力の情報から“力の重心”と呼ぶ座標を算出する。
仮に、手でデバイスに触れ、親指から小指まで5本の指で均等な力をかけて押すと、位置の重心と力の重心はほぼ同じ座標になる。このまま指の位置を変えず、人差し指、中指、薬指で押す力を強めると、位置の重心は変化せず、力の重心だけが力を強めた3本の指へ近づくように移動する。逆に、親指の力を強めると、力の重心が親指方向へ動く。
こうした機能を備えるデバイスをコンピュータに取り付け、位置の重心および力の重心を個別に動かしたり、重心の位置関係を変えたりすると、既存のデバイスでは表現できない、このデバイス独特の情報入力が可能になる。これまで想像もできなかった、ユニークかつ直感的なUIが誕生するかもしれない。
また、トラックボールやジョイスティックなどと違って可動部がなく、タッチパッドのような薄いハードウェアでも実現できるだろう。そのため、コンピュータの外付け入力デバイスだけでなく、タブレットやスマートフォンなどにも適用可能と思われる。
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