9月26日に開催された住まいとテクノロジーのイベント「CNET Japan Conference 2017 テクノロジが加速させる“新しい街・住まい”づくり ~Real Estate Tech 2017~」。リフォーム・リノベーション事業を手がけるリノベるの木村大介氏が講演し、昨今の住宅に対するニーズとトレンドについて解説した。これまでとは異なる視点からリノベーションを施すことで、売れ残り物件を相場以上の値段で販売できた例を挙げるとともに、IoT機器も駆使することによって「顧客の真のニーズ」に対応できることを報告した。
リノベるは主に中古マンション物件のリフォーム・リノベーション事業を展開する企業。住まいを選ぶ際に新築を優先して環境を犠牲にするのではなく、環境を優先しつつ中古をリノベーションすることによって暮らしの質を高める、といった新しい考え方を指向しながら魅力的な物件を提案している。
同社のスマートハウス事業責任者である木村氏は、そうした中古物件にリノベーションを施す住まい作りについて、「自分の生活に合う家づくりができる」こと、新築では手が出にくい「都心や都心に近いところに住める」こと、購入費用や税金などの維持費が大きくかからないことなどをメリットとして挙げる。
そのような中古物件選びは、徐々に市場にも浸透し始めている。従来はやはり新築物件が人気だったものの、最近では中古物件の成約数が増加。首都圏における新築マンションの供給戸数と中古マンションの成約戸数を比較してみると、後者が前者を圧倒している。2015年、2016年と新築マンション成約数は減少傾向にあるなか、中古マンションは成約数が微増しているというデータも示した。
顧客が中古物件を選ぶなかで、特に同社が手がける中古物件のリノベーション案件については5つの特徴があるとする。1つ目は、リビング、ダイニング、キッチンを広く取り、部屋数を少なくするケースが多いこと。2つ目は、床にメンテナンスの容易なフローリングではなく、メンテナンスの手間がかかっても風合いに優れた無垢材を選ぶこと。
3つ目と4つ目は、広い土間と、壁紙を耐久性の高いクロスではなく“味”のある塗装にすること。最後の5つ目は、天井や壁の一部は建物の基礎構造そのままをむき出しにする「駆体現し」でコストダウンと風合いの良さを両立すること、とした。
これらの特徴は、現在の建売住宅ではあまり見られない仕様だ。しかしながら、これは同社の顧客からの要望をまとめていった末に自然と落ち着きやすい仕様であるという。木村氏は、「最初は、3LDKで掃除が楽な家がほしい、と相談される」にもかかわらず、打合せを重ねて顧客にとっての理想の暮らしを突き詰めていくと、最終的には5つの特徴に沿った仕様に着地することが多いのだという。
木村氏はこれをスマートフォンとフィーチャーフォンの関係になぞらえる。「(フィーチャーフォン時代は)消費者の多くが軽くて画面の小さい端末を望んでいたように見えたが、今では大画面のスマートフォンが一般的になっているのと似ている」と話す。つまり、理想と思えるフィーチャーフォンではなくスマートフォンが普及したように、住まいについても理想とする新築物件ではなく特徴的なリノベーションを施した中古物件を選ぶことが「顧客の真のニーズではないか」というわけだ。
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