同社では、そのような「顧客の真のニーズ」をより高い次元で満たすため、IoT機器などを用いたリノベーション物件のスマート化に積極的に取り組んでいる。フィリップスのスマートLED電球「Philips Hue」を用いることで、リラックスするときは電球色、仕事の時は昼白色というように、シチュエーションに応じて照明の色合いを変えられるようにし、さらにワイヤレスで設置場所を自由に決められる専用の壁面スイッチを組み合わせるスマート化の例を紹介した。
また、床の段差を減らし、電源を目立たないところに配置。「ルンバ」のような自動掃除ロボットを効率良く稼働できる環境にして「掃除機掛けを全自動化する家」なども提案する。収納をできるだけ多く設けたいと考える顧客も少なくないが、収納を増やすと生活空間がその分圧迫されることから、「収納の多さは生活の質に寄与しない」とも指摘。スマートフォンアプリで管理できるクラウドクローゼットを導入することで、収納をむやみに増やすことなく生活の質を上げることを提案する。
このようにリノベーションを進めるなかで、新しい事業の方向性も見えてきたという。直接顧客からリノベーションの企画・施工を引き受けるだけでなく、不動産会社や物件の買い取り再販業者から依頼された「販売に苦戦している物件」のリノベーションを通じて、新たな付加価値を生み出すというものだ。
例えば、同社でリノベーションしたスマート照明付きの中古物件が、オーナーの住み替えのため賃貸で貸し出されるにあたっては、周辺の類似物件の相場が月額家賃約12万円だったところ、15万円で契約。5年前に2900万円で購入し、その後800万円かけて同社がリノベーションした物件は、販売開始1カ月後に4280万円で売却された。
さらに、35日間買い手のつかなかった物件をリノベーションしたところ、完工後29日で売買契約にこぎつけたケースも紹介。112日間買い手がつかず、同様にリノベーションしてからわずか5日で販売した例もあるという。
現在、多くの建売住宅にはない特徴が顧客から求められたり、リノベーションを施した物件が通常よりも短い販売期間、相場より高い値段で売却できたりすることから、木村氏は「ユーザーの住まいに対するニーズが業界の常識とは違っている」とコメント。中古物件のリノベーションは、以前は住宅にこだわりのある詳しい人しか興味を示さなかったが、今やそうではない一般層の顧客に広がっていることも近年の大きな変化であると語る。
これまでは「居住エリア」と「駅からの距離」が住まい選びにおける重視ポイントだったが、「内装の良さ」に価値を見いだし、それを住まい選びの1つの基準とするケースも増えてきつつあると木村氏。そういった動きがより進むことで「住まいのニーズはほぼ無限大に多様化する」と見る。
「5年後には、住宅を購入したからといって何十年もその場に住み続けるのではなく、生活の変化に合わせて住み替え、暮らしに合わせてチューニングするのが当たり前になる」とも話し、来場者1人1人にとっての住まいのあり方を、改めて考えさせられる講演となった。
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