ダイキン工業は、技術開発のコア拠点と位置づけるテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を公開した。
大阪府摂津市の淀川製作所内に、2015年11月にオープンしたTICは、6階建て延床面積は約4万8000平方メートルを持ち、約700人の技術者が勤務。最新の研究開発設備を備えた施設だ。
技術者が働くオフィス棟と、各種実験設備を完備した実験棟が、建物の左右に分かれており、オフィスワークをしながら、実験の必要性を感じたら、すぐに実験棟に移動して作業できるユニークな環境が作られている。
実験棟には、圧縮機やインバータ、モータ、ファンなどの実験室が隣り合わせるように設置されており、それぞれの技術者が連携しながら実験することが可能だ。また、化学分析などを行う実験室や、部屋全体を高熱環境にして機器を稼働させる熱空間衝撃室、ほかの機器に与える電磁ノイズを計測する10m電波暗室も用意されており、空調に関するあらゆる実験ができるようになっている。
特に、10m電波暗室は、1階と地下にそれぞれ室内機と室外機を設置し、個別に稼働させた状態で計測が可能な日本初の空調機に特化した設計が特徴だ。従来は室内機と室外機を一緒に計測していたためにノイズの状況や発生する箇所の発見が難しかったが、分離することで、室内機、室外機ごとにより精密な電磁ノイズの計測が可能になった。
また「協創」の場として、大学や研究機関、異業種の企業との連携しやすい環境を作り上げているのも特徴で、オープンスペースを活用し、議論などが活発にされている。
協創イノベーションでは、モノづくりに留まらず、コトづくりの実現を目指しており、ダイキンが持つ空調機器分野やフッ素化学分野の強みを生かしながら、協創による新たな価値創造に取り組んでいるという。
象徴的なのは、3階に設置された「知の森」で、TICを訪れた人たちが、議論やコラボレーションを深められるスペースと位置づける。ここまでは、入口のセキュリティを通過していれば、セキュリティゲートを通過することがなく入ることでき、社内外を問わず多くの人が、柔軟にコラボレーションができるシェアードスペースとなっている。
ダイキンでは昨今、空気環境と人体と関わり合いを研究するために、生理学や心理学などを取り入れた取り組みも開始しており、その観点からもTICは重要な役割を果たしている。
そのほか、4つの通訳ブースを設け、250人が収容可能な円形講義室、ダイキンの先端技術を展示したダイキンオープンラボ、落ち着いた空間で、リラックスしながら交流を深められる来客食堂、社内外を問わず、さまざまな業種の人たちが協創を積極的に進めることができるオープンスペースのフューチャーラボなどが用意されている。
6階フロアには、7つのフェロー室を設け、世界中の大学教授や異業種の研究者が、ダイキンの技術者にアドバイスしたり、少人数でテーマ研究を深めたりしている。2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏もフェローとして、年に数回TICを訪れ、一定期間、フェロー室を使用して、ダイキンの技術者にアドバイスをしているという。
1階エリアには、啓発館が設置され、創業者の山田晁氏の紹介や、エポックメイキングな商品、技術を展示。大阪金属工業所として創業して以来、ダイキンに脈々と流れる技術のDNAや強み、企業風土を感じられる。
ダイキンでは「技術革新で勝ち続けなければ、グローバルへの事業拡大や、メーカーとして永続的な発展ができないという危機意識から開設した拠点」と位置づけ、TICから生み出す成果を、最終製品に結びつけ、競争力の強化につなげているという。
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