パイオニアと、オランダの地図および位置情報サービスのHERE Technologies(以下、HERE)は、業務提携および資本提携に合意した発表した。今後、グローバルなデジタル地図サービスの提供などにおいて協業する。またHEREは、パイオニアの株式を3%取得。パイオニアはHEREの株式を1%未満取得する。
パイオニアとHEREは、2015年9月以降、自動運転で利用可能な技術に関して協議を開始。2016年5月には、自動運転向け地図データの効率的な更新、運用を可能にする「データエコシステム」の開発に、パイオニアの「3D-LiDARセンサー」を活用する実証実験で合意。さらに、2017年2月には、グローバルな地図ソリューションと、自動車業界などさまざまな業界向けの次世代位置情報サービスにおいて、戦略的な提携を進めることに合意していた経緯がある。
2017年6月には、パイオニアの子会社である地図情報事業のインクリメント・ピーとHEREが、自動運転時代に向けたグローバルな地図ソリューションの実現を目的とした協業で、基本契約を締結していた。
今回の協業では、ドライバーの安全性を高めることを目的としたグローバルなテレマティクス保険市場向けに、地図を活用した事故リスク予測プラットフォームと、ADASソリューションの開発などを進めることになる。
具体的には、HEREとインクリメント・ピーは、従来から提供しているデジタル地図データのグローバルな提供において協業。両社が保有するデジタル地図データを、既存および将来の商品やサービスに活用するという。デジタル地図データは、2017年中に提供を開始する。
両社は、共通フォーマットによるデジタル地図データをグローバルに供給していくための検討を開始。顧客に対して、品質管理などの観点でメリットを提供できるという。
さらに、安全で効率的な自動運転を可能にする高精度地図の共用化に向けての評価を両社で開始。今後、自動運転車両メーカー向けに、高精度地図データの提供を目指すことになる。
また、パイオニアとHEREは、両社の技術を活用して、地図を活用した事故リスク予測プラットフォームとADASソリューションを開発。地図と位置情報技術を活用し、自動車の速度や交通情報、天候、災害情報などの情報から、ドライブ時の事故リスクを予測できるという。まずは、保険業界を最初のターゲットにソリューションを開発する予定だ。
そのほか、両社では、パイオニアが開発中の3D-LiDARセンサー技術を活用し、自動運転用地図の更新、運用する「データエコシステム」の開発検討のほか、自動車業界以外の業界にも、パイオニアの市販用デバイスから収集したデータを、HEREの位置情報サービスへ活用する検討を開始。HEREとインクリメント・ピーの両社が地図を供給している地域に対して、両社のメリットが活かせる協業の可能性を模索していくという。
一方、資本提携についてHEREは、パイオニアが新規に発行する普通株式1111万7500株(発行済株式総数に対する割合は約3%)を、173万4330ユーロで取得。一方、パイオニアは、AUDI AG、BMW Group、Daimler AG による持株会社であるThere Holding B.V.から、同社が保有するHEREの株式(発行済株式総数に対する割合は1%未満)を同額で取得する。
パイオニア 代表取締役兼社長執行役員の小谷進氏は「HEREは、カーナビ向けデジタル地図情報では欧米市場において8割のシェアを持つ企業である。パイオニアの技術、製品、サービスを組み合わせることで、シナジー効果を最大限に発揮できると考えている。インクリメント・ピーは、カーナビ用のデジタル地図を開発する企業として1994年に設立。日本で高いシェアを誇っている。両社が持つ地図、クラウド、ナビゲーション、自動運転の強みを生かした今回の提携は、大きなシナジー効果を発揮できるだろう。今回の協業は、自動運転とIoT時代のオープンなグローバル位置情報プラットフォームの構築で連携するものであり、共通のプラットフォームにより、HEREが持つ欧米の地図情報と、インクリメント・ピーが持つ日本の地図情報が、1つのアプリで動かせるようになる。まずは、テレマティクス保険に向けたサービスソリューション連携を計画しており、2018年に商用サービスを予定しているが、これ以外にも、両社で検討している案件も多い。自動車業界以外にも成果を広げていきたいと考えている。スピード感を持って、協業を進めていく」と述べた。
HERE TechnologiesCEOのEdzard Overbeek氏は「HEREは、自動車業界向けマップ情報のリーダー企業であり、主要なクルマのほとんどがHEREの技術をナビゲーションなどに活用している。さらに、Facebook、Amazon、Microsoftなど、自動車業界以外の企業とも連携している。また、AUDI、BMW、Daimlerといった自動車メーカーや、インテルやNVIDIAなども出資している。今回、パイオニアによる出資により、日本だけでなく、世界に対して、3D化したHDマッピングソリューションを提供できる土台ができる」とし、「自動車業界だけに留まらず、さまざまな業界に対して、位置情報サービスのためのグローバルなオープンなプラットフォームを提供していける。これは屋内でも、屋外でも、オンラインでも、オフラインでも利用できるものであり、さまざまな業界で利用できるものである。そのなかで、日本は重要な市場になる」とした。
また「2050年には、全世界の人口は100億人になり、その多くが都市部に住むことになる。接続される端末は230億台、コネクテッドカーは2億5000万台に増加、データ転送の速度は50倍以上になり、センサーデータも急増していく。都市部ではモビリティや運輸、輸送が複雑になるが、パイオニアやインクリメント・ピーとの緊密な関係によって、それを解決し、企業や個人が必要とする自動化ソリューションを提供でき、物流の効率化などにも役立つ。今後は、すべてのものが自動化する社会が生まれる。自動車やドローン、ロボットが接続された世界がやってくる。すべてのものが市民生活のなかに組み込まれていくことになる。また、幅広い業界に対して、ソリューションを提供することも必要である。そのためには、グローバルの広がりに対応できるパートナーシップが重要である」などとした。
一方、自動運転に積極的に取り組んでいるグーグルへの対抗については、「グーグルとは戦略が大きく異なる。グーグルは地図情報を生成する上でパートナーの参加を呼びかけているが、それを自分たちの地図情報に生かすクローズドシステムである。それに対して、我々の取り組みは、オープンシステムであり、パートナーが参加して、そのプラットフォームの上で、自分たちのサービスとして広げることができる」(Overbeek氏)とした。
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