住宅を旅行者に有料で貸し出す「民泊」のルールを定めた民泊新法(住宅宿泊事業法)が、2018年4月に施行される予定だ。これを受けて、時間単位で施設や店舗を貸し借りできるマーケットプレイス「スペースマーケット」を運営するスペースマーケットは9月5日、民泊事業に本格参入することを発表した。
2014年にサービスを開始したスペースマーケットには現在、古民家や飲食店、さらには球場やお寺など、約1万2000件のスペースが登録されており、成約数は前年同月比で300%に増加。月間に数千件の貸し借りが発生しているという。施設を借りるゲストの割合は、個人が7割、法人が3割となっている。
人気のスペースは、デザイナーズマンションの一室や、キッチンが使える一軒家など。また、スペースマーケットでは自社で借りた物件を、“インスタ映え”しそうなオシャレな内装にリノベーションして「fika(フィーカ)」(スウェーデン語で「お茶をする」という意味)というブランド名で貸し出している。これまでに上北沢と桜上水に展開しており、女子会やお家デートなど幅広い用途で使われているとのこと。
今後も、不動産会社や鉄道会社と連携して、空き家などを同ブランドでリノベーションしていく予定。また、fikaブランドの物件でメーカーの家具や飲料などのサンプルを試してもらう、マーケティングとしての活用も進めていきたいという。
そして、同社はいよいよ民泊事業に本格参入する。実は2016年より小規模に開始していたが、民泊新法の施行と同時に新たなプラットフォーム「スペースマーケットSTAY」を開設し、法に則った安心・安全かつユニークな宿泊体験を提供していくという。2017年秋に、民泊施設提供者の登録受付を開始する予定だ。
民泊新法の施行に向けて、世界大手の「Airbnb」がみずほ銀行と提携し、日本でテレビCMも放映するなど国内展開を加速しているほか、楽天とLIFULLが手を組んで民泊事業に参入するなど、競争が激化している民泊市場。その中で、スペースマーケットはいかにして独自性を発揮するのだろうか。
この疑問に対し、スペースマーケット代表取締役CEOの重松大輔氏は、住宅を貸し出すホストが、「時間単位」と「宿泊」の“2通り”から貸し出し方法を選び、1つの画面上で管理できるところが他社との最大の違いだと話す。民泊新法では、年間の貸し出し上限を180日間までと定めているが、残りの185日間をレンタルスペースとして時間貸しすることで、合法かつ効率的に運用できると説明する。
また民泊には興味があるけれど、いきなり自宅に他人を泊めるのが不安で二の足を踏んでいる人も多いと話す。そのため、まずは時間貸しから始めて、慣れてきたら宿泊も始めるといった段階を設けることで、貸し出す人も増えるのではないかと見ている。「空き家の持ち主にはそこで過ごした思い出もあり、何かあった時には戻りたいというニーズがかなりある。民泊などでたまに使ってもらうことで、財産も守れるし、戻りたい時には戻れる」(重松氏)。
重松氏によれば、現在登録されているスペースの約1割が住宅スペースだという。利用件数でみると、時間貸しの利用数に対して約2割が住宅での利用であることから、他のスペースと比べても住宅スペースは人気が高まっていると説明する。民泊事業を開始することで、住宅スペースのうちの8~9割は、民泊施設としても登録してもらえるのではないかと期待を寄せた。
同社では民泊でのトラブルに備えて、ホストやゲストを事故や損害から守るための補償サービスを、損害保険ジャパン日本興亜とともに2017年6月末に開始。これにより、ゲストが物件滞在中にホストの所有物や部屋の壁を壊したり、逆にゲストがホストの用意した住宅が原因で怪我をしたりした場合に、1億円(自己負担額10万円)を上限に補償するとしている。
また同日には、同社の弁護士でシェアリングエコノミー協会事務局にも参画する石原遥平氏が監修した「民泊ガイド」も公開した。180日の規則ルールや届出制、施行に向けたスケジュールや運営ノウハウなどを、初心者にもわかりやすく紹介する。石原氏は、シェアリングエコノミー認証制度プロジェクトのリーダーも務めており、各省庁とのやり取りで得た最新の情報も盛り込んでいく予定だという。
このほか、民泊施設を提供したいホストと直接会って、民泊への疑問や不安を解消するミートアップを開催する予定。スペースマーケットで民泊ホストの事前登録をしたユーザーに対し、ミートアップへの参加方法などをメールで通知するとしている。
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