「シムシティ」で街づくりを学ぶ“政治塾”--エレクトロニック・アーツが開催

 都市経営シミュレーションゲームアプリ「シムシティ ビルドイット」(iOS/Android)を展開するエレクトロニック・アーツは、8月21日から23日の3日間にわたり、同アプリを通じて都市行政や街づくりを専門家から学ぶイベント「SIMCITY BUILDIT School of Politics」を開催した。


「SIMCITY BUILDIT School of Politics」の模様

 SIMCITY BUILDIT School of Politicsは、プレイヤーが市長となり試行錯誤しながら都市計画や都市運営をシミュレーションできるシムシティ ビルドイットの特徴を生かして、リアルな都市行政や街づくりに親しみをもってもらう目的で開催された。地方行政や都市デザインの専門家を講師として招聘し、参加者は専門的な理論をゲームのシミュレーションという形で楽しみながら学んだ。ゲーム性と教育を掛け合わせた“エデュテイメント”は小学校でのプログラミング教育などでも活用が進んでおり、シムシティ ビルドイットのエデュテイメントとしての側面を体験してもらうことが狙いだ。

 3日間のイベントでは、元宮崎県知事の東国原英夫氏が「生活者の満足度を上げる/下げる政策」をテーマに講演をしたほか、地方自治ジャーナリストの相川俊英氏が「これからの時代の地方自治と地域活性化のあり方」をテーマに講演。そして取材をした8月22日には、工学院大学建築学部まちづくり学科の教授である遠藤新氏が、「都市デザインの考察 -機能性と有機性を考えた魅力ある都市-」と題した講演を行った。


ゲーム画面を見ながら解説する遠藤氏

 遠藤氏は、「なぜ人は都市に集まるのか」「成長する都市の条件」「都市のマネジメント」といったテーマで、世界各国の代表的な都市を引き合いに出しながら講座を展開したほか、説明した理論を反映させたシムシティ ビルドイットのゲーム画面を見せながら、理論を体現した都市の姿について解説。集まった参加者は遠藤氏の話に熱心に耳を傾け、同氏とのディスカッションも積極的に参加していた。

 参加者のひとりである鈴木千沙さんは、「もともと政治や街づくりに関心があり、シムシティ ビルドイットのプレイヤーではないが参加してみたいと思った。イベントでは専門家から理論や実例を直接聞けたことで、独学ではわからないところまで理解できた。また理論をシムシティ ビルドイットによって実際に動かしてみるところはとても参考になった」とコメント。また、シムシティに行政に関するリアルなオープンデータを組み合わせると、より面白いシミュレーションができるのではないかと提案した。


各講師が監修したテキストが参加者に配布された

 イベントには、セプテーニやTwitter Japanを経て現在は世田谷区議を務める薗部誠弥氏が私的に参加しており、取材に対して「自分自身が仕事として街づくりに関わっているので、専門家の理論を実際の行政でどのように実現できるのかを想像しながら聴講させてもらった。(エデュテイメントについては)政治経済の分野は教科書を読むだけではイメージできないからと政治家のもとに研修に来る学生も多いが、自分自身で考えて政策を実行することで街が変化していくという一連のプロセスを、ゲームを通じて学べるのは、リアルな政治経済や街づくりを考える一歩になるのではないか」と語った。

 2日目に都市デザインをテーマに講演をした遠藤新氏は、「“都市を魅力的だと感じる”のは抽象的な概念だが、実際にその魅力は街の空間や形、環境といったさまざまな物理的な要素が生み出していることを伝えたいと考えて講演をした」と、今回の講演の狙いを説明した。


都市デザインをテーマに講演を行った工学院大学の遠藤新教授

 そして、講演の中にシムシティ ビルドイットを取り入れたことについては、「都市づくりのベースになる理論が異なると(ゲーム上の都市が)全く違う姿になり、それがリアルの理論とも整合性が取れている点が興味深かった。ゲームによるエデュテイメントは、これまで関心が薄かった人に対しても学びのハードルを下げてくれる。また、リアルではなかなか難しい、全体を俯瞰するシミュレーションや理想的な姿を形にするシミュレーションをすることで、現実世界では発見しにくい気づきを得ることができるのではないか」と可能性を指摘した。

 「自分が住んでいる地域へのエンゲージメントが希薄になりつつある現代の都市生活では、“今”にばかり関心を持ち都市の変化にはあまり目を向けようとしない。こうしたゲームを通じて、都市デザインや都市マネジメントに触れて時間軸で都市を見てみる機会をきっかけに、未来志向で自分たちが暮らす都市のあり方を考える一歩を踏み出してもらえれば」(遠藤氏)。

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