KDDIは8月2日、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコムを連結子会社化することを発表した。一部では買収額は200億円と報じられていたが、KDDI広報によれば「非開示」だという。8月下旬を目途にソラコムの株式を取得する予定。8月8日には、同買収に関する共同記者会見が開かれ、両社がそれぞれの狙いや期待を語った。
ソラコムが展開するIoT通信プラットフォームのSORACOMは、MVNOとしてデータ通信SIMを提供しており、IoT/M2Mデバイスのモバイルデータ通信を、1回線・1日10円からの従量課金で利用できることが特徴。また、ウェブコンソールやAPIから回線やデバイスを一括操作・管理できるほか、クラウド連携や閉域接続などの各種サービスを活用できる。
2015年9月に日本でサービスを開始後、米国・欧州でもサービスを開始し、現在は120を超える国と地域で展開。これまで、国内外合わせて7000の顧客に導入されているという。さらに、パートナープログラム「SORACOM パートナースペース」には350社以上が登録しているという。
両社はすでに連携をしており、2016年10月にはIoT向け回線サービス「KDDI IoTコネクト Air」を共同開発し、同年12月から提供を開始。また2017年1月には、ソラコムのシステムとKDDI IoTコネクト Airを連携させた法人向けの検証キット「LoRa PoCキット」を提供するなどしていた。
提携を継続するという形もあるが、なぜKDDIは買収を選んだのだろうか。その疑問について、KDDI バリュー事業本部 バリュー事業企画本部長の新居眞吾氏は、「(過去の協業を通じて)ソラコムがKDDIの事業の発展に非常に有益だと思った。ソラコムのリソースを使って、KDDIのためにコミットしていただくという観点から(株式の)過半数を取得した方がいいと判断した」と説明する。
また、「KDDIの傘下になって、ソラコムの良さがなくなるのではという声もあるが、そういったことは決してない。われわれはソラコムをサポートすることでグループ全体として成長できる」と強調。7期目に入った起業家支援プログラム「KDDI ∞ Labo」をはじめ、KDDIではこれまでも積極的にスタートアップを支援してきたと説明し、ソラコムを傘下に加えることで、同社の成長を加速させたいと話す。
新居氏は、今回の買収を通じて両社が生み出すシナジーは大きく4つあると話す。1つ目が、KDDIのIoT/M2Mの導入実績やソラコムのIoT通信の知見を合わせたユースケースの蓄積による「新たなIoTビジネスの創出」。2つ目が、KDDIのビジネス基盤とソラコムの通信プラットフォームを組み合わせた、世界に通じる「日本発のIoTプラットフォームの構築」。
3つ目が、KDDIの600社以上の海外通信事業者のパートナーと世界100カ所以上の海外事業拠点を活用した「ソラコムの海外展開加速」。そして、4つ目がKDDIのネットワーク基盤とソラコムのクラウドネイティブなソフトウェア開発技術による「次世代ネットワーク基盤(LPWA/5G)の構築」だ。
新居氏によれば、大企業であってもIoT事業は試験的に小規模で始めたいという企業が多いという。そのため今後は、IoT事業をスモールスタートしたい顧客向けには、多様な産業で小規模からクイックスタートできるソラコムのIoT通信を提供し、規模が拡大してきたタイミングでKDDIに引き継ぐといった“ハイブリッド展開”を考えているという。また、データ分析のARISE analyticsや、広告配信プラットフォームのSupershipなど、KDDI子会社とソラコムの連携なども進めていきたいとした。
続いて登壇した、KDDI ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 副本部長の藤井彰人氏は、国内のIoT導入率は海外に比べると低く、その意識自体も低いと指摘し、普及の妨げとなっている課題が「ネットワークインフラ」「端末・センサ」「ビジネスモデル」「人材育成」だと話す。
そうした課題に対し、KDDIではIoT向け通信技術の「LPWA」の商用化を進めているほか、LTEや5Gなどの最新技術にも投資していると説明。また、約15年前からIoT/M2Mの取り組みを進めており、提案できるセンサデバイスは2000種類を超えると話す。さらに、企業向けのIoTクラウドソリューションによって蓄積したデータを可視化・分析することで、解決策なども提示できるとした。ソラコムとの連携でもこうした“資産”を活用したい考えだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」