日立製作所は7月25日、ソフトバンクグループ傘下のPSソリューションズと国際熱帯農業センター(CIAT)が、国際競争力のある持続可能な農業の実現に向けた国際共同研究プロジェクトの一環として、農業IoTソリューション「e-kakashi」の実証実験をコロンビアで開始したと発表した。
PSソリューションズが提供するe-kakashiは、田畑から環境情報や作物の生育情報を収集してクラウドで分析、可視化した結果をフィードバックするソリューション。分析結果は、電子栽培ナビゲーションである「ekナビ」としてユーザーに提供され、農業における意思決定、リスクヘッジなどに寄与しているという。
e-kakashiのコロンビアへの導入については、IoT分野を成長事業の1つとして注力する日立製作所が、PSソリューションズの開発パートナーとしてe-kakashiをトータルに支援する。具体的には、農業フィールドに適したIoTデバイスからクラウドまでセンサデータを収集・蓄積・管理する環境を総合的に提供し、e-kakashiのサービスを支える。今回の実証実験では、コロンビアにおいても安定したサービスが提供できるよう技術支援をするという。
国際熱帯農業センターは、主に新品種の開発を担当するが、センターとしてEco-Efficient Agricultureを掲げており、開発された新品種の導入と省資源型稲作の実現による生産性の向上を目指すという。
さらに、e-kakashiを初の海外展開としてコロンビアで導入し、灌漑・施肥、また作業管理の低減や精密な栽培管理のためのモニタリングを開始する。将来的には、コロンビアの異なる栽培環境(カリ地方、イバゲ地方、サルダーニャ地方など)において信頼できるデータの収集と、アプリケーションの開発などを進めることで投資を促し、農業のIoT化をコロンビア政府、稲作生産者組合(FEDEARROZ)および、農家単位で促進させることを目標とする。
PSソリューションズによると、気象データなどをリアルタイムで共有するセンサはすでにコロンビア国内でも導入されているが、e-kakashiのようにクラウドでのデータ分析や栽培方法をナビゲートするシステムはまだなく、コロンビアの農業が抱える課題解決への貢献が期待されているという。
現在、コロンビアでは、コメの1人あたりの年間消費量が40kgを超え、一年生作物で同国最大の栽培面積を占める重要作物となっているという。しかし、コロンビア国内でのコメの需要が高まる一方で、気候変動などの影響や灌漑水・施肥成分の利用効率が低いことによる生産コストの高さにより、作付け面積、収量が伸び悩み、コメ消費の自給率に課題を抱えている。
コロンビアでは、2012年に発効された米国との自由貿易協定(FTA)により現在80%の関税が段階的に撤廃され、2030年には米国産コメの完全輸入自由化が開始される。そのため、輸入米増加にともなう国内でのコメ生産の縮小を防ぎ、国際競争力のある持続可能な農業を確立することが求められているという。
そこで、国際熱帯農業センターとPSソリューションズは、日本の先端農業IoT技術を活用した精密な栽培管理による生産性の向上を実現すべく、現地での実証実験を開始した。
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