個々のがん細胞を1つずつ取り除けるほどの精密さで外科手術を行う医師を想像してほしい。微小ロボットによって、こうした精度を実現することが可能になるかもしれない。超小型ロボットを医療に活用するという話は過去にも報じられたことがあるが、このテクノロジは依然として初歩的な段階にある。
今回、米ノースカロライナ州立大学とデューク大学の研究者らは、超小型マシンをプログラムして、単一細胞を捕獲および移動させることが可能であることを実証した。
この微小ロボット(マイクロボット、ナノボットとも呼ばれる)は、同大学が「Microbot Origami」と呼ぶ微小なポリマー製の立方体から作られている。微小ロボットを磁場によって制御できるようにするため、立方体の一面は金属で覆われている。研究者らは折り紙のように、複数の立方体を連結し、折りたたむ方法を設計した。磁場を当てることで、立方体の連結が開いたり、閉じたりする。
米国時間8月4日に「Science Advances」誌に掲載された論文の中で、研究者らは、「パックマン」風ロボットの開閉の動きを制御して、1つの酵母細胞を捕獲し、移動させる仕組みを説明している。
このプロジェクトに取り組んだノースカロライナ州立大学の研究者の1人であるOrlin D. Velev氏は米ZDNetに対し、「われわれは、さまざまな細胞や脂質小胞(この中に薬を封入し運搬する)の微小な締め付けや圧迫に対する抵抗の特性を明らかにするツールとしてマイクロボットを使うことで、そうしたプロセスを科学的に有用なものにする計画だ」と述べた。
今回の研究は、マサチューセッツ工科大学(MIT)が2016年に実証した体内で摂取可能な折り紙型ロボットなどの、過去の研究を発展させたものだ。従来のマイクロボットは、物体を押すことしかできなかったので、実際にはそれほど多くのタスクを実行できるわけではなかった。ノースカロライナ州立大学が今回発表した新バージョンは、オンデマンドで形を変えられるので、これまでよりはるかに多様な機能を実行することが可能だ。
「医療用のマイクロデバイスの初期プロトタイプには、ほかにもさまざまなものが存在する。しかし、われわれのマイクロボットには、新しい要素がある。磁場を通して、外部からエネルギーを注入できることだ。マイクロボットはそのエネルギーを使って、局所的に自らの形を変える。したがって、新しい要素とは、外部磁場でマイクロボットを引っ張り回すのではなく、マイクロボットにエネルギーを与える手段として局所的な磁気作用を利用できることだ」
2016年のノーベル化学賞が世界最小のマシンを構築した人々に授与されたとき、スウェーデン王立科学アカデミーはナノスケールのモーターについて、1830年代の電気モーターと同じ発達段階にある、と述べた。このとき、科学者らはプロトタイプを実証したが、将来どのように利用されるのかは分かっていなかった。微小ロボットの可能性は、まさに広がり始めたところだと言える。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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