人間文化研究機構 国文学研究資料館(国文研)とPFUは8月1日、歴史的典籍(古典籍)に特化したブックスキャナの実証実験を実施したと発表した。
この実験は、「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」(歴史的典籍NW事業)の一環として行っているもの。古典籍の研究者を擁する国文研の専門的知見のもと、PFUが開発中の可搬型ブックスキャナを世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に登録されている闘鶏神社(とうけいじんじゃ)に持ち込み、同社が所蔵する古典籍「今昔物語集(写本)」を電子化した。
国文研は、歴史的典籍NW事業の中心として、国内外の大学等と連携し、日本古典籍に関する国際共同研究ネットワークの構築に取り組んでいる。
近代以前に作られた古典籍は、作成から時間が経過しているため、紙そのものの劣化や、災害による消失のリスクが大きな課題だ。そこで、電子化することで、原本で見た場合と同程度の解像度で保存していく計画を進めている。
国文研とPFUは、2016年1月から3年間の共同研究契約を締結し、今般、古典籍が保管されている闘鶏神社に可搬型ブックスキャナを実際に持ち込み所蔵本の電子化を行う、初めての実証実験に至ったという。
撮影ブースを使った古典籍の電子化作業は、一般的に、撮影ブースの設営や機材調整、撮影などで半日~1日程度かかるが、保護性などを追求した可搬型ブックスキャナを用いた本実証実験では、約2時間で「今昔物語集」写本5冊、計211イメージの電子化作業を完了でき、電子化作業を大幅に効率化した。24ビットフルカラー、400dpiの画像データだ。
可搬型ブックスキャナはバッテリを内蔵しており、寺社や個人宅など、古典籍の所有者の現場にスキャナとPCを持ち込むだけで、容易に電子化作業が行える。また、上からスキャンする方式を採用しているため、フラットベッド式のスキャナを利用する場合と比較し、古典籍へのダメージを最小限に抑え、書籍に優しく簡単な操作で電子化できる。
今後は、歴史的典籍NW事業の古典籍電子化において、ブックスキャナの実用化を進めていくとともに、契約書や記念誌など綴じ冊子の電子化も可能な汎用性のある装置の開発を目指すとしている。
なお、今回の実証実験で撮影した今昔物語集(写本)に関する研究成果報告は、8月5日に和歌山件田辺市で行われる「2017年度南方熊楠研究会夏季例会」で報告される。また、可搬型ブックスキャナの試作機も展示するとのことだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」