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富士通、レノボとのPC事業提携はどうなる--CFOが口にした「仮に」とは

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 富士通が、7月27日に発表した2018年3月期第1四半期(2017年4~6月)連結業績の発表の席上、同社代表取締役副社長兼CFOの塚野英博氏は、レノボと話し合いを進めている、統合を前提としたPC事業の提携に関する進捗状況について、「(正式な契約を結ぶまでに)それほど時間はかからないと見ている」との発言を繰り返した。


富士通代表取締役副社長兼CFOの塚野英博氏

 富士通は2016年10月27日に、レノボとグローバル市場に向けたPCの研究、開発、設計、製造に関する戦略的な提携について検討を進めていることを正式に発表。2017年1月31日の2017年3月期第3四半期決算発表の席上では、塚野代表取締役副社長兼CFOが「年度内には確実に作り上げたい」と、3月31日までの締結を示唆。だがその言葉通りにはならず、2017年度に入っても契約が結ばれないままだった。

 4月28日に開かれた2017年3月期連結業績の会見では、富士通の代表取締役社長の田中達也氏は「できるだけ早い最終合意を目指している」とコメント。さらに、6月6日の経営方針説明会においても、田中社長は「早晩まとまると考えている。その時期は、そんなに遅い時期ではない」と発言していたが、現時点でも契約はまとまっていない。

 今回の会見でも、塚野代表取締役副社長兼CFOは「ご心配をおかけし、お待たせして申し訳ない」としながらも、「話し合いは、粛々と進んでいる。マーケットが世界全体に及んでいるため、その点を両社でしっかり協議し、最大の価値を生み出していくことを目指している。それほど時間はかからないと見ている」と述べた。

 これまでの発言を繰り返しながら、進捗が遅れていることに関する具体的な説明がないのは過去の発言と変わらない。もはや、その発言にも信憑性がなくなっていると受け取られても仕方がないだろう。

 かつて、富士通、東芝、VAIOのPC事業の統合が破談になった経緯があるだけに、記者の間からも「今回の話も破談になるのではないか」といった見方が広がりつつある。

 これに対して田中社長は、6月6日の会見で「これが破談になることはない」と断言しており、今回の会見でも、塚野代表取締役副社長兼CFOが「壊れてしまうのではないかという指摘もあるが、これは壊れない」と断言してみせた。

 だが今回の会見では、塚野代表取締役副社長兼CFOが「仮に、これができなくなったとしても」という仮説を披露。これまでにはない発言だった。それだけに、破談の可能性が出てきたという見方が、瞬間的に記者の間に広がったのは明らかだ。

 塚野代表取締役副社長兼CFOは、それを察して「あくまでも仮にということで話しただけの話であり、無くなるものではない。『できあがる』といえる」と、記者団の見方を払拭してみせたが、同社幹部が「仮に」という言葉を使って、レノボとの事業提携の進捗について説明したのは今回が初めてだった。

 仮説として説明した内容は「長期的に見れば、PC事業はスケールを模索する事業であり、1社のままでは、スケールを持つ水準にまで引き上げることは難しい。仮に国内だけでPC事業をやるということにしても、生き延びる時間は長くなるが、所詮は有限の時間である。より強くなるための方策は見つけなくてはならない」というものだった。

 このコメントからも、あくまでもPC事業の分離を前提にしていることは明らかだといえるが、長期化している話し合いの行方を懸念する見方は徐々に強まっているのは仕方がないことだろう。

回復貴重のPC事業、懸念材料は部材価格の高騰

 

 こうしたなか、富士通のPC事業は回復基調にある。このほど発表した2018年3月期第1四半期業績においても、PCおよび携帯電話事業で構成されるユビキタスソリューションセグメントは、売上高が前年同期比16.2%増の1540億円、営業利益は159.2%増の55億円と、大幅な増収増益を達成。PC事業は黒字化しているという。


 塚野代表取締役副社長兼CFOは「PCは、個人向けを中心に伸長しており、狭額縁大画面といったデザイン性を高めたデスクトップや、世界最軽量とともに堅牢性の高いノートPCなど、差別化した製品が市場に受け入れられている。また法人向けPCも堅調であり、増収になった」と説明する。

 さらに、「PCの買い替えサイクルが、これまでの3~4年ではなく、5~6年へと長期化し、良いものを購入して、長期間使用する傾向が出てきている。その結果、品質がいいものを使いたいという動きがある」とし、これも単価上昇とともに、PC事業の利益貢献に寄与していることを示した。

 こうしたPC事業の回復は、レノボとの事業統合が破談になっても、自力での事業回復を目指せる可能性が生まれたともいえそうだ。実際東芝は、国内市場にPCビジネスを絞り込むことで、業績回復の道筋が立ったとして、他社との事業統合をやめ、自力での再生を目指している。

 富士通にとっても、そうした選択肢が生まれてもいいのかもしれないが、先に触れた「仮説」において、国内でのビジネスに限定した選択肢がないこと、グローバルでビジネスを展開する上では1社展開には限界があることを示すなど、自力再生の道は相変わらずないことを強調する姿勢は変わっていない。

 一方で、短期的な懸念材料としてあげたのが、PCやスマホ向けのメモリ、液晶などの部材価格の上昇だ。「2018年前半ぐらいまでは需要が右肩上がりの状況が続くと見ており、それにより市況価格が上昇している。またドル建て購入が多いため、円安の状況は、部材価格の上昇に影響する」と語る。第1四半期はPC事業の好調ぶりに支えられ、「増収効果により、これを跳ね返し、増益になった」とするが、部材価格の高止まりは、PC事業の収益性悪化にも直結するだけに、部材価格の影響が顕在化する前に、早く切り離したいというのも本音だろう。

 いずれにしろ利益水準が低く、市場変化の影響を受けやすいPC事業の分離が、田中社長が経営計画で掲げた2018年度の営業利益率6%ゾーンへの到達と、在任中の目標とした営業利益率10%の達成には不可欠との考えが、田中社長をはじめとする経営陣には根強いのは確かだ。富士通のPC事業にとって、中途半端な状況はいつまで続くのだろうか。それは事業を推進する現場にとってもいいことではないだろう。

 そして、富士通の経営トップが言う「早期にまとまる」という発言が実現されない状況が続いていることは、経営トップの発言に対する信頼感を失うことにもつながっている。



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