メドピアは、テクノロジを活用した予防医療の課題解決について考えるセミナー『MedPeer Healthtech Academy Chapter 3~「予防医療×テクノロジー」の“今”をつかみ“未来”をつくる』を開催した。その中で行われた講演『介護予防とIoT ~Fit with AI Trainer~』において、ソニーモバイルコミュニケーションズ IoT事業部 SF-Projectの廣部圭祐氏が、高齢者の介護予防に向けた同社のソリューション「FAIT(ファイト)」を紹介した。
FAITは、ウェアラブル端末を使った日常の運動、睡眠、食事に関するデータ収集と、タブレット端末やセンサを使った毎月の体力や認知機能の測定を基に、ディープラーニングによる個別アドバイスを高齢者に提供。データを基にした日常のトレーニング方法などをユーザーにレコメンドすることで、体力の増進や認知症予防を推進し、高齢者が要介護状態になることを予防することを目指したソリューションだ。
ソニーモバイルといえば、スマートフォン「Xperia」を中心とする通信機器事業や傘下のソニーネットワークコミュニケーションズが展開する「So-net」「NURO」などの通信事業が主たる事業であるが、同社では新たな事業の柱としてIoT領域の新規事業の創出に積極的に取り組んでいるという。
「携帯電話の売れ行きが世界的に縮小傾向にある中で、これからはさまざまなサービスや事業を組み立てていかなければならない。2016年に実施したSo-netの子会社化もそのひとつ。そして、サービスを生み出すIoTビジネス開発部門を新設し、ハードウェア、通信オペレーション、サービスクリエイションを自社の中で展開できるようにした」と廣部氏は語る。
そして、この新設されたIoTビジネス開発部門から生み出されたのがFAITだが、どのような狙いがあってサービスを生み出したのだろうか。
廣部氏は、日本における介護費用が年々増加している点、平均寿命と健康寿命(医療や介護に依存せずに自立した生活ができること)の差が男性で約9年、女性で約12年と大きい点、高齢者を高齢者が介護するいわゆる“老老介護”が社会問題になっている点などサービス開発の背景にある社会の状況を列挙した。
その上で「こうした社会問題にソニーのアセットを活用して何か解決策が見いだせないかと開発したのがFAITだ。目指すべきゴールは“Live Longer, Live Happier(長く生きるほどもっと幸せになろう)”であり、そのためにIoTやAIを活用して要介護状態になることを予防して健康寿命を延伸するというサポートに着目した」と述べた。廣部氏が述べたように、この講演タイトルにある「介護予防」とは「要介護状態になることを予防すること」を指す。
健康寿命を延伸するためには、どのようなメカニズムで高齢者が要介護状態になってしまうのかを理解する必要がある。廣部氏は「要介護状態になるメカニズムで重要なのは、運動機能と認知機能に関するデータだ」と語り、FAITの開発過程のひとつとして日本と台湾で実施した大学などと実施している共同研究を紹介した。日本では筑波大学と主に体力や運動機能の増進と介護予防の関連性に関する調査・研究を2016年から行い、台湾では台北栄民総医院、国立精華大学と主に認知症やMCI(軽度認知障害)に関する調査・研究を2017年3月から行っているという。
加えて、IoTやAI、ゲーミフィケーションを含めたコンテンツ、通信技術やスマートデバイスを活用した課題解決を生み出していくために重要になってくるのが、ユーザーが高齢者であることによる特有の課題だ。「既にあるテクノロジを高齢者に適用する上での制約や条件が大きな課題だ。ICT関連のリテラシーが低い点、若いユーザーよりも一層の安全性に気を配る必要がある点、高齢者の中にはスマホを持っていない人が多い点、高齢者特有のユースケース、高齢者自身が既に運動機能低下の状態にある場合などを踏まえて、サービスを組み立てなければならない」(廣部氏)。
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