2020年を見据えて、スポーツ動画ビジネスは何を目指すのか--朝日新聞らが議論

 ブライトコーブは7月14日、動画ビジネスや動画マーケティングに関するさまざまなテーマを議論するカンファレンスイベント「Brightcove PLAY 2017 Tokyo」を開催した。

 「今年も注目!スポーツ動画ビジネスのチャレンジ」と題したパネルディスカッションには、ワイズ・スポーツの代表取締役社長である小林貴樹氏、朝日新聞社 総合プロデュース室のプロデューサーである三橋有斗氏、社団法人リコネクトテレビジョンの代表理事である須澤壮太氏が登壇し、スポーツ中継の動画配信ビジネスをめぐる可能性や課題についてディスカッションした。

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(左から)ワイズ・スポーツの小林貴樹氏、朝日新聞社の三橋有斗氏、リコネクトテレビジョンの代表理事の須澤壮太氏

インターネットならではの、スポーツ中継の在り方を考える

 このセッションに登壇した3社は、それぞれ異なる形でネットスポーツ中継のサービスを展開している。ワイズ・スポーツは「SportNavi」や「SportsNavi Live」を通じてプロ野球をはじめとする人気スポーツの試合ダイジェスト動画やライブ中継の配信を実施。朝日新聞社は、ABC朝日放送(大阪)と協業して高校野球を中継配信しているほか、全試合を網羅する無料サービス「バーチャル高校野球」を2015年から展開。リコネクトテレビジョンは、普段はテレビ中継されることの少ないマイナースポーツにフォーカスを当て、スポーツの発展を目指す動画配信サービスを展開している。

 今シーズンからJリーグの試合中継を開始したDAZN(ダゾーン)の市場参入や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けたスポーツ市場の盛り上がりなど、スポーツの動画中継を巡る市場動向は明るいように感じられる。では実際、こうしたサービスの運営を通じて、各社はどのような手ごたえや課題を感じているのだろうか。まずは、スポーツのネットライブ中継の可能性について意見が交わされた。

 ワイズ・スポーツの小林氏が指摘したのは、“ネットスポーツ中継ならではの価値はどこにあるのか”という命題だ。小林氏は有料サービスであるSportsNavi Liveについて「事業の規模感からすると、苦戦しているのは事実」と述べた上で、ネット配信の視聴スタイルで最も多いのが「一人で、家で観る」という現状を指摘。「私たちがネットスポーツ中継に参入したときは、もっとスマートフォンで(屋外や移動中に)観るというスタイルを構想していたが、実際には“一人で、家で”というところに留まっているという点が大きな課題だ。もっとインターネットらしいスポーツ中継の楽しみ方を提案していかなければならない」(小林氏)。

 この“インターネットらしい楽しみ方”という点について、朝日新聞社の三橋氏が挙げたのはテレビ中継のような番組の枠組みにとらわれず、テレビでは全国放送されることの少ない地方大会の中継や情報を届けることができる網羅性だ。「たとえば、沖縄の地方大会は地元ではテレビ放送されるかもしれないが、東京などでは触れる機会がなかった。『バーチャル高校野球』を通じて、今までなかなか観ることができなかった試合を観られるようになったのは、“インターネットならでは”」と三橋氏は話す。同氏によると、バーチャル高校野球ではピッチャーの目線やバッターの目線など、4つの視点の映像を視聴者が切り替えながら視聴できるそうで、こうした点も“インターネットならでは”の楽しみ方だと言えるだろう。

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全国の地方大会を中継する「バーチャル高校野球」

 テレビ放送では観ることができないスポーツ中継を届けることができるという利点については、リコネクトテレビジョンの須澤氏も同調した。リコネクトテレビジョンは日本ではなかなかテレビ中継されることの少ないアメリカンフットボールに特化した「アメフトライブ by rtv」を展開し、関西学生アメリカンフットボールリーグの試合を全試合中継しているのだという。

 須澤氏は「視聴者からの反響は、そもそもテレビ中継されることのなかった試合が観られることへの喜びが大きい。今までコンテンツになっていなかったものをコンテンツ化できるところに、インターネットならではの利点があるのではないか」と語り、ニッチなコンテンツをファンに届けられることがネットスポーツ中継のメリットであるという認識を示した。

 加えて、三橋氏と須澤氏はTwitterやFacebookなどのSNSを活用したリアルタイムな情報の拡散や感情の共有をネットスポーツ中継の利点のひとつに挙げている。この点について小林氏は「ネットスポーツ中継が(他のネットサービスと連携して)いかにネットサービスの中で孤立しないかを考えることが重要ではないか」と指摘した。

“テレビ中継と同じ”では、ネットスポーツ中継に価値は生まれない

 続けて小林氏は、“いつでもどこでも”というネットスポーツ中継にありがちなセールスポイントについて、「“いつでもどこでもテレビと同じものが視聴できる”というだけでは価値はないのではないか。オフィスの休憩時間や移動中などのスキマ時間にどのような価値が提供できるかが重要であり、ニアライブ(試合途中)のハイライト動画、試合経過がすぐにわかるサマリーといったインスタントなコンテンツの提供や、気になった選手の情報などを深堀できる世界を作っていくという方向性は必要なのではないか」と、ネットスポーツ中継の在り方を提言した。

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ネットならではのスポーツ中継の在り方を提言する小林氏

 「映画やドラマなどの動画コンテンツに対して、スポーツ中継は動画の賞味期限が圧倒的に短いという点に課題がある。その課題にインターネットの力でどう立ち向かうかが大きなテーマであり、動画だけでなく試合のスタッツや記事など動画コンテンツを補うさまざまな周辺コンテンツをも充実させることで、視聴者を回遊させることが重要なのではないか」(小林氏)。

 小林氏が指摘するように、動画だけでなくデータで試合を把握することができるスタッツを提供することは、ネットスポーツ中継にとって大きな可能性を秘めている。こうした提言に対して三橋氏は、「動画中継を展開する前から、地方大会の全球場にスタッフを配置してイニングスコアの速報を届けるという取り組みを15年ほど行っている。そこで生まれた試合データを蓄積し、学校ごとに過去の戦績を振り返ることができるようにしている」と同社の取り組みを紹介した。

 また、バーチャル高校野球ではライブ中継に加えて、試合途中のハイライト動画、試合後のダイジェスト動画、注目プレーのスローモーション動画などコンテンツを多角的に展開しており、さまざまな形で視聴者の好奇心に応えることができる点が、ネットスポーツ中継にとって大きなストロングポイントであると言えるだろう。

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