2016年の今ごろ、筆者は当時の「iOS 10」のパブリックベータについての記事で、iOS 10は「混乱」したOSだと書いた。正式版リリースから1週間後にも、私はiOS 10を混乱と評したが、正式版に見られたのは少なくともレスポンスの良い、安定性のある混乱だった。
では、「iOS 11」はどうだろうか?
iOS 11の興味深い点は、幾つかのクールな新機能(大きなものでは「ARKit」から、小さな機能ながらも命を救ってくれそうな運転中の「おやすみモード」まで)が追加されるものの、このアップデートは主にAppleがiOS 10で犯した失敗の挽回であり、同時に「iOS 12」で確実に修復することになるであろう新たな失敗を生み出しているということだ。
察した人がいるかもしれないが、問題の多くはユーザーインターフェースにある。ユーザーインターフェースとは突き詰めれば、コードからユーザーを隔てるための薄い光の層だ。OSに新機能を組み込むのは簡単だが、その新機能を使いやすくすることは非常に難しい。特に、大きな改造をせずに既存のユーザーインターフェースに新しい機能を追加する場合、難度は倍増する。
AppleはiOS 10で幾つかの大きな変更を加えた。筆者は1年前、特にストレスを感じたユーザーインターフェースを3点紹介した。「メッセージ」アプリ、ロック画面の通知、そして「コントロールセンター」だ。AppleはiOS 11で、メッセージをさらにごちゃごちゃさせ、通知は目立たなくすることで改善しようとしている。コントロールセンターにはより多くの要素を盛り込んだが、その追加方法は熟考されているとは言い難い。
筆者が思い出したのは、「Windows 8」と「Windows 8.1」の時代だ。Microsoftは当時、Windowsのユーザーインターフェースをキーボードとマウスから、タッチ優先のインターフェースに移行させるのが良いアイデアだと決め、長年のインターフェースに非常に恣意的な変更を加えた。さらに、その変更が自ら作り出した問題を解決するための、ごまかしにも見える一連の微調整を始めた。
これは、OSの「中年の危機(ミッドライフクライシス)」だ。機能の古さと膨張が臨界点に達し、それを修復しようという圧力が発生する。残念ながら、こうした修復は通常、事態を悪化させるだけだ。
AppleがiOS 11でやろうとしていることはWindows 8とは違う。iOSが直面する問題は主に、iOSがシンプルなプラットフォームとしてスタートしたことに起因する。Appleは10年かけてiOSに機能を詰め込み、通知があふれ、「設定」が使いにくくなる臨界点に達してしまった。結果的に、Windows 8と同じ、ユーザーインターフェースの「修復」に行き着いてしまった。
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