何気ないツイートが脅威を招く--オンラインハラスメントが心と身体に及ぼす影響 - (page 2)

Erin Carson (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2017年07月12日 07時30分

影響はより広範囲に

 スマートフォンやコンピュータの電源を切ったところで、解決策になるわけではない。たいまつを掲げて迫る群衆を避けようとして、カーテンを閉めてもムダなのと同じだ。

 どのような形でオンラインハラスメントを受けるかは、自分がどんな人物で、オンラインでどう名乗っているかによって変わってくる。どうやって狙い撃ちの的に選ばれるのか、そして攻撃からどんな影響を受けるかは、宗教、人種、ジェンダー、志向や年齢など、あらゆる要素に左右される。

figure_3 提供:Aaron Robinson/CNET

 オンラインハラスメントの体験は、誰がしかけているかによっても違ってくるだろう。個人による攻撃も、執拗で恐ろしい場合がある。それが徒党を組んだヘイトグループになると、さらに大きな脅威に感じられる。Facebook上の攻撃的なミームがいい例だ。オンラインの集団が連携して誰かの連絡先情報を公開する、いわゆる「さらし」という行為もある。

 南カリフォルニア大学で教育心理学を教えるBrendesha Tynes氏は、人種差別が及ぼすマイノリティのティーンエイジャーへの影響を研究している。2010年に始まった3年間の研究によって、オンラインで人種差別を経験したと報告するティーンエイジャーが年々増えていることが明らかになった。その内容は、人種差別的な画像やジョークを目にしたという経験から、人種や民族性を理由にオンライン上で脅威に遭ったという経験まで、多岐にわたる。

 Tynes氏は、「3年をかけて、実際にこれほどの悪影響があるということが判明した」と述べているが、ソーシャルメディアはまだ比較的新しいため、「それ以上のことは分からない」と付け加えている。

 調査対象となったティーンエイジャーには、すでにうつ病の兆候が見られる子もいる。そんな子どもたちが成長したときには、どうなるのだろうか。それを社会に投影し、オンラインハラスメントがより広範囲に及ぼし得る影響について考えるべきだ。

 オンラインハラスメントの増加で、私たちが暮らす世界の風潮が変わりつつある。受けが悪いことをオンラインで言えば、まったくの赤の他人から悪質なツイートやFacebook投稿が寄せられることになりかねない。そう考えて、自分の考えを述べるのをやめるようになってきた。不安や心配のせいで認知能力が損なわれ、イノベーションや創造の能力が阻害されてしまう。

 Rutledge氏は「生産性が低下するだろう」と語る。生産性とは、一部には創造性と協力から生まれるものであり、まさにそうした性質がオンラインハラスメントによって傷付けられるからだ。

オンラインの世界、オフラインの世界

 Guitar World誌は、年刊の楽器カタログで、露出度の高い服の女性がギターやアンプ、その他の楽器にまたがっている写真を使っていたが、2016年にこのカタログの発行をやめると発表した。

 シアトルに住む28歳のギタリストEmily Harrisさんは、このニュースに喜んだという。音楽系のウェブサイトでもそう話した。Harrisさんはそのサイトで、ギターの世界で味わった不愉快な体験についても詳しく語っている。例えばギターショップの店員に、夫のほうがミュージシャンで、彼女はついてきただけだと決めつけられたことがあるという。

 しばらくすると、Harrisさんの受信箱はそのサイトのコメント機能による通知でいっぱいになった。人の神経を逆なでしてしまったことに、彼女は気付く。

 コメントで大勢のユーザーに、文句ばかりで才能がないと言われたり、「本当の女性」の心がけについて説教されたりした。こんな議論を起こすのは甘ったれだと言う者もいた。

 「こんなことになるとは、心底がっかりした。いろいろな感情を駆り立てられる」(Harrisさん)

 フェミニストの編集者である前述のDionne氏は、オンラインの世界とオフラインの世界に一線を引いている。オンラインの荒らしを相手にするより、現実世界で人と付き合うほうがずっと有益であると、同氏の考え方は楽観的だ。

 それでも、Dionne氏は過去の記憶にまつわる体験から、ソーシャルメディアの方針について考え直すようになった。今なおTwitterもFacebookも積極的に利用しているが、以前より気を遣うようになったという。

 Dionne氏は筆者にこう語った。「ソーシャルメディアの使い方が、以前より慎重になった。反発を受けるほどの価値がないかぎり、オンラインでは意見を公開しないことにしている」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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