オープンAPIが銀行側のデメリットを生み出す可能性に話がおよぶと、永吉氏は「(現場では)まだビジネスモデルについて議論されていない。だが、これまで隠されていた部分がオープンになることで、新ビジネスが生まれるのは面白い」と述べながら、ここ1~2年で大きく変化すると推察する。
また、五十嵐氏は「これまで銀行が行っていた付加価値を持つサービスを、技術革新を持つスタートアップ企業と組んで実現できる。本質は顧客の利便性を満たし、需要に見合った商品・サービスを提供すること」と協業の重要性をアピール。だが、基盤整備や収益化など現実的な課題は多いという。
他方で「銀行が安価なサービスを提供するのは社会的コストの低下につながる」と見る吉岡氏は、歴史的背景と法律という縛りから企業努力できなかったことを自戒しつつ、「リーマンショック以降はサービス業として求められる役割を実現する上でAPIが必要。公的な役割として必要性の追求、その先に収益化や基盤拡大がある」とオープンAPIの普及を歓迎した。
銀行側が望むAPIを尋ねると、「政府のデータベースにアクセスできるAPI」(吉岡氏)。「電気代ではなく電気使用量を比較して、家計の改善につながる提案が可能なAPI」(五十嵐氏)。「金融機関がECサイトを運営するのはタブー視されるが、Amazonのウィッシュリストとリンクし、振り込みなどができるAPIがあると面白い」(永吉氏)と多彩なアイデアが出た。
だが、オープンAPIはどの銀行も同じものを提供するため、画一化する可能性がある。差別化については「コストダウン。顧客から見れば窓口もスマートフォンもUIとしては同じ。ゼロからネットワーク基盤を用意するも安価になり、銀行の競争力と顧客の利便性につながる」(吉岡氏)。「当行のデータ中心主義が差別化要因。2016年から最適なチャネルにて商品を案内するオムニチャネルサービスを展開し、他行より先に取り込みを図る」(五十嵐氏)。「銀行のフロントエンドサービスとなるiBank。顧客の趣味や関心といったデータを取得し、潜在的需要を満たすと同時に、銀行では扱えないサービスや異業種とのローカルエコシステムに幅や深みを持たせたい」(永吉氏)と、各行の特徴に紐付けて説明した。
AIを始めとするIT技術の利活用については、「高齢化社会において必要。話しかけることで解決する社会に日本も向かっている。自行も取り組まなければならない課題」(吉岡氏)。「スマートスピーカのように音声で顧客を支援する時代が来るかもしれない。さらに利用した分だけ預金から振り替え課金するなど、キャッシュレス化が遠くない未来に実現すると感じる」(五十嵐氏)。「スマートフォン中心では年配層に不便。スマートスピーカは面白いがSiriなどの音声UIも厳しい。人の特徴まで理解するような音声認識システムになれば、銀行に赴く必要はなくなる」(永吉氏)と各人の持論を披露した。
マクダッド氏も、「VUI(Voice User Interface)は重要。GUIが普遍的な存在となり、誰しもが直感的に操作できるように、VUIはすぐに普及する」と、次に来るであろう"声の時代"に注目が集まった。
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