日本商業不動産保証、オフィスの敷金を減額する「敷金3カ月くん」でベンチャー支援

 日本商業不動産保証は6月27日、オフィスの敷金問題を解決する新サービス「敷金3カ月くん」を開始すると発表した。120年ぶりの民法改正を受け、オフィスや店舗を借りる際に必要となる個人の連帯保証人が立てにくくなる中、保証会社の新サービスとして提供する。

 日本商業不動産保証は2011年に設立。商業用不動産の賃貸にかかわる預託金に代わる制度として保証を提供しており、保証金、敷金を半額にする保証サービス「保証金半額くん」をすでに運営している。利用者は約200社。そのほとんどがベンチャー企業になるという。

「保証金半額くん」の仕組み
「保証金半額くん」の仕組み

 敷金3カ月くんは、物件オーナーに敷金を減額してもらい、減額分を保証に変えるサービス。万一企業の債務不履行などが発生した場合は日本商業不動産保証が減額分の敷金を保証することを前提とし、入居企業が物件オーナーに預け入れる敷金を3カ月分にする。

 通常、敷金は家賃の1年分とするケースが多く、敷金3カ月くんによる減額分は開発費用や雇用、投資に回せることが企業側のメリット。企業側は保証金減額分の年間5~10%分を年間保証委託料として日本商業不動産保証に支払う。

 「従来までは、いわゆる危ない会社を入居させるために保証会社を立てるケースが目立っていたが、私たちのサービスは優良企業だからこそ、資金を有効活用してもらうために提供する。独自の審査をクリアした企業にのみ実施しているため、物件オーナーは企業審査が不要になる」(日本商業不動産保証 代表取締役社長の豊岡順也氏)と、企業、オーナーの双方にメリットがあると説明する。

 民法改正では、「個人根保証契約について極度額の定めのない個人根保証契約の無効化」「保証人に対する情報提供の義務」などが改正点になる。アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士の廣岡健司氏は「極度額を定め、保証人の責任を明確化することが必要になるため、形式的な保証人の確保は抑止される。そのため個人保証から保証会社へ移行する流れになる」と不動産業界における影響を説明する。

民法改正前と改正後の違い
民法改正前と改正後の違い

 一方、高木ビル専務取締役の高木秀邦氏は「大手や中堅企業は、与信に問題がないため、そもそも連帯保証人がいらず、民法改正の影響は薄い。影響を受けるのは実績が浅く、成長過程にある中小やベンチャー企業。リスクヘッジができないため入居をお断りせざるを得ないことがある。そこに保証企業が対応することで、先立つ不安を取り除く。そうしたメリットを与えることで、ビルオーナーはオフィスビルのブランディング向上につなげられる」とビルオーナーの立場からコメントした。

 日本商業不動産保証では、資金を本業に生かし、企業成長を促す「敷金フリー化プロジェクト」として敷金3カ月くんを提供。今後は東京を中心にプロジェクトを普及させていく。

 豊岡氏は「2018~2020年ころまでに大規模なビル建設はかなりの数が予定されており、大きく新しいビルは多少賃料を下げれば入居者は決まるが、入居する企業が元入っていたビルは賃料を下げても決まらないケースが出てくる。今後はテナント企業の目線に合わせないと空き室は埋まらない。私たちは本業を助ける資金として敷金を保証し、不動産オーナーには優良企業を紹介する。売り手、買い手、世間の『三方良し』を実践していきたい」とした。

左から、高木ビル専務取締役の高木秀邦氏、日本商業不動産保証 代表取締役社長の豊岡順也氏、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士の廣岡健司氏
左から、高木ビル専務取締役の高木秀邦氏、日本商業不動産保証 代表取締役社長の豊岡順也氏、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士の廣岡健司氏

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