ロードスターキャピタルは5月18日、不動産に特化したクラウドファンディングサービス「OwnersBook(オーナーズブック)」の現状や不動産投資における最新動向をまとめたプレス向け説明会を開催した。
ロードスターキャピタルは、2012年に不動産運用会社として設立。中国のテック企業であるRenren Lianhe Holdings(Renren)やカカクコムからの第三者割当増資を受け、現在、資本金11億円(資本準備金と合わせ)と、スタートアップ企業としては強固な財務基盤を持つ。
Renrenがテック企業だったこともあり、2014年頃から不動産×ITのサービスを模索。その中でクラウドファンディングと不動産の相性の良さに気づき、同年9月にOwnersBookを開始した。
OwnersBookは、日本初となる不動産特化型のクラウドファンディング。一般ユーザーには情報が入手しづらいオフィスビルを投資対象にしていることが特長で、投資するオフィスビルに対し、複数の出資者を募ることで、1人1万円~の少額で投資を始められる。現在50件以上の案件を実施しており、実績年利回りは4.8~14.5%。累計投資総額は15億9700万円にのぼる。
「マンションや多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を購入する『J-REIT』は、今までも個人投資家向けに開かれていたが、多額の資金が必要となるオフィスビルなどはプロ限定の投資領域とされていた。OwnersBookは、この領域を個人向けに開放したもの。クラウドファンディングで投資家を募ることで、大きな投資案件に個人が少額から参加できる仕組みを用意できるため、不動産とクラウドファンディングの相性の良さを生かせるサービス」(ロードスターキャピタル代表取締役社長の岩野達志氏)と、サービス開始の背景を話す。機関投資家のみだった領域に個人投資家が加わることで、不動産市場の安定化にもつながるという。
現在会員数は5000人を突破。10万円以下の小口投資家が約4割を占めるなど、従来の不動産投資のイメージを変えるような新サービスとして提供している。20~30代にも利用しやすいように、業界では唯一スマートフォンアプリも用意する。
社内には不動産担当者とともにエンジニアもおり、各種システムはすべて自前で制作しているとのこと。「システムを外注すると情報漏えいやセキュリティがこわい。更新も含めていつでも社内でできる状態にしている」(岩野氏)と、セキュリティ対策も備える。
不動産テックとクラウドファンディングの現状についても語られた。不動産テックに取り組んでいる企業は多く、現在「マッチング」「ビッグデータ・AI」「業務効率化」の3つに集約されるとのこと。
また、クラウドファンディングは、金銭のリターンを伴わない寄付型、購入型の非投資型と、金銭のリターンを伴う、エクイティ投資型、貸付型の投資型の2つに分類されるが、現在、日本では貸付型が直近4年で約7倍近くに伸びており、中でも不動産関連が牽引しているという。
「貸付型クラウドファンディングは、平均利回り5%以上。株や先物取引よりもリターンは少ないが、ローリスクでもあり、ミドルリクス、ミドルリターンくらいと考えている」とロードスターキャピタル執行役員運用部長の成田洋氏は現状を説明する。
今後は、不動産へ出資する投資家の保護を目的とした法律「不動産特定共同事業」が2017年に改正予定ということもあり、投資型クラウドファンティングはさらなる成長の可能性があると予測する。
ロードスターキャピタルでは、個人投資家にも開かれたオープンなマーケット、不動産に関する情報格差の縮小、不動産投資分野におけるシェア型の浸透など、IT技術の活用により、プロ投資家と個人投資家の垣根が低くとなると予想。そうした変化を受けることで、玉石混交とされる不動産投資を、運用成果の開示や多くの投資家による分析、SNSによる拡散などで、情報の明確化が進むと話す。
現在、OwnersBookの投資案件は、サイト上に情報が公開されると半日、ものによっては数時間で募集が完了してしまうこともあり、「案件はなるべく確保したいと思っている」(岩野氏)と現状の課題を挙げる。
サービス開始当初は、大口投資家が多く、なかなか小口投資家の理解が得られなかった時期もあるという。岩野氏は「1つ1つの案件を着実に取り組むことによって、少しずつ利用者が増えていった。その背景には、私たちプロの不動産投資集団としての目利きの信頼性があると思っている。この事業は10試合あったら、9勝していてもだめで、全勝を目指さなくてはならない」とした。
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