CNET Japanの編集記者が気になる話題のトピックなどを、独自の視点で紹介していく連載「編集記者のアンテナ」。今回はエンターテインメント領域を取材している佐藤が担当。5月27日と28日の2日間、石川県産業展示館・4号館にて行われたイベント「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 5thLIVE TOUR Serendipity Parade!!!」石川公演の、28日公演分の模様をお届けする。
これは、ソーシャルゲームを基点として多方面に展開している「アイドルマスター シンデレラガールズ」のキャスト陣によるライブイベント。シンデレラガールズとしての単独周年ライブ開催は5回目となったが、今回は5月から8月にかけて全国7都市14公演を行うという、大規模なツアーが組まれた。すでに宮城公演が行われ、今回の石川公演が2会場目。これ以降は大阪、静岡、幕張、福岡、埼玉と巡っていく。
石川公演で出演したのは、多田李衣菜役の青木瑠璃子さん、速水奏役の飯田友子さん、三村かな子役の大坪由佳さん、高森藍子役の金子有希さん、新田美波役の洲崎綾さん、宮本フレデリカ役の高野麻美さん(※)、森久保乃々役の高橋花林さん、五十嵐響子役の種崎敦美さん(※)、小日向美穂役の津田美波さん、上条春菜役の長島光那さん、佐藤心役の花守ゆみりさん、向井拓海役の原優子さん、龍崎薫役の春瀬なつみさん、佐久間まゆ役の牧野由依さん、木村夏樹役の安野希世乃さんの15人。会場にはファンである“プロデューサーさん”が集結したほか、全国各地の映画館でライブビューイングも実施。アンコールを含めて全24曲、約3時間に及ぶライブを展開した(※高野さんの高の字ははしごだか、種崎さんの崎の字はたつさきが正式表記)。
ステージではお城をイメージしたセットが組まれ、イベントテーマにある“奇跡の行進”にちなんでか、キャスト陣は赤と白を基調にしたお揃いのマーチングバンド風衣装をまとい、オープニングではイベントロゴをあしらった大きな旗を持って行進するように登場。1曲目で、PlayStation VR用ソフト「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」のテーマ曲である「Yes! Party Time!!」が流れると、場内はオレンジ色のペンライトで染まり大歓声。間奏ではゲーム中にもあるような、ステージ上と客席とで行われるウェーブも再現するようなシーンもあり、序盤から勢いを感じさせるステージになっていた。
これ以降も個々のソロ曲やユニット曲、テレビアニメ関連楽曲やスマホゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(デレステ)の楽曲を次々に披露。シンデレラガールズのライブといえば、歌唱力を存分に生かして聴かせるステージもさることながら、ステージ上の演出もあわせて楽曲の世界観、しいては“夢の世界”を魅力的に表現する、どこかテーマパークのように楽しませるようなものも多い。特にそれを象徴していたのが、大坪さんが披露した「おかしな国のおかし屋さん」だ。
小さなお菓子屋を開いている1人の娘と“メレンゲうさぎ”とのやり取りから、甘いお菓子で王子様が目を覚ますという内容の歌で、ステージではお城のセットにある大型スクリーンにメレンゲうさぎを映し出し、セリフも表示させて大坪さんが掛け合うようにして歌い上げる形で進行。さらにはボウルと泡立て器を手にお菓子作りをしているような表現をしたり、そこに出てきた特製のレモンタルトを実際に食べるといった演出もあった。
これらの場面でも盛り上がっていたが、さらに曲の終盤には王子様として、マントを付けた安野さんが登場。安野さん演じる夏樹はロックシンガーということもあって“ロックの王子様”がマントを翻しながら一緒にステージで歌い踊る姿に、女性のプロデューサーさんを中心に大熱狂。ちなみにトークの中で、27日の公演では飯田さんが王子役として登場したことや、安野さんのマントは急きょ作られたものであり、さらにそれを生かした振り付けを練習したというエピソードも披露していた。
ほかにも安野さんの「Rockin’Emotion」は今回、“特攻隊長”な拓海を演じる原さんを迎えて披露。背中を預けあうようにして熱唱する姿は、遠くからでもほとばしる熱さを感じさせるほど。ついにこれまでのライブでの披露がかなった青木さんと安野さんの組み合わせによる「Jet to the Future」も会場大熱狂。大坪さん、高野さん、高橋さん、種崎さん、花守さんの5人で披露したデレステに収録されている「Sweet Witches’ Night~6人目はだぁれ~」は、フルバージョンでのお披露目は今回が初めてで、メルヘンティックな世界で会場を包み込んだ。ソロ曲では個々に持ち味を発揮し、数々のユニット曲も本来の歌い手以外の出演者が加わったり、足の部分がないスタンドマイクを手に歌い上げる「Nocturne」では、本来の歌い手がいない飯田さん、洲崎さん、長島さんの3人で披露したように、“ここだけのユニット”として披露されるものも多く、楽曲に新たな魅力を表現。見どころはすべてと言えるようなステージとなっていた。
キャスト陣のなかで洲崎さんは石川県出身で、凱旋(がいせん)ライブとなった。ここではファーストライブ以来となるソロ曲「ヴィーナスシンドローム」のフルバージョンを披露し、のちのトークで一番気持ちよく歌えたというほどに熱唱。ほかにも、津田さんが披露した「空と風と恋のワルツ」におけるセリフで「だめねんよ」とアレンジすることにアドバイスしたのをはじめとして、ライブに向けてキャスト陣に金沢弁を教えていたというエピソードも披露した。ライブの合間には、教えた成果を試す金沢弁クイズで進行役も担当。トークの流れから“石川の女神”とキャスト陣から言われたり、笑いを誘うような一幕もあったが、全編を通して盛り上げに一役買っていた。最後のあいさつでは、石川の地に連れてきてもらった美波やプロデューサーさん、キャスト陣らに向けて感謝の言葉を述べ、大きな拍手が巻き起こっていた。
アニバーサリーライブ初出演となった高橋さんと花守さんも奮戦。高橋さん演じる乃々はネガティブな考えが強いアイドルで、常に目線をそらしているのだが、高野さんと春瀬さんとともに4人で披露した「私色ギフト」などにおいて、スクリーン上で映し出された高橋さんが目線を泳がせながら歌うシーンもあるなど、細かいところまで表現にこだわる姿勢が見受けられた。また花守さんも「しゅがーはぁと」を自称する心のかわいらしさを前面に押し出してパフォーマンスやトークを展開。終わりのあいさつでは、不安を抱えながらも並々ならぬ意気込みで臨んだことや“しゅがは姉さん”とともにあったことなど語り、愛着の深さを感じさせた。
アイドルもそれを演じるキャスト陣も個性的というなかで、まとめ役としてけん引していたのが、石川公演でセンターに立った牧野さん。シンデレラガールズのライブでは島村卯月役の大橋彩香さんをはじめ、ユニット「ニュージェネレーションズ」のキャストがセンターに立つ機会が多いのだが、今回はそろって不在。そんななかでも他のキャスト陣から“頼れるお姉さん”として支えていたことが次々と語られていった。牧野さん自身も、まゆを象徴する小指に結んだ赤いリボンを揺らしながらソロ曲「エヴリデイドリーム」を歌い上げたほか、飯田さんと大坪さんとともに披露した「あいくるしい」では“劇団あいくるしい”というほど感情を重視したと後に語るほど、伸びやかな声を響かせて、プロデューサーさんたちを魅了した。
ちなみにこの日は小指以外にもさまざまなところにリボンを付けているなか、宮城公演でセンターを務めた諸星きらり役の松嵜麗さんから贈られたリボンのピンなどを頭に付けていたとのことで、この場にいるキャストだけではなく、一丸となって盛り上げるべくバトンを渡しているようにも思えたところだ。
今回のライブではトークの時間も比較的多めに取られており、石川県のご当地お土産や食べ物に関する話題などでにぎやかに会話を展開することもあれば、演じているアイドルや楽曲に対する強い想いが伝わるような会話も。終盤のあいさつでは涙あり笑いありといったなかでも、締めくくりとなった原さんが、集まったプロデューサーさんとキャスト陣含めて“家族”と表現していたのがピッタリと当てはまるような、お互いを尊重しあって助け合う絆が強くあると思えるようなステージとなっていた。
また余談となるが、どこをとっても印象的だったといえるライブのなかでも、筆者のお気に入りのアイドルが龍崎薫ということを踏まえて印象的だったシーンも数え切れないほどあった。キャスト陣のなかでもひときわ小柄な春瀬さんが、腕を大きく振ったり足を大きく上げて踊るなど全身を使って躍動する姿や、要所要所ではソーシャルゲーム版やデレステのノーマル+のイラストを再現するかのような右手を差し出すポーズを決めるなど、遠目から見ても伝わってくるほどに“薫らしさ”を表現していた。
前述した私色ギフトについても本来の歌い手ではないが、この曲は初めて薫に声がついてしゃべったテレビアニメ第17話のエンディングテーマとなっていたもの。それだけに、当時のシーンを思い出すようで感慨深かった。洲崎さん、金子さん、長島さん、原さんとともに披露した「生存本能ヴァルキュリア」では、カッコよさや凛々しさを前面に押し出し、明るく元気という薫らしさとは一味違う一面を見せていた。
ほかにも、いろんな意味で“刺さった”シーンといえば、金子さん、安野さん、原さん、花守さんとともに披露した「絶対特権主張しますっ!」のなかで言った、薫としてのセリフ「せんせぇは、かおるだけのせんせぇだよー!」(※薫はプロデューサーのことを「せんせぇ」と呼ぶ)だろう。このセリフはのちのトークで安野さんが、薫からわずかな独占欲が出てくるといいと考えて付けたものと明かされた。実際、ゲーム中のセリフを見ても、決して独り占めしたいという気持ちは強く出していないものの、どこか独占欲があると感じられるセリフがちりばめられている。そんな薫を的確に表現して言われてみたい言葉だっただけに、薫好きのせんせぇにとってはハートを射抜く言葉であり、そうでなくても多くのプロデューサーさんをせんせぇに変える魔法の言葉だった。ステージ上で絶賛していた大坪さんの言葉を借りるなら「感謝しかない」だろう。
そして筆者にとって一番印象的だったのは、最後のあいさつのなかで、石川公演のキャスト陣に対する並々ならぬ愛着を語ったうえで言った「10日間ぐらい続いてほしくて……。2日間で終わってしまうのが本当に悲しい」の一言だ。本当に楽しいステージであったことがよく伝わる言葉であったのと同時に、本当は続かないことであることも含めて名残惜しさを全く隠さない言葉は、薫でも同じような気持ちになるのではと思えるもので、言い回しは春瀬さんであったものの、ひとつ奥にある薫の姿を感じた次第だ。
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