世界がランサムウェア「WannaCry」による攻撃の犯人特定に取り組むなか、あるサイバーセキュリティ研究者グループが、身代金要求文の作成者の母語を解明したようだと述べている。事実なら、攻撃元の特定に向けて新たな一歩を踏み出した可能性がある。
これまでに多くのサイバーセキュリティ企業が、ためらいがちにWannaCry攻撃を北朝鮮と結びつけてきた。だが、Flashpointの研究者は、28言語で書かれた身代金要求文を分析し、この文章の作成に中国語話者が関与しているとみられると結論づけた。
身代金要求文の分析から、簡体字と繁体字の中国語版および英語版のみ、それらの言語の話者によって作成された可能性があることがわかった。
中国語の身代金要求文に見られるちょっとした誤りが、中国語の入力システムを使って入力された、と研究者は述べている。
一方、英語の身代金要求文は、英語の「運用能力にすぐれた」人物によって書かれたとみられるが、文法上の誤りから、英語を母語としない者によって書かれたことがうかがえるという。
ロシア語、スペイン語、トルコ語、韓国語など、他の言語で書かれた25の身代金要求文はすべて、「Google翻訳」で翻訳されたもので、英語版が機械翻訳の原文として使用されている。
だが、研究者が、テキストを試しに中英翻訳および英中翻訳したところ、不正確な文になった。この事実も、中国語の身代金要求文は、英語からの機械翻訳を利用して作成されたものではないことを示している。
身代金要求文の作成者が中国人であることを示す形跡は、他にもある。たとえば、「週」を表す言葉は、中国南部、香港、台湾でよく使われているものだが、ウイルス対策を表す言葉は、中国本土でよく使用されているものだ。
研究者らによると、中国語の身代金要求文は他の言語で書かれたものより長く、他の言語版にはない内容が含まれているほか、形式が異なっており、この点でも中国語話者によって書かれたと考えられるという。
総合的に見て、身代金要求文を言語の面から分析すると、Flashpointが「ある程度の確信を持って言える」結論に行き着く。その結論とは、中国語の身代金要求文は中国語を流ちょうに話す人物によって書かれたものであり、それを原文として英語版が作成され、その後、英語版を基に他の言語に機械翻訳された、というものだ。
研究者は、したがって中国語が作成者の母語である可能性が高いと述べている。ただし、攻撃者らが身元を偽装した可能性も排除できないという。自らの母語を隠すために機械翻訳を使った可能性もある。
なおSymantecの研究者は、ハッカー集団Lazarusが行った一連のサイバー攻撃に関連づけられるコードと、WannaCryによる大規模攻撃を引き起こしたコードには類似性があると述べている。つまり、2つの攻撃は同じ作成者に結びつく可能性があるという。
Lazarusは北朝鮮の意を受けた集団だという人もいるが、実際には中国を拠点として活動していると考えられている。仮にそうだとすれば、作成者らは中国語に堪能だというFlashpointの結論も説得力が増す。
ただし、集団の中にたまたま中国語が流ちょうなメンバーがいて、当局をかく乱するために中国語で身代金要求文を書いただけという可能性もある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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