ディー・エヌ・エー(DeNA)は5月11日、2017年3月期の通期連結決算を発表した。売上収益は1438億600万円(前年同期比0.1%増)、営業利益は231億7800万円(同17%増)、当期利益は308億2600万円(同172.2%増)で増収増益となった。
ディー・エヌ・エー代表取締役社長兼CEOの守安功氏は、通期でのトピックスとして、ゲーム事業における任天堂との協業施策の貢献が始まったことや、海外事業の損益が改善したこと、また横浜DeNAベイスターズなどを擁するスポーツ事業も大幅に損益が改善したことをあげ、増収増益につながったと説明する。
四半期ベースでは、第4四半期の売上収益は351億円(前四半期比9%増)、営業利益は45億円(前四半期比31%)。特にゲーム事業において、任天堂との協業施策における新作配信のほか、内製タイトルである「逆転オセロニア」やサードパーティタイトルであるCygamesの「グランブルーファンタジー」など、主要アプリが全般的に好調。マーケティングコストもこの期には抑えていたこともあり、売上収益は274億円(前四半期比16%増)、営業利益は95億円(同59%増)となった。
任天堂との協業タイトルにおいては、2月に配信した「ファイアーエムブレム ヒーローズ」について、守安氏は「日本だけではなく、米国など大きなマーケットでユーザーに遊ばれており、ビジネス面でも満足いく売り上げ水準となっている」と語るほど好調。「スーパーマリオ ラン」についてもAndroid版を3月に配信。iOS版との合計で、まもなく1億5000万ダウンロードに到達する見通しという。
守安氏は「協業から2年が経過し、数字がついてきた。事業展開の拡大に確かな手応えを感じている」とコメントした。なお、配信を予告している「どうぶつの森」については、2017年度中の配信予定から変更はなく、具体的な配信時期については改めて告知するとしている。
内製・協業タイトルにおいては、逆転オセロニアに対してマーケティング攻勢をかけたのが奏功し、配信から1年が経過しているにもかかわらず、この第4四半期で大きく伸びたという。3月にはデジタルトレーディングカードゲーム「デュエル エクス マキナ」、4月にはKADOKAWAとの協業タイトルである美少女剣撃アクション「天華百剣-斬-」を配信。さらなる積み上げを図っていく。
キュレーション事業においては、3月13日付けで第三者委員会の調査報告書を受領し、今度の対応方針などを発表。さらに新たなデジタルメディアのあり方の検討に関して、4月20日付けで小学館との基本合意を行った。今後について守安氏は「再開するかしないかも含めて未定」と語るにとどめた。
2017年度第1四半期の連結業績予想として、売上収益は364億円、営業利益は75億円と増収増益を見込むが、季節要因の大きいスポーツ事業を除く売上収益は38億円減の299億円、同じくスポーツ事業を除くNon-GAAP営業利益は22億円減の50億円を見込む。ゲーム事業における、ゲーム内で盛り上げを図るイベントの谷間の時期であることや、新作の貢献を織り込まずに保守的に見ていること、またマーケティングコストもかけていくことが要因としている。
キュレーション事業にまつわる一連の出来事もあり、現在も会社体制にまつわることなどさまざまな議論を重ねて取り組んでいる最中だという。そういった背景もあり、この決算説明会では来期以降の具体的な事業戦略の説明はなく、DeNAとしての今後という観点からの説明があった。まずミッションとして「Delight and impact the world 〜世界に喜びと驚きを〜」、ビジョンとして「インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける」と再定義。中長期的な姿勢としてインターネットとともに、AI(人工知能)を2つ目の強みと考えて展開していくことや、経営の最重要課題として「信頼回復」と「継続的な成長に向けた事業ポートフォリオの強化」を挙げて取り組む考えを示した。特に主力のゲーム事業の強化はもとより、それに匹敵する新たな柱となるものの礎を2020年度までには築き上げたいとしている。
ガバナンスや管理体制、コンプライアンスの強化としては、5月末までをメドとしてより具体的な仕組みや取り組みを策定し、公表予定。7月から新たな枠組みを目指すという。またこの7月の段階で、経営戦略説明会といった、今後にまつわるイメージをしっかりと伝えられる場を作って公表したいとしている。
新たに掲げたビジョンのなかにある「永久ベンチャー」の言葉は、第三者委員会の調査報告書に言及されていたこともあり話題となったが、DeNAが考える言葉の意図として「常に新しい価値提供に挑戦し続ける」と「社会に歓迎され、貢献することが大前提」としている。
今回この言葉を改めて使ったことについて、決算説明会に登壇していた代表取締役会長の南場智子氏は「DeNAが常に新しいことに挑戦していくという、創業以来から大事にしてきた言葉」と語りつつ、報告書で指摘されたことについては、調査委員会ひとりひとりに実際にヒアリングを行い「この言葉をもって免罪符としていたという指摘ではなく、その言葉が正しく理解されていないのではないか?と。永久に挑戦を許される組織であるということは、世の中に歓迎されてしかるべきであり、それに基づいた言葉であったはずなのに、組織の隅々まで徹底されているか、という意図を持って、あえて報告書で指摘したと伺った」と説明。
その指摘と意図に南場氏は賛同し「会社の成長の原動力となった言葉を捨てるのではなく、正しい意味あいを理解するということで使っている。いい言葉ととらえているので、もう一度正しく標ぼうしていく」と、再度付けた意図を語った。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス