ソニーは4月27日、遠距離や高速移動中でも安定的な無線通信を実現できる新たなIoT向けのネットワーク技術(LPWA:Low Power Wide Area)を開発したと発表した。
今回開発したLPWAネットワーク技術は、光ディスクに使われている誤り訂正などのデジタル信号処理技術や、テレビチューナーなどに搭載されている高周波アナログ回路技術、低消費電力のLSI回路技術など、同社が長年培ってきたノウハウを応用しているという。
同技術を使った通信実験では、山の上や海上など障害物が無い環境では100km以上の遠距離通信に成功したほか、時速100km/hの高速移動中でも安定的に通信できることを確認したという。
同技術の送信モジュールは、0.4秒の短時間に、新開発の高性能誤り訂正符号と、伝送路を推定するために必要なパイロット信号が埋め込まれたパケットを複数回送信。受信機は複数回にわたり送信されたパケットを合成し、感度を高める信号処理を行うことにより、電波同士の干渉(マルチパスほか)の軽減などが可能だという。
さらに、遠距離通信における信号レベルの低下や、混信などの影響による情報の一部分の欠落に対しても、受信機側で高性能誤り訂正信号処理を用いてデータを復元することで通信の成功確率を高めているとのこと。これらに加え、同技術の通信帯域における複数のチャンネル同士の妨害による混信(相互変調歪みなど)に強いチューナーLSIを受信機に採用することにより、遠距離や高速移動中の通信に加えて、混信の起きやすい都市部でも良好な通信を実現した。
同社が提供予定の送信モジュールと受信機は、GPS LSIを標準で搭載。GPS対応エリアにおいては、送信地点の位置情報を伝送できるだけでなく、GPS衛星から得られる高精度な時刻情報を使って送信・受信の周波数とタイミングを補正することで、通信の信頼性をより高められるという。新開発の低消費電力送信LSIの搭載などにより、送信モジュールの消費電力を低減し、コイン電池での動作を可能にしているとのこと。
これらの特性を生かし、登山や乗船時などに携帯した送信機から、受信基地局を経由して得るデータを活用することで、携帯者の位置情報をリアルタイムに把握する見守り用途や、車などのレンタル事業におけるアセット監視、ドローンの位置情報追跡など、同技術が多様なサービスへ活用されることを想定しているという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」