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“社会課題”を疑似体験--オランダで発展した「シリアス・ゲーム」 - (page 2)

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 同じくユトレヒトに拠点をもつダッチ・ゲーム・アソシエーションは、2008年に設立。イノベーションや知識の共有、コンテンツの輸出促進などを通じてオランダのゲーム業界の潜在能力を最大限に引き出し、世界レベルまでに引き上げることをミッションとしている。

 教育機関では、アムステルダム大学はゲーム開発、ユトレヒト芸術大学はゲームデザイン、ユトレヒト大学はゲーム開発など、大学で44におよぶゲーム関連のカリキュラムが組まれており、8000人以上の学生が専攻している。AR(拡張現実)の導入など技術の進歩が著しい分野だけに、大学、研究機関での手厚い人材育成システムは今後の発展のためにも不可欠である。2014年にはゲーム分野育成のための投資ファンドGameOnも設立された。

 そして、税制面での優遇プログラムや助成金などで起業しやすいビジネス環境を整えていることも大きいだろう。オランダにおいてゲーム産業の中核を担っているのは大企業ではなく、中小企業である。ゲーム関連の会社は約330社で3000人の雇用を生み出している(2012年Newzoo調べ)。いちばん大規模なテレビゲーム開発会社Guerrilla Gamesでも従業員は200人規模で、ほとんどが10人以下の規模だという。小さいだけに機動力もあり、開発へのプロセスも分かりやすく、意思決定も早い。また、もともとインダストリアルデザインやグラフィックデザインなどに代表されるビジュアルコミュニケーションに強いことも、ゲーム産業を後押しする大きな要因となっているだろう。

オランダでシリアス・ゲームが発展した理由

 前述したような中小企業が台頭しやすいビジネス環境、オランダ政府による数十億におよぶ研究開発費の割り当てなど、業界成長への起爆剤が準備された上で、シリアス・ゲームが成長したのは、オランダらしいオープンで活発な異業種交流によるところが大きいだろう。

 ユトレヒト大学メディカルセンターでは、施設内にゲームメーカーが駐在するオフィスを設けており、医療従事者とゲーム開発者が意見を交わしている。Undergroundも、フローニンゲン大学医療センターの医師が、日々の業務で時間がとられるスタッフにどのように腹腔鏡手術のトレーニングを受けさせるかを思案していた時に、アングリーバードに興じている研修医を見てゲームスタイルを思いつき、Grendel gamesにコンタクトをとったのが始まりだという。

 「餅屋は餅屋」という考えにとらわれず、お互いの専門分野を俎上にのせ、どのような化学反応を起こせるか柔軟に考えられるメンタリティがオランダ人にはある。国の重要産業とはいえ、ゲームを仕事としている人びとが3000名強というサイズ感も有効に作用している。そもそも透明性が高い社会システムであるうえに、企業の規模に関わらず知識をシェアし、蓄積していこうという気概も強い。

 世の中に役立ち、かつ採算がとれるなら、社会的立場や地位を越えてお互いの知識で補完し合いながら新しいものを作り上げていく。ゲーム開発者とさまざまな分野のスペシャリストの共同作業なしには成立しえないシリアス・ゲームだからこそ、このようなオランダ人の気質が大きな助けになっているのは間違いない。

(編集協力:岡徳之)

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