「那覇の多くの店でクレジットカード決済ができない」「サイトを作りたいがIT人材が足りない」ーーこうした沖縄県内の課題をITによって解決するプロジェクト「Cloud ON OKINAWA」の連携協定が、4月18日に締結された。全国の市町村とIT企業が連携協定を結び、ITサービスによって地方創生を推進するプロジェクト「Cloud ON」の第1弾となる取り組みだ。
同プロジェクトには、沖縄県の糸満市、沖縄市、竹富町、宮古島市の4市町が参画。またIT企業では、KDDI ウェブコミュニケーションズ、沖縄セルラー電話、CAMPFIRE、Square、freee、BASE、ライフイズテック、ラクスル、Ryukyufrogsの9社が参画した。2017年度中に、沖縄県の3分の1の市町村のプロジェクト参画を目指す。
同プロジェクトでは、(1)中小事業者へのITサービスの導入、(2)地域の課題解決、(3)地域の人材育成の3つを柱に、沖縄の課題解決に挑む。人気観光地である沖縄では、いまだに多くの店舗がITを活用していないという。沖縄ではフリーペーパーの発行が盛んだが、そこに加盟する数百店舗のうちの大半がウェブサイトやEC機能もっておらず、クレジットカード決済にも約3割の店舗しか対応していないため、機会損失につながっているという課題があった。
そこで、プロジェクトでは中小事業者がすぐに利活用できるITサービスを用意し、販売促進や販路の拡大、決済手段の拡充を支援する。この先行事例として、宮古島市のフリーペーパーである「宮古島 BBcom」と連携し、加盟店の希望者に対して、「Jimdo」によるウェブサイト作成、「BASE」によるECサイト開設、「Square」によるカード決済対応、「freee」による会計作業の簡略化などを進めているという。
また、竹富町では積極的に移住者のテレワーカーを増やしているが、安定して仕事を供給できないという課題があった。そこで、宮古島の取り組みと連携して、自身でウェブサイトを作れない店舗が、テレワーカーにサイト作成を依頼できるようにする。これにより、宮古島市の店舗PR不足という課題と、竹富町の移住テレワーカーへの仕事の供給という課題を、同時に解決できるとしている。
さらに、地域の人材育成において、沖縄県の持続的な経済発展の中心となる人物の育成や、若年層のプログラミング教育などの施策を用意する。中高生向けのプログラミング教育事業を展開するライフイズテックと、宮古島教育委員会、宮古島の地元企業であるリチャージの3者は、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業の公募に参加し、沖縄ブロックとして選定されている。
すでに宮古工業高校の生徒向けにメンター教育をしたり、宮古島市立久松小学校・宮古島市立下地中学校の生徒向けにプログラミング講習を実施したりしているという。今後も、宮古島市の子どもたちがプログラミングに触れる機会を増やすことで、IT人材の育成を進めたいとしている。
このほか、具体的な市町村名は明かさなかったが、漁網にチップを組み込んで、海水温などをモニタリングすることで、漁獲量の安定化を目指す取り組みなども進めるとしている。
このプロジェクトは、参画企業であるKDDI ウェブコミュニケーションズの代表取締役副社長・高畑哲平氏が、1年前に沖縄で体験したある出来事がきっかけで発足したのだという。高畑氏が那覇の沖縄そば店で食事をしていた際、カード決済が使えないことで店側と揉めていた中国人観光客に遭遇。彼らは空港から直接来たのか日本円も持ち合わせていなかったことから、その場は高畑氏が立て替えたのだそうだ。
「日本の有数の観光地である那覇でカード決済ができないことに衝撃を受けた。タクシーでも同様に支払えないことが多い。その理由は、(ITソリューションについて)情報過多になり、何を選べばいいのか分からず導入までいたらないことだ。各分野におけるリーディングカンパニーが沖縄に集結することで、この課題を解決したい」(高畑氏)。
KDDI ウェブコミュニケーションズの代表取締役社長である山崎雅人氏は、長年にわたり解決されていない中小企業の課題として、売上げの伸び悩みや人材不足などを挙げる。また、その解決の鍵は、(1)IT人材を増やすこと、(2)コスト効果を実感すること、(3)簡単な仕組みを用意することだとし、現状の沖縄の課題とも共通点が多いと話す。これらの課題を解決することで、増加する沖縄の観光客(現在861万人)への対応や、店舗のIT化、そして県民所得の向上を実現したいとした。
沖縄市 市長の桑江朝千夫氏は、2016年に起業家を支援するスタートアップカフェ コザを立ち上げたり、沖縄にギークハウスを作るための資金をクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」で募ったりするなど、幅広い手段で沖縄のIT化を進めてきたと説明。今回のプロジェクトによって、「成功事例を増やし、さらなる商業活動の活性化につなげたい」と意気込んだ。
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