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ウェアラブルジャケットや写真AR--「SXSW 2017」をじっくりレポート<中編>

松葉忍(WHITE VRマーケティングチーム)2017年04月18日 09時00分
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 2017年3月10~19日に米国テキサス州オースティンで開催されたクリエイティブフェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2017」に参加してきた。私なりの視点から、2017年のSXSWのレポートをしたいと思う。SXSWについては、前編で説明しているので割愛させていただく。

SXSW

 出展しているブースに足を運べば 、展示されているソリューションやプロダクトに触れることができるが、ブースが出展されている場所はトレードショー会場だけではない。近隣ホテルを会場にしているブースや、街に設営されたパビリオンに設置されているものもある。その範囲と量はとても広く、多いのだが、筆者が見てきた中で注目したプロダクトやソリューション、パビリオンを紹介したいと思う。

洗濯もできる“ウェアラブルジャケット”

 「Levi's Commuter Trucker Jacket」は、ジーンズブランドのリーバイスとGoogleが共同開発している“ウェアラブルジャケット”だ。2016年にプロジェクトが発表されたが、発売時期や価格などは未定だった。それが、SXSW 2017のトークセッションで発売時期は2017年秋、価格は350ドルであることが明らかにされた。ただし、日本での発売については言及されなかった。

「Levi
「Levi's Commuter Trucker Jacket」(同社ウェブサイトより)

 Levi's Commuter Trucker Jacketは、生地に織り込まれた特殊な糸によって、スマートフォンの操作を可能にするジャケットだ。スマートフォン向けアプリと連動し、ジャケットの袖部分を触ると、スマートフォンが反応する。このように、衣類の生地そのものにIoTを組み込む代表的な事例は記憶にない。

 たとえば、ジャケットとペアリングしたスマートフォンに行き先をセットする。進み始めると音声でガイドが始まる。ジャケットの袖部分を触ると次のナビゲーションが流れる。また、再生中の音楽も操作でき、次の曲、前の曲といったこともスマートフォンを取り出すことなくジャケットの袖でコントロールできる。さらには、袖のジェスチャーで、掛かってきた電話を受けることも、拒否することもできる。

Commuter x Google Jacquard | Smart Wear Clothing | Levi
Commuter x Google Jacquard | Smart Wear Clothing | Levi's®

 これだけでも凄いのだが、何とこのLevi's Commuter Trucker Jacketは、洗濯をしてもいいのだという。もちろんジャケットは衣類なので洗濯できなければいけない。しかし、ウェアラブルデバイスでもあるため、本当に洗って大丈夫なのかと心配になるが、問題なく洗濯でき、洗濯後も正常に動作するという。

 ウェアとしての機能もしっかりと考えられており、自転車に乗ることを想定し、背中の丈を少し長めにとってある。また、肩や腕周りは型崩れすることなく稼働しやすい構造になっている。技術のアプローチとして繊維に行きつくだけでなく、それを実際にプロダクト化してしまう技術力と推進力がすばらしいと感じるプロダクトだった。衣類へのIoT導入はこれをきっかけに増えていくかもしれない。


紙の写真がARマーカーになる「Lifeprint」

 「Lifeprint」を体験した時、どこかで見たことがあるような、ないような不思議な感覚を覚えた。Lifeprintは、スマートフォンで撮影した写真をポラロイドのようにプリントアウトできるプロダクトだ。それだけなら、すでにさまざまなメーカーから似たようなプロダクトが発売されているが、この製品がユニークなのは、印刷された写真そのものがARマーカーになり、専用アプリをかざすとその写真が動き出すことだ。

「Lifeprint」
「Lifeprint」

 スマートフォンの台頭により、人々がシャッターを押す機会は数十倍に増え、写真そのものはより身近な存在になったが、プリントアウトされる写真は減ってしまった。一方で、やはり印刷された写真の良さもあり、気軽にプリントアウトできるプロダクトがたくさん発売されている。LifeprintはここにAR技術を付与することで、プリントアウト後の表現を紙としてだけでなく、デジタルとしても楽しめるようにし、プリントアウトされた写真の付加価値を向上させている。

 技術の進歩により写真の楽しみ方は変わったが、同じく技術の進歩が、昔ながらの楽しみ方を別の形にして「今の楽しみ方」に生まれ変わらせた。今後はテクノロジによりいろいろなものが最適化され、AIの台頭により人々の職が失われていくといった声も聞こえてくる。しかしその一方で、Lifeprintのように技術の進歩によって廃れた文化がよみがえる事例も、これから数多く出てくることだろう。


YouTubeで楽しむ“360度動画”

 YouTubeはバンパー広告という6秒の動画広告メニューを発表した。これまでは、5秒経つとスキップができる仕組みの広告メニューが主流だったが、ユーザーは広告が始まるとスキップボタンに目が行き、広告の内容がまったく伝わらないという課題があった。バンパー広告は、6秒間のスキップできない広告動画が流れ、それが終わるとコンテンツ動画の再生が始まるというもの。 6秒間の広告動画は、これまでスキップボタンに向いていた視線を動画そのものに移すことに成功している。

バンパー広告用6秒動画のクリエイティブを見ることができるタッチパネル
バンパー広告用6秒動画のクリエイティブを見ることができるタッチパネル

 また、YouTubeには360度動画コンテンツもたくさんアップロードされている。VRヘッドセット「Google Cardboard」を使えば、より没入したVR体験が可能なコンテンツだ。Googleは「Daydream View」というVRヘッドセットを発売しており、同じくGoogleのスマートフォン「Pixel」などと組み合わせることで、YouTubeの360度動画コンテンツをよりリッチに閲覧できる。YouTubeのパビリオンでは、バンパー広告用の6秒動画のクリエイティブギャラリーとDaydream Viewを使ったVR体験を主軸にブースが作られていた。

 6秒動画のクリエイティブギャラリーには、ヘッドフォンがつながれたタッチ型のディスプレイが数多く設置されており、さまざまな6秒動画作品を閲覧できた。6秒動画へのアプローチはまだ業界全体で試行錯誤の段階だが、YouTube自らが6秒広告をクリエイティブしたり、良い事例をまとめて体験させたりすることで、理解の促進につながるのではないだろうか。

 Daydream ViewでのYouTube360度動画は、想像したよりもすばらしい体験だった。Pixelのディスプレイの美しさと、デバイスに最適化されているDaydream Viewによるところが大きいと思われるが、画像がとてもクリアで、一部のVRゴーグルで散見される「スマートフォンの画面を近くで見ている」ような感覚は一切なかった。目の前に景色が広がっているそれは、まさにVR体験そのものだった。また、ゴーグルの着け心地も悪くなく、長時間の閲覧でも耐えられそうだった。

「Daydream View」の体験ブース
「Daydream View」の体験ブース

 ブースでは360度動画コンテンツがプレイリストにまとめられており、好きな動画を専用のコントローラーを使って選び、見終わったら次、という具合に見続けることができた。特に制限時間も設けられていなかったため、人によっては1時間ほど体験し続けていたそうで、スタッフが声をかけて終わりを促すこともしばしばあったようだ。

 筆者は、スマートフォンで閲覧するVRデバイスを数多く体験しているが、Daydream Viewでの体験は、スマートフォン型VRデバイスのなかで最もすばらしいものと言える。Daydream ViewとPixelの日本での発売は未定だが、現在発売されているサムスンの「GearVR」と「Galaxy」の対抗馬として期待できるデバイスだ。日本国内での早期展開を期待したい。

 次回は米国で最も利用されているSNSサービス「Snapchat」を開発、運営するSnapが発売したサングラス型デバイス「Spectacles」と、気になる日本勢について紹介する。

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