スマホ時代にふさわしい書体の形--アドビが新作フォント「源ノ明朝」を提供した狙い

 アドビシステムズは、オープンソースフォント「源ノ明朝」の提供を記念し、4月10日を「フォントの日」に制定。同日にプレス向けイベントを実施した。フォントの日は、一般社団法人日本日記念協会によって登録されている。


(左から)アドビシステムズマーケティング本部デジタルメディア デザイン製品担当マネージャーの岩本崇氏、同社デジタルメディアタイプデベロップメントフォントデベロッパーのフランク・グリスハマー氏、同社日本語タイポグラフィチーフタイプデザイナーの西塚涼子氏、同社日本語タイポグラフィシニアマネージャーの山本太郎氏、同社日本語タイポグラフィシニアフォントデベロッパーの服部正貴氏

 源ノ明朝は、アドビが2番目に提供する「Pan-CJK」書体ファミリ。2014年に提供した「源ノ角ゴシック」の次に提供するフォントであり、スマートフォンなどのデジタルデバイスで見やすく、かつ印刷物にも使えるよう、同社のフォント「小塚明朝」のようなモダンさと、「リュウミン」のようなクラシックさを兼ね備えている。CJKは、中国語、日本語、韓国語を示しており、3言語の書体がすべて含まれている。

 源ノ角ゴシックと同じく、開発にはグーグルが協力している。スマートフォンなどモバイルデバイスとしてグーグルが持つ知見をフォント開発に活用している。また、グーグルから同じ書体を「Noto Sans Serif」として公開される予定だ。これは「no more tofu」から来ており、日本語などの2バイト文字が文字化けした際に表示される四角の記号(俗に豆腐と呼ばれる)を回避するための意味合いがある。


 名前の由来は、Pan-CJK書体ファミリがオープンソース書体であることから来ている。当初は3カ国で共通の名前にする予定だったが、各国間での調整が難航したことから、それぞれで名前を付けることになったという。源ノ明朝の正式名称は「Source Han Serif」。日本名は“Source”の漢字に相当する「源」に、日本らしさを出すためにカタカナの「ノ」を組み合わせた。読み方も、独自制作の書体であることを意識して「ゲン」を採用している。

 日本名は、当初“Source”と同じ読み方の「ソース」として進められていたが、源ノ明朝をデザインした西塚涼子氏(アドビシステムズ日本語タイポグラフィチーフタイプデザイナー)は、「ソースだと『焼きそば明朝』って呼ばれてしまう」と、“源”に路線変更したという。また西塚氏は、源ノ明朝の読み方がSNSを中心に話題になったことにも触れ、「『みなもとのあけとも』と呼ばれたり、武将の名前が由来なのではと言われたりと楽しく拝見していた」と、意外なところで反響があったことを嬉しそうに語った。


「源ノ明朝」の特徴

デジタル時代にマッチしたフォントの形とは

 アドビシステムズ研究開発本部日本語タイポグラフィシニアマネージャーの山本太郎氏は、TwitterやFacebookなどSNSが普及し、さまざまな国からメッセージを受信する環境が一般化したほか、インバウンド需要でパンフレットなどに各国の表記を載せる場合、中国語や韓国語などのフォントの種類が異なり、大きさや太さでばらつきが出てしまうケースなど、統一された書体デザインの需要の高まりがフォント開発の背景としてあると説明。

 同氏は、「フォントを作るのは莫大な時間と労力を要する。しかし、東アジアで使われている文字の多くは中国を起源とする漢字がベースになっている。漢字などはどの国でも共通で使えるものが一定数ある」とし、各国の言語の特徴は残しつつ、テイストの統一やファイルサイズの削減のため、共通化できる部分は各国フォント制作パートナーと共同ですり合わせたという。ただし、共通化部分の多かった源ノ角ゴシックとくらべて、源ノ明朝では共通部分はさほど多くなかったようだ。山本氏は「明朝がそれぞれの国で独自に発展していった証」としている。

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