「AbemaTV」にしかできない“オンデマンド動画”の正体--CA藤田社長に聞く - (page 2)

「AbemaTV」にしかできないオンデマンド動画

 これまで、テレビと同様に番組表の時刻に合わせて配信してきたAbemaTVだが、「最も多かった要望が録画機能だった」と藤田氏は明かす。こうした声に応えるため、4月6日からAbemaTVで見逃した番組をいつでも見ることができるオンデマンド動画機能「Abemaビデオ」の提供を開始した。

 AbemaTVアプリを最新バージョンに更新し、右上のメニュー欄から「ビデオ」を選ぶことでアクセスできる。まずは、iOSアプリとPC版から対応し、4月下旬にAndroidアプリにも対応予定。5月以降には、各テレビデバイスでの視聴にも順次対応する。また、4月10日にはAbemaTV内にAbemaビデオへ誘導するチャンネルを開設する。

「Abemaビデオ」
「Abemaビデオ」

 Abemaビデオは、これまで月額960円の「プレミアムプラン」として提供してきた「タイムシフト」を拡充した有料機能で、AbemaTVで配信された作品が随時追加されていく。タイムシフトでは、番組表から遡って視聴したいタイトルを選ばないといけないため、目的の動画にたどり着くまでに苦労したが、Abemaビデオでは専用トップページから人気アニメやドラマのシリーズ作品をまとめて視聴できるようになる。藤田氏によれば、5分の1の作品は無料でも視聴できるという。

 当初は、650作品(6700話分)を用意する。無料アカウントでは、前述した「オオカミくんには騙されない?」や、4月9日が初回配信の新レギュラー番組「GENERATIONS高校TV」、日本初配信となる「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語」の放送後約24時間の見逃し配信などを視聴できる。有料のプレミアムプランでは、4月クールTVアニメで地上波同時配信が決定した「GRANBLUE FANTASY The Animation」や、独占配信中「DRIFTERS」など、AbemaTVのアニメ専門5チャンネルで放送中のタイトルや、「孤独のグルメシリーズ」「勇者ヨシヒコシリーズ」などの人気ドラマを、いつでも見逃し視聴できるようになるという。

 ところで、オンデマンド動画の領域では、すでに「Amazonプライム・ビデオ」や「Hulu」などの強力なライバルがいるが、勝ち目はあるのだろうか。この疑問に対し藤田氏は、「Abemaビデオは(民法見逃し配信の)『TVer』と『Netflix』の中間に位置するサービス」だと説明し、いずれのオンデマンド動画サービスとも競合にはならないとの見方を示す。

 それは、AbemaTVの視聴スタイルが他のオンデマンド動画サービスとは大きく異なるからだ。一般的なオンデマンド動画は、映画やドラマ、アニメなど目的の作品を視聴するために立ち上げることが多い。これに対し、AbemaTVはまずテレビで各チャンネルをザッピング視聴し、見たい番組がなければオンデマンド動画(録画番組)に切り替える。消費者が慣れ親しんだ、“自宅のリビング”で「テレビ」と「ビデオ」を使い分けるような視聴体験を、1つのアプリ内でシームレスに実現するもので、テレビ型の動画サービスを手がけるAbemaTVだからこそ提供できた機能といえる。

「Abemaビデオ」は他のオンデマンド動画サービスとは競合にならないと藤田氏
「Abemaビデオ」は他のオンデマンド動画サービスとは競合にならないと藤田氏

 藤田氏は、Abemaビデオによって録画視聴が当たり前となっている従来のテレビ番組の視聴スタイルに一石を投じたいと話す。「テレビ局の抱えている問題は、録画視聴されるとCMが飛ばされてしまうこと。タイムシフト(録画視聴)は有料にすべきだと常々思っていた。リアルタイムに見てもらえれば広告モデルは成り立つが、そうじゃないものはDVDと一緒で課金しないとタダで流れることになる」(藤田氏)。そのため、今後はAbemaビデオ向けの“パッケージ化”を見越した作品も制作していくという。

もう1年は損益度外視、競合はもう出てこない

 AbemaTVは、開局時から市場の拡大を優先して投資を続けており現在も赤字だ。藤田氏は「もう1年くらいは損益度外視でユーザー数を集めていくつもり」と語り、当面収益化を狙わない方針は変えないという。ただし、今回有料のAbemaビデオを開始したように、マネタイズの準備も始めている。将来的には、「十分な収益をあげながらコンテンツに投資できる体制を作っていく」(藤田氏)考えだという。

 1年目を終え、2年目に入るAbemaTVだが、消費者の視聴習慣を変えるにはまだ時間がかかると藤田氏は見ている。「我々の成長が市場の成長という時期だと思っている。1年やったが競合は出てこなかったし、多分もう出てこない。ここからは自分たちとの戦い。本当にこのビジネスモデルで成り立つのかとみんな疑問に思っていると思うが、やるしかない」(藤田氏)。

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