ドライバー不足に悩む物流業社の宅配料金値上げや、配達員の長時間労働の慢性化が話題となっている。ECサイトが急成長を遂げる一方で、増え続ける物量に悲鳴を上げているのは日本だけではない。
スマートフォンの使用率は約63%と、世界最高水準のモバイル普及率を誇る香港でも同様の事象が起こっている。そのため、消費者・物流業者双方にメリットがある「宅配ロッカー」に、熱い視線が集まりつつある。日本と比べて宅配ロッカーそのものの認知度が低い状態だが、新たなデリバリースタイルを模索する各社のサービスを紹介したい。
サービスを紹介する前に、香港でなぜ宅配ロッカーが台頭してきているのか、まずはその背景に触れたい。東京都の約半分にあたる約1100平方キロメートルの面積に730万人超の人びとが生活している香港は、面積の約60%が山地であることから限られた地域に住宅地が集中しており、人口密度の高さは世界でもトップクラスだ。
人口に対して住宅地の面積が狭く、投資家の旺盛な需要もあることから、住居費が高騰し、価格・賃料の上昇に現在も歯止めがかかっていない。多くの住民は、給料の半分は家賃で消えてしまう“高くて狭い”賃貸住宅に住んでいる状況だ。夫婦共働きで家賃を捻出する家庭が多く、在宅時間が限られるため、自宅での日中の荷物受取が難しいケースが多い。
また香港の宅配は、時間通りに届けるといっても、午前か午後の大まかな指定しかできない業者がほとんど。配送サービスが適当なので、指定したからといって確実に来るとは限らない。
筆者も共働きのため、週末に配達指定をして1日中家で待っていたことがある。結局配達員は部屋に立ち寄ることもせず、「マンション入口のポストに、不在票を投函するだけで去る」というケースが続いた。荷物が届いた際、荷受サインをしようとしたら、ボールペンはないから自分で持ってこいと言われる……。丁寧で確実に荷物を運んでくれる日本の宅配便サービスは“世界一”だと、カルチャーギャップを感じることは多い。
さらに香港の郵便局は再配達の仕組みを持たないため、不在票を持って自身で郵便局まで取りに行かねばならない。待ち時間や無駄な労力を嫌う香港人は、荷物の送付先に会社を指定することがあるが、プライバシーを確保できない点が悩ましい。効率を好む香港だからこそ、荷物受取の柔軟性と利便性を重視したより多くの選択肢があってもいいのではないか――。
このような背景から、消費者自身が商品を受け取りに行けるメリットを持ち、業者側からすれば倉庫や配送などのコスト削減にもつなげられる「宅配ロッカー」に注目が集まりつつある。宅配にかける人手確保が難しくなっている中、2014年末ごろから設置がスタートした。
香港の通信・メディア大手PCCW傘下のPCCWソリューションズは、運送会社のLTFアジアと提携し、消費者がインターネット経由で購入した商品を24時間受け取れるATM付きロッカー「ハウス・オブ・パーセルズ(HOP!)」を展開。指定の宅配ロッカーに配送された商品は、併設したATMで購入代金を支払い、ワンタイムコードを入力することで取り出せる。大型マンションなど住宅地を中心に宅配ボックスを設置し、今後は商業施設にも展開していく方針だ。
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